【11月号】「JICA国際協力感謝賞を受賞して」

今回は、平成26年度JICA国際協力感謝賞(注1)を受賞されました山田雅雄さんから、鈴木康次郎所長がお話を伺います。

 

【画像】鈴木所長(*以下、敬称略):今回は、JICA国際協力感謝賞の受賞、おめでとうございます。一番初めに国際協力に携わることになった経緯やこれまでのご経験を教えてください。

山田さん(*以下、敬称略):大学卒業後、名古屋市下水道局建設部に採用され、それまでは主に市が実施する下水関連事業に携わってきました。その中で初めて「海外」に触れたのは、日本下水道事業団への出向時、海外からの研修員との意見交換でしょうか。その後、名古屋市の総務局企画部へ配属となり、「名古屋新世紀計画2010」策定に携わりました。
また、平成19年からの4年間は名古屋市副市長として、市長室・総務・環境・住宅都市・緑政土木・上下水道・交通局を担当しました。
 本格的に「国際協力」に携わることになった経緯は、平成2年にケニア政府が日本政府に対し要請した下水分野の無償資金協力事業に関連して、JICAが派遣したプロジェクト形成調査団に参加したことです。私は調査団の一員として、ケニアのナクル湖の水質汚濁の改善事業に関する調査を行いました。
ナクル湖は多くのフラミンゴが生息していることで有名な観光地ですが、隣接するナクル市から流れ込む汚水により、ナクル湖の水質が悪くなってフラミンゴが飛来しなくなった、というので下水道整備の要請を受けたのです。実際に下水道の能力不足が原因かどうかは明確ではないのですが、下水が十分に処理されずにナクル湖に入っているのは事実でした。そこで、湖に汚れをできるだけ流入させないようにするために、簡易でありながら技術レベルの高い汚水処理施設の設置を目指し、施設の改築・増強を行うための調査を行うこととなり調査団に参加しました。
その後は、名古屋市の姉妹都市のひとつのメキシコシティで名古屋市上下水道局が実施した草の根技術協力事業にも携わりました。活動の中で実感したのは、メキシコシティはエンジニアの技術力は十分高いのですが、指示をするエンジニアと、現場で働くワーカーとの技術的な乖離が大きいため、技術移転の難しさを感じました。
また副市長時代にJICAのBOPビジネス(注2)調査案件で採択された企業と共同で、名古屋市がスリランカにおける未普及地域の水道整備の調査に着手しましたが、調査の過程で技術移転も必要であることが分かりました。それで始まったスリランカでの草の根技術協力事業でも、エンジニアとワーカーとの間に差があり、全体として技術力の確保に問題があると思いました。こうした部分を草の根事業で補完していきましたが、現在は、「蒔いた種から芽が出つつある」段階だと思います。

鈴木:これまで様々な形でJICAとかかわりを持ってこられたわけですが、山田先生がJICA中部と関わりを持たれたのはいつ頃でしょうか?

山田 雅雄(やまだ まさお)さん
元名古屋市副市長・中部大学客員教授

山田:名古屋市下水道局時代に、JICA中部が受け入れを行っている海外からの研修員を受け入れたり、草の根技術協力事業に職員を派遣した頃です。

鈴木:長期にわたりJICA事業や国際協力に関わられてきておられますが、その中で山田先生が一番印象深かったことは何でしょうか?

山田:やはり一番初めに関わるきっかけとなった、ケニアでの調査です。調査時によく見かけた子どもたちの目の純粋さが一番心に残っています。

鈴木:なごやJICA会を平成13年に設立され、会長、顧問を務められていますが、こうした会を設立されようと思ったきっかけやなごやJICA会の主な活動について教えてください。

山田:なごやJICA会は、名古屋市職員の中で、JICAの海外支援活動に従事して支援先の途上国で技術指導をしたり、海外からの研修員に名古屋で指導を経験した職員の会です。メンバーの多くは上下水道局所属の方ですが、環境局、消防局、財政局、緑政土木局等に所属されておられる方も参加されています。

鈴木康次郎所長

鈴木:平成21年には、「水のいのちとものづくり中部フォーラム」を設立され、顧問もされておられます。

山田:「水のいのちとものづくり中部フォーラム」は、中部のもつ水技術や、水との関わりの経験を、水問題解決のためのソリューション・パッケージの形に昇華し、中部発のビジネス展開につなげるとともに、地域や国際社会の発展に貢献していくことを目的としています。
 今は、この活動の一部として、スリランカにおいて、BOPビジネスを活用し、人の飲用に適する水を供給する簡易水道のようなシステムを持ち込みたいと考えています。また同様の取り組みをカンボジアなどでもできないか、調査をしているところです。

鈴木:様々な側面から途上国での協力を試行されている山田先生ですが、これまでの活動の中でご自身がモットーとされている国際協力に対する考えや姿勢をお聞かせください。

山田:国際協力のキーワードは「社会的責任」ではないでしょうか。世間に貢献することは、チャリティー(慈善)ではありません。誰かが躓いて転んだら誰でも手を貸すように、人は自分一人で生きているわけではないですよね。そのような観点から、「社会的責任」という意識のもとで国際協力に携わっていくことが必要だと感じています。

【画像】鈴木:JICA中部に期待すること、名古屋市民の皆さまへのメッセージをお願いします。

山田:この地域には、海外で活躍する企業や人が多くおり、今後ますます家族で海外転勤となる機会や海外からこの地域に来られる方と「共生」する機会が増えていくと思います。こうした時代に対応するためにも大人になってから海外や途上国に触れるのではなく、小さいうちから地域内で海外に触れ、知見を広めていくことが大切だと思います。
そうした意味においては、JICA中部は「なごや地球ひろば」などの交流の場をもち、ユニークな活動をしているので、ぜひ、継続してほしいです。また、JICA中部が行っている国際的な活動を市民の皆さまに広く知っていただき、国際協力についての理解を深めていただきたいと思います。


(注1):JICAが行う国際協力の業務に貢献し、または長年にわたって協力し、特に功績があったと認められる個人と団体に贈られます。
(注2):BOPは、base of the economic pyramid の略。低所得層を対象とする国際的な事業活動。民間企業と開発援助機関が連携し、収益を確保しながら、貧困層の生活向上など社会的課題の解決に向けて貢献する。