【7月号】貧しさの中の豊かさを追う

【写真】上田 敏博(うえだ としひろ)さん 愛知県名古屋市出身・在住JICA中部なごや地球ひろば地球案内人(青年海外協力協会(JOCA)中部支部所属)
上田 敏博(うえだ としひろ)さん 愛知県名古屋市出身・在住

青年海外協力隊への参加をきっかけに、世界と関わり続ける人がいます。今回はフィリピンでさまざまな経験を積まれ、現在青年海外協力協会(JOCA)中部支部でなごや地球ひろば業務を担当されている上田敏博さんに、先月号に続き2回連続でお話を伺います。
(聞き手:JICA中部 市民参加協力課 増井恵)

活動拠点を日本に移されていますが、途上国での知見・経験が、国内でのご自身の業務で生かされた場面はありましたか。

スラムに暮らす子ども

私の活動していたフィリピンでは貧困、教育、医療、人権、環境などといった問題が存在しています。しかし、マニラ首都圏の都市の貧困地域に暮らす子どもたちの笑顔は輝いていました。人々は少ない食べ物を分け合い、家族や友人と時間を共にすることに「幸せ」を感じ、地域社会の連帯感がありました。少ない生活必需品を分かち合って生きる人々の心に人間の本質を感じ「カネ」や「モノ」の豊かさではない、本当の豊かさとは何かを考えさせられました。これらの体験を踏まえ日本に帰国してからは、ひとりでも多くの人たちに世界の現状を伝え、その問題解決に向けて日本の皆さんが行動していくきっかけづくりに生かしています。

上田さんにとって国際協力とはどのようなものだとお考えですか。

スモーキーマウンテンにて小学生奨学金制度対象の子どもたちと(筆者中央)

国際協力とは、開発途上国の人々が自立し、ともに生きていく格差のない社会づくりのお手伝いをすることであり、「1000匹の魚を与えるよりも1匹の魚の捕り方を伝えたい」が私のモットーです。青年海外協力隊やNGO活動は、自ら実践することによって予想しない発見があり、経験した者は、自分の活動したこと以上に得るものの大きさに気づかされます。協力する側が一方的に「モノ」や「技術」を与えるのではなく、そこで暮らす人々の意識や能力を引き出すような活動でないかぎり、本当の問題解決にならず、「モノ」や「技術」が得られなくなった時、彼らはまた苦しい生活に戻らざるを得ません。彼らが直面する困難の根本原因を考えた上で、協力する側と受ける側との意識のギャップが生じないように、彼らが本当に求めていることを探り、手を携える姿勢が重要だと思います。

なごや地球ひろばでは、今年度上期の企画展「JICAの仕事−世界も日本も元気にする仕事−」(9月1日まで)が開催中です。地球案内人として、来館者のみなさんにはどんなところを見て、感じていただきたいですか。

なごや地球ひろば訪問プログラムの案内をする様子

この企画展は「世界も日本も元気にする」をテーマに、開発途上国が抱えるさまざまな問題を解決し、国際社会や経済発展を支える「JICAの仕事」を紹介しています。アフリカの暮らしを学んだり、開発途上国を再現した村落の模型に橋を架けると学校に通えるようになるインフラ整備の体験キットで考えたり、自転車を漕いで濁った水をろ過する体験をしたりと、子どもから大人まで楽しみながらJICAの取り組んでいる国際協力について一緒に学び、考え、理解を深めてもらう展示内容になっています。同展期間中には、ワークショップや講演などの連動イベントも開催されますので、あわせてご参加ください。

ありがとうございました。なごや地球ひろばの顔として、これまでのご経験を生かし、ますますのご活躍をいただきますようお願いいたします。