『身の周りで行動に移せることはないだろうか、世界の国々に対してできることはないだろうか』と思う人々が、1人でも多く増えてほしい

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興誠中学校教諭、国際理解教育講座「アースカレッジはままつプログラム」実行委員
中澤 純一さん

 JICA中部の実施する開発教育指導者研修(上級編)に参加し、身に着けた開発教育実践のスキルを活用し、地元・浜松のいろんな場所で活躍する中澤純一さんにお話を伺います。
(聞き手:浜松市国際協力推進員 上田記子)

中澤さんが、開発教育・国際理解教育に関心を持ったきっかけは何だったのでしょうか。

 私の国際理解教育との出会いは大学2年生でした。たまたま受けた授業が国際理解教育を主とした講義で、教授は数多くのワークショップを実践してくれました。ワークショップを体験すればするほど、私は参加型学習の魅力にますますとりつかれていったことを、今でも鮮明に覚えています。
 さらに、その教授は青年海外協力隊のOBだったんですよ。青年海外協力隊は聞いたことがありましたが、具体的な活動はよく知らなかったので、教授が語る体験談に興味がわき、「私も教員になったらJICAと連携して何か教育活動を展開できないか、JICAから多くのことを学びたい!」と思ったんです。

現在はどのような活動をされていますか。

 私の活動は大きく3 つに分けられます。ひとつめは、学校教育における国際理解講座の実践。2つめは「アースカレッジはままつプログラム」で行う市民向け講座。3つめは、小学生から一般を対象とした、ものづくり教室の開催です。
 2つ目の「アースカレッジはままつプログラム」とは、実行委員会がJICA中部、浜松市国際交流協会と一体となって取り組む、中学生以上の一般市民を対象とした国際理解講座で、昨年度は3回実施しました。この実行委員の構成メンバーが、興味深いんですよ。小中高校の先生方以外にも、元NGO職員の方、看護師の方、会社員の方、大学生など様々な職種や年代の垣根を越えて、実行委員会を組織しているんです。
 3つ目の活動ですが、私は社会科だけではなく技術科の教員でもあり、「国際理解教育とものづくりの融合的な実践」ができないか、かねてから考えていたんですね。そしてある日、たまたま同じ静岡県在住で青年海外協力隊のOBである菅野芳春さんと出会う機会がありました。菅野さんも同様の考えをお持ちだったので、早速一緒に教材開発を行いました。その結果、フェアトレードのビーズやヘンプ紐を使った『アフリカンビーズでストラップをつくろう』という講座ができました。数多くの美しいビーズ(産地はガーナ、インド、アジアなど)に子ども達の目は奪われ、ストラップづくりに釘付けになりました。まずものづくりの楽しさを味わってから、次に国際理解教育の世界に入ります。そして、フェアトレードについて学んでいくんです。平成21年度は浜松市内を中心に、社会教育の現場の方々が声をかけてくださってこの講座を実践し、合計約10回の講座でのべ500〜600人が体験しました。

