愛知県教育委員会東三河教育事務所 ポルトガル語の語学相談員
久保 真希子(くぼ まきこ)さん
今回は、愛知県教育委員会東三河教育事務所で、ポルトガル語の語学相談員をされて三年目を迎えられた久保真希子さんにお話しを伺います。
(聞き手:JICA中部市民参加協力課 鍋島光博)
外国語としての日本語教育を専攻していて、特に子どもへの日本語教育に興味を持ち、国内の年少者、とりわけ日系ブラジル人児童生徒への日本語教育という分野に辿り着きました。その後、実際に日系社会で活動したいと思い、JICA日系社会青年ボランティアに参加しました。日系日本語学校教師としてパラグアイにある日系ブラジル社会へ派遣され、二年間の活動を終えた後、国内での日系ブラジル人の子どもへの教育支援に携わろうと思ってこの職に就きました。
日本語指導が必要な児童生徒がいる小中学校を巡回して、日本語や教科の指導をしています。子どもに、普段は日本語で伝えきれないことをポルトガル語でお話してもらって、嬉しかったことや困っていること等を聞くのも大事な仕事です。学校での保護者会や説明会では保護者の方ともお話します。
主にブラジルにルーツがある子どもと関わることが多いですが、ペルーやフィリピンにルーツがある子どももたくさんいます。彼らが自分の母語や母文化を忘れず大切にしていくために、彼らと一緒にブラジルやペルーの文化を調べたり、母語学習につながる活動をすることもあります。日本人の子どもらの前で自分の国の紹介や文化の発表をする時の彼らは、とても緊張していますが、発表した後は彼らの中で自信につながっているようです。
嬉しい事は、日本語が分からなくてとても緊張していた子どもが、友達や先生と日本語で話せるようになったときです。教室では、言葉だけでなくて学校の文化が分からなくてとても不安に思っている子どももまだ多いです。私自身も「学校」という文化や立場に関して、まだまだ勉強不足だと思っています。
様々な言語や文化背景や伝統、特徴を持った子どもたちがいる中で、どうやったらみんなが仲良く満足できるかということを、子どもたちと一緒に考える機会をたくさん作りたいです。そういう機会を作らなくても、子どもたちが自然に色々思いついてくれないかな、ともいつも期待しています。この研修では、「気付き」を「築き」に持っていくための楽しい手法を多種学ぶことができました。楽しみながら、遊びながら、できるだけ簡単に、ということをいつも心がけているので、今後も教室内や教員、保護者の方とも活動を共にしたいと思っています。
日本語の授業で、元から楽しい活動を考えるのが好きだったのですが、自分が楽しいと思って考えたゲームよりも、子どもたちが自分自身で考えたゲームの方が子どもたちにとってははるかに楽しいのだと気付いたことがありました。遊ばせすぎず如何に日本語教育的な要素を組織的にそこに入れ込むかでいつも苦労していました。結局、子どもは勝手に遊びを考えるということがよく分かりました。子どもへの教育に関する知識を深めようと思って、帰国後は小学校教諭の免許を取得しました。
日本語学校では運動会やお話コンテスト、音楽や劇、料理などの学習発表会の他に、原爆展も開催しました。特に原爆展は、地元の小中学校の児童生徒も招待し、そこで出来上がった千羽鶴を帰国後、広島に持って行きました。ブラジルとパラグアイから子どもたちの平和を尊ぶ気持ちが、「日系」という文化を通して遠く広島にも届いたと思います。
関西で、今と同じような分野の仕事に就く予定です。学校の中での日本語指導が必要な子どもへの支援に加えて、今後は学校の外でのサポートにも力を入れたいと思っています。日々の宿題を手伝ったり、義務教育の就学年齢を過ぎた子どもや帰国をする子どもへのサポート等を考えています。以前所属していたボランティア団体でもう少し活動を広げたいと思っています。
子どもたちと授業で作ったブラジルのお菓子、ブリガデイロ
子どもたちと授業で作ったカーニバルの仮面とマラカス
授業の前は日本語の歌を歌います
罰ゲーム
朝の会にて、ブラジルとペルークイズ
原爆展にて、日本へのメッセージを考える子どもたち
お話大会の練習
文化の授業を教える練習をしている現地教師