国際連合地域開発センター(UNCRD)上席研究員(経済・社会開発)
高井 克明(たかい かつあき)さん 愛知県名古屋市在住
JICA中部では地域のリソースと協働して年間約80コースの研修を実施し、開発途上国から研修員として、国づくりの中核を担う行政官や技術者、研究者など500名ほどを受け入れています。研修の実施・運営にあたっては、東海4県(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)の地方自治体、公益法人、大学、民間企業、NGO/NPOなど、多くの関係機関にご協力いただいています。
今回はその中から、中部地域唯一の国連機関であり、現在、課題別研修「生物多様性を活かした地域開発」コースをご担当いただいております国際連合地域開発センター(UNCRD)の高井研究員にお話を伺います。
(聞き手:研修業務課)
研修中の講義の様子
日本に平和が訪れてから生まれた私は、海外で平和に貢献できる仕事がしたかった、それが国際協力でした。最初は公務員として海外貿易業務等から入りましたが、その後、国連地域開発センターの国際研修に参加して、多くの途上国の行政官と接することにより、自らの経験が途上国に活かせることが分かりました。そのような経緯を経て国連地域開発センターに勤務することになり、JICA中部とも協力しながら主に研修事業に携わることになりました。
コロンビアでの第三国研修(2001年11月)
(左から3人目が高井さん)
特に印象に残っているJICA研修は、最初に携わった「チリ都市システム開発」(平成11〜15年度)コースです。そのころチリの都市開発のレベルは既に高く、ニーズがよく掴めなかったので、事前調査のために1週間ほど現地を訪問しました。チリ企画協力省のアクナ・エルナン氏に朝から晩まで引っ張り回されて日々くたくたになりましたが、ラテンのノリでいつも楽しく、かつ真摯に調査を進めることができました。調査結果をもとに研修プログラムを完成させ、日本で5年間研修を行いました。日本側から一方的に教えるというよりは、チリと日本の両者で都市開発を議論することができました。帰国後、エルナン氏は、日本で学んだこととチリの知見を併せ持って、中南米全域に普及させたいと、コロンビアに中南米諸国から研修員を呼び寄せて研修を行いました(第三国研修)。私も研修実施者の一人として招待され、研修プログラムの立案・実施に関わりました。次は、小規模になりましたがキュ−バで住宅開発について中南米諸国向けの研修を行いました。このように日本で行なった研修がチリから中南米全域に広がっていったことが夢のようであり、やりがいを感じました。
講義中の研修員との対話の様子
相手のプライドを傷つけないことです。お互いの文化の違いを十分に理解し、注意するときもジョークを交えるなど相手にうまく伝わるよう工夫するようにしています。上記のチリ研修でラテンのノリを身につけたので、ジョークはうまくなりました。日本の先生が良かれと思って真面目に注意したことが、研修員のプライドを傷つけ、途中で退席するという出来事も過去にありました。日本で当然であっても文化の違う国では侮辱されたと捉えられてしまうことがあります。
また、自分の考えを述べたい研修員が多いので、講義は対話形式を心がけています。日本人のように黙ってまずは聞きなさいというスタイルは却って集中できないようです。
インドネシアでの事前調査
(2004年1月)
研修を行うにはやはり研修に携わる関係者が現場のニーズを把握することが大切です。現地の開発ニーズを正確につかめるよう、テレビ会議システム等を活用して研修の準備ができる環境を整えて欲しいと思います。また、帰国後の研修員の活動に関する情報の交換を密にしていただきたいと思います。