「国際緊急援助隊に参加して」

【写真】佐藤 千歳(さとう ちとし)さん 愛知県岡崎市出身・在住自治体職員
佐藤 千歳(さとう ちとし)さん 愛知県岡崎市出身・在住

海外で災害が発生したとき、日本から派遣される「国際緊急援助隊(JDR)」。いち早く現場へ駆けつけ被災者救援にあたる隊員には、東海4県で登録されている方もいらっしゃいます。
今回は、2010年のパキスタン洪水発生時に医療調整員として派遣され、救援活動に当たられた佐藤千歳さんにお話を伺います。(聞き手:JICA中部 市民参加協力課 藤田)

自己紹介およびJDRへ派遣登録されたきっかけについて教えてください。

私は臨床検査技師として普段は自治体職員として働いています。大学院在籍時、寄生虫学研究の一環としてネパールに滞在したことが私と国際保健の出会いでした。修了後は青年海外協力隊に参加し、アフリカのモザンビークで臨床検査技師として活動しました。これまで培った国際保健の経験をどこかで生かしたい、自分ひとりの力は微力でも途上国の人々の命に関われるのなら、そういう思いで帰国後JDRに登録した次第です。

2010年のパキスタン洪水災害では国土の約5分の1が冠水し、2000万人あまりが被災したとも言われていますが、佐藤さんが現地に到着したときの様子はいかがでしたか。

避難民キャンプ

私が派遣されたのは9月初旬で洪水が発生した7月から約2ヵ月も経っており、いわゆる災害急性期ではありませんでした。それでも低地にはたくさんの水が溜まっており、道沿いにはテントが多数並んでいました。人々は洪水から避難できたものの家など多くを失い、復興に向けて数々の課題が山積しているという印象を受けました。私は医療調整員(*)としてだけでなく、臨床検査技師として医療活動にも携わりました。
*医療調整員とは医師や看護師のように、被災者の診療や手当てをするのではなく、カルテを書いたり、医薬品の調達や診療を待つ人の整理と、医療活動をスムーズに行うためのサポートをする人です。

現場でのエピソードや活動時に心がけていらっしゃることがあれば教えてください。

診察にきた患者親子

通訳を自発的に手伝ってくれた子どもたちとの一枚

派遣されたパキスタンは、イスラム教の国です。9月はラマダンといって断食の時期にあたり、私たちの活動期間はちょうどそのラマダンと重なりました。私たちはイスラム教徒に配慮して、食事を摂るときはパキスタンの人の目に触れないようにしました。
また活動場所は9月とはいえ日中の気温が約40度となりますが、ラマダンのために人前で水分を摂ることもはばかられました。JDRは日本を代表して派遣されていますし、支援に行った自分が倒れるわけにはいきません。電気の供給が安定せずクーラーや扇風機もない所で脱水症状になりかけながらも、必死で活動に当たったことを今でも覚えています。

そのような環境下でしたが、活動時には二つのことを心がけました。一つは現地の文化や習慣を十分に配慮して活動を行うこと。災害医療では緊急災害時に医療を施す能力が必要なのはもちろんですが、海外での救援活動では何より彼らの文化や習慣に寄り添う姿勢が大事であると思っています。私たちのやり方で活動をすることは簡単なことで、宗教等を無視して私たちのやり方を持ち込めば楽にできます。しかしそれは価値観が同じ国内でなら通用することはあっても、海外では現地の人との軋轢を生むこともあります。青年海外協力隊の活動で学んだことですが、医療従事者である前に人として、現地の習慣や考え方を認め、その中でできる活動を心がけました。
二点目に心がけたのは、JDRはチーム活動である認識を強く持つことです。私が身勝手な行動をすれば、チームの活動に迷惑をかけるだけでなく、ともすると命を落とすことにもなりかねません。派遣直前、母に強く言われたのは「海外の被災現場で活動するのだから、あなたが現地で死ぬようなことがあっても仕方がないと私は覚悟している。でも、チームで活動するのだからチームに迷惑をかけるようなことはしないでね」という言葉でした。

JICA中部なごや地球ひろばでは現在、企画展「国際緊急援助隊 出動せよ!」を開催中です。救助チームや医療チームの資機材をはじめ、活動写真などの展示がございますが、来館者のみなさんにはどんなところを見て、感じていただきたいですか。

途上国支援に関心を持ち続けてほしいです。私には関係ない、そう思ってほしくないですね。JDRのような活動は特殊ですが、活動をするまでいかなくても関心を持ち続けてほしいと願っています。
最後にマザーテレサが残した言葉で締めくくります。
『愛の反対は憎しみではなく無関心です』

現在も自治体職員として勤務しながら緊急の要請に備えていらっしゃる佐藤さん。また看護系の短期大学で国際看護の講座をご担当されており、近い将来、日本の国際協力を担う世代へご自身の知見を還元されています。今後のご活躍も期待しております。ありがとうございました。