学校の生徒に対しては、開発教育・国際理解教育をどのように行っていますか。また、学校側としてはどのような期待を持たれていますか。

 私が勤務する中学校では、1年間に各学年10時間以上の国際理解講座を設けています。ワークショップだけではなく、生徒が多くの人々と関わる実践を心がけています。例えば英語教育と国際理解教育を主軸におく語学研修では、浜松市国際交流協会の職員・元NGO職員の方々によるワークショップを実施したり。6月には、上田さん(JICA浜松デスク)と私と協同でワークショップを実施したり、文化祭で国際理解をテーマとしたクラス展の実施などです。昨年度の文化祭で、私のクラスは『フェアトレード』をテーマにフェアトレードの材料を使って、クッキーやケーキをつくり販売し、大好評でした。また子どもたちは私が紹介した「地球のステージ」に興味を示し、生徒自らが連絡をとってガザ危機の写真パネルをお借りしてパネル展も同時に開いたりしました。
 とりわけ本校において特徴的なのが、中大連携における国際理解教育の実践で、今年度で3年目になります。本校の系列に浜松学院大学があり、学院大学には国際理解教育に対して関心をもっておられる先生方がたくさんいらっしゃいます。そこで、大学の先生方と私が共に教職課程を履修する大学生を指導し、大学生自身に参加型学習の授業案を練ってもらい、本校の中学生に実践してもらうのです。昨年度は『多文化共生』をテーマに連続講座を行いました。自分と年齢の近いお兄さん・お姉さんに教えてもらえるので、中学生は親近感が湧くのか非常に熱心に取り組みますよ。
 このように、多くの方々に国際理解講座に関わっていただくことで、生徒の視野が広がり、生徒は多角的にものごとを捉えることができるようになります。これからの国際社会で生きていく子ども達にとって、国際理解教育を通して必要不可欠なことを学んでいるのだと思います。

JICAのエッセイコンテストでは多くの教え子の方々が応募してくださり、見事、特別学校賞も受賞されましたね。おめでとうございます。

 ありがとうございます。本校でJICAエッセイコンテストに取り組んで、今年度で6年目になります。例年、新1年生の最初の社会科の授業で、卒業するまで毎年行うことを伝えています。1年生にとっては、入学して5ヶ月ぐらいたったところで、自分たちができる国際貢献について考える訳ですから、なかなか内容に膨らみがもてません。しかし2年、3年と続けていくと、生徒達は国際理解講座の中で多くのことを学び、行動へと繋げていってくれるので、体験に基づく説得力のある作文が書けるようになってきます。また文字として自分の考えや実践を表すことで、日ごろの活動のフィードバックにもなっているようです。将来、国際協力に携わりたいと考える生徒も出てきています。さらに、本校は中高一貫校ですので、高校生になってもJICAエッセイコンテストに応募し続けている生徒もいます。

「アースカレッジはままつプログラム実行委員」として、今後はどのような活動を行っていきたいですか。

 平成22年度はファシリテーターとして活躍していただける方を多く輩出していきたいと考えています。そのため今年度の前期には「ファシリテーター養成講座」を開講予定です。そしてこの講座に参加していただいた人を中心に、実行委員会を立ち上げて「フェア」を開催します。「アースカレッジはままつプログラム」をきっかけとして、市内の学校教育や社会教育の場で国際理解教育に携わる人々が増えていってくれたら幸いです。

今後の展望について教えてください。

 「“When I change the whole world changes.”(私が変われば 世界が変わる)
(龍門寺住職 河野太通 老師)」。この言葉は私の座右の銘です。ワークショップをやらせていただく時には、必ず最後に紹介する言葉です。国際理解教育は、別に敷居の高いものではありません。国際貢献、多文化共生、異文化理解、フェアトレード、人権、環境などといった様々な分野から構成されています。だから、そのなかの一つの事象でも興味のあることがあれば国際理解教育の世界に入りやすいと考えています。そして、この世界に足を踏み入れたら、一つの事象が他の事象と深く結びついていることに気付くのではないでしょうか。
 国際理解の世界とつながることで『身の周りで行動に移せることはないだろうか、そして世界の国々に対してできることはないだろうか』と思う人々が、1人でも多くこの浜松から増えてほしいと思います。その人々の輪を大きくしていくことができたらいいなと願っています。ですから、今後も学校教育の現場のみならず、「アースカレッジはままつプログラム」実行委員会を発展させて、社会教育の場でも国際理解教育を普及していきたいのです。みなさんも是非一度、「アースカレッジはままつプログラム」実行委員会の講座にお出掛けください!

ありがとうございました!

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小学生に向けて国際理解教育ワークショップ

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興誠中学校語学研修合宿にて多文化共生をテーマに

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アフリカンビーズでストラップづくり教室 浜松市内で実践中