国際緊急援助隊事務局 緊急援助課
谷口 正弘(たにぐち まさひろ)さん 北海道札幌市出身・東京都練馬区在住
海外で災害が発生したときに、日本政府が派遣する「国際緊急援助隊(JDR)」。今回は、災害時対応や派遣隊員たちの活動サポートを担うJICA国際緊急援助隊事務局の谷口正弘さんにお話を伺います。
(聞き手:JICA中部 市民参加協力課 藤田清美)
大学生のときに阪神・淡路大震災のボランティアに参加して以来、災害救援に関心を持ってきました。東日本大震災を目の当たりにして、自分が本当にやりたいことは何かと思い、またご縁もあり、昨年7月からJDR事務局で働いています。
2011年ニュージーランド南島地震被害における救助チームの活動
2012年度「総合訓練」の模様
あまり知られていないのですが、ひとつには被災地に緊急援助物資を送る業務があります。地震や洪水が起き、その国からの国際的支援の要請を受けて、世界6ヵ所に備蓄している緊急支援物資を送ります。災害時には何がどれだけ必要か、被災地までの輸送・配布方法を現地政府側と事前調整・確認することがとても重要で、JICAの現地事務所を通じ政府機関・国際機関と協力します。
もうひとつは、救助チームと医療チームの訓練・研修です。救助チームは年に一度、実際の派遣と同じ陣容で、出国、被災地への到着、情報収集、捜索救助といった一連の活動を48時間連続でシミュレーションする「総合訓練」に取り組んでいて、今年も11月に兵庫県広域防災センターなどで行われました。
私はチームの業務調整員として派遣されるので、この訓練や研修が、必要な知見を得る機会となっています。一番貴重なのは、実際に派遣を経験した方の話や教訓を聞けることです。
※業務調整員とは、現地での情報収集や現地政府・国際機関との連絡・調整、また物資の現地調達などの後方支援を行う要員です。
今のところチーム派遣の経験はありません。災害は起きないほうがいいと心から祈る一方で、もし起きたら自分のできる最大限のことをしようと思っています。
業務調整員が着るJDRのジャンパー
職場にはパスポートや着替えなど身の回り物を準備しています。いつ災害現場に派遣されるか分からないので、これをやりたい!と思うことは先延ばしにせず、楽しもうという気持ちが強くなりました。
JDRは海外で活動する組織なので、被災現場への直接的な支援は行いませんでしたが、多くのチーム関係者が所属部署から被災地へ向かいました。特に他組織との連絡・調整や後方支援の面でJDRでの経験が本当に役立ったという声を多く聞きます。医療チーム関係者を中心に、JDRの経験を国内の大規模災害対応時にさらに活かすための検討も行われています。
2010年パキスタン洪水被害における医療チームの活動
東日本大震災では海外から多くの救援隊が駆けつけてくれました。国際災害救援の分野では共感と連帯の活動が積み重ねられてきて、そこでは日本も重要な役割を担っています。それを心に留めながら、資機材や写真などから日本の国際緊急援助について理解を深めていただければ嬉しいです。