「一人一人の気持ちを国際協力の形に」

【画像】鈴木美花(すずき みか)さん (愛知県岡崎市出身・京都府長岡京市在住)

JICA中部 前市民参加協力調整員
鈴木美花(すずき みか)さん (愛知県岡崎市出身・京都府長岡京市在住)

今回はJICA中部で、市民参加協力調整員として草の根技術協力(日本のNGOなどが提案するその団体の活動をJICAが支援するというもの)を担当されていた鈴木美花さんにお話を伺います。

国際協力への出発点

私の国際協力は、シリアでの青年海外協力隊活動に始まります。昨年から中東地域で「アラブの春」といわれる民主化運動の波がシリアにも押し寄せ、現在シリア政府軍と反体制派との衝突が激しくなっています。内戦状態に陥り、日々多くの人々の命が奪われているというニュースに心を痛めるこの頃ですが、そんな危険とは無縁の平和で安全な環境のなか、シリアでの隊員生活の3年間を過ごしました。

中東イスラムの国で水泳を教える

シリアの北部に位置するアレッポという町で、水泳人口の拡大と選手のレベル向上のため、県の選抜選手である小中学生への指導のほか、夏は市内の複数のプールで子ども向けの初心者水泳教室を掛け持ちしていました。時には、女子体育師範学校の水泳授業も担当しました。砂漠のイメージが強い国ですが、シリアは地方都市にもプールの施設が多くあり、地下水をくみ上げて利用しています。冬は、時に雪が降るほど寒くなるので、シリアでは数少ない屋内の温水プールを使うのですが、ボイラーの燃料不足や、施設管理者の利権の絡みによって、選手の練習用に使えず、冬の間はひたすら陸上トレーニングをしたことも、今となっては笑える思い出です。また、中東イスラムの国で女性が水着になることが壁になる場合もあり、水泳人口は男子が多かったのですが、シリアはキリスト教の人口が2割弱を占めるため、女子の水泳に対する見方は、それぞれの人の宗教や考え方によって様々でした。私もそれぞれのプールの客層や周囲の助言に従って、日本と同じ水着一枚だったり、着衣水泳のように水着の上にTシャツとスパッツを着たり、と使い分けをしていました。

協力隊を通じて感じたこと

シリア人選手や子どもたちと水泳の練習を続けた毎日は充実していたけれども、私一人で達成できたことは小さくて、3年間の協力隊の活動を終えたとき、国際協力としての成果が残せたかどうかはわかりませんでした。ただ、私を通じて日本や日本人に興味を向けてくれたシリア人がいたことは確かだと思います。私は、隊員の任期を終えた後にも、何度かシリアを訪問し、シリアの友人たちに会いに行きました。水泳を続けている人もやめてしまった人も、選手から指導者になっている人も、誰もが変わらず私を温かく迎えてくれることが嬉しかったです。そして、自国が混乱の中にある今でも、日本で地震や台風が起こったときには連絡がきて心配してくれます。今振り返ってみると、こういった人々とのつながりこそが、私が協力隊で得た最大の成果であり宝物であり、私がシリア人のために協力したことよりも、活動や生活を通じてシリア人から協力してもらったことの方が多かったと感じています。

ボランティア調整員として

協力隊で私自身が体験したことを、もっと広く日本の人たちにも知って、感じてもらいたいと思い、ボランティア調整員としてシリア、ヨルダンへ赴任しました。協力隊員やシニア海外ボランティアの活動や生活を支援し、現地の配属先と活動内容について調整することが主な業務です。
折角J ICAボランティアに参加したのだから、ボランティアの人々には、その国に来てよかったと思って帰国してもらえるよう、たとえ活動は思い通りにいかなかったとしても、帰国後にJICAボランティアで活動したことが良い思い出として残ることを目指して業務にあたりました。ボランティアが現地配属先の一員として受け入れられている様子、ボランティアの活動が現地配属先の人々から感謝されている様子、ボランティアの働きかけによって感化された配属先の人々の業務に対する姿勢、態度や目の色が変わっていく様子を間近で見られるのはボランティア調整員業務の醍醐味だと思います。

JICA中部で草の根技術協力の担当として

2度目のボランティア調整員として勤務したヨルダンから帰国後、現在JICA中部の市民参加協力課で草の根技術協力事業を担当しています。中部地域のNGO/NPOが途上国の人々のために実現したいという国際協力へのニーズとJICAの草の根技術協力の趣旨を一つの事業として共に進めるために調整を行っています。これまで私が従事してきたボランティア事業と、現在従事している草の根事業は、途上国の地域住民の生活に直接貢献する点、草の根レベルで活動する点、そして、日本の国民による「途上国で国際協力をしたい」というスピリットに支えられている点が似ていると感じています。
そして、NGO/NPOの方々にも、JICAの草の根技術協力事業の枠組みで事業を実施して良かったと思っていただけるよう、同時に現地での活動での成果が上がるよう、協働を進めていきたいと思っています。また、この事業の成果を、さらに多くの人々に知ってもらえるよう、もっと多くの人々の国際協力への参加促進に繋がるよう努めたいと思います。

ありがとうございました。 ご出産のため、市民参加協力調整員としての仕事は2月末で終了となりましたが、今後もJICA中部のサポーターとしてご協力頂けますようお願いします。

 

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(協力隊活動)夏の子ども向け初心者水泳教室1

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(協力隊活動)夏の子ども向け初心者水泳教室2

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当時小学生だった選手たちの8年後

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シリア協力隊派遣35周年記念行事

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車道の羊の群れ(ヨルダン)

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ヨルダンの春

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世界遺産のアレッポ城(シリア)