【3月号】「肩の力を抜いて、自然体で、そして心のふれあいを」

【写真】浅沼 修一(あさぬま しゅういち)さん 岩手県盛岡市出身、愛知県名古屋市在住名古屋大学農学国際教育協力研究センター 教授
浅沼 修一(あさぬま しゅういち)さん 岩手県盛岡市出身、愛知県名古屋市在住

写真:浅沼修一さん 1980年IITAの寮で隣室だったDr. Nzola M. Mahunguと。現在は母国コンゴ民主共和国(旧ザイール)IITA事務所代表。2005年8月、ワシントンD・Cの世銀主催会議場で22年ぶりにバッタリ再会。Surprise!

今回は、長らく農学分野の国際協力にご尽力されてきた、名古屋大学農学国際教育協力研究センター教授の浅沼修一さんにお話を伺います。世界各国に多くのファンを持つ浅沼教授ですが、2015年3月末に、惜しまれつつ名古屋大学教授を退官されます。
(聞き手:JICA中部研修業務課)

はじめに、自己紹介をお願いします。世界とのつながりはどこでどのように始まりましたか。

名古屋大学大学院で7年半学んだのち、1979年11月、最初に就いた仕事がナイジェリアにある国際熱帯農業研究所(IITA)でした。化学肥料が高くて使えないなかで、微生物を使って空気中の窒素をダイズやカウピーというマメ科植物が使えるようにする研究をしました。
4年の間に、いつの間にか肌の色の違いを忘れ、友達がたくさんできました。人間は心のふれあいが何より大事だと自然に納得できたことが良かったと思います。
1983年の帰国後、熊本、札幌、熊本、つくばを経て、2005年4月、26年ぶりに名古屋大学に戻りました。ケニアの土壌侵食地域の土壌と住民意識の調査やアフリカ稲作に関わる研究を行う一方で、教育やアフリカの中核となるイネ研究者に対するJICA研修等を通じて国内外の人を育てる仕事にも関わってきました。この3月で定年退職を迎えます。

国際協力に携わったきっかけ、またこれまでのご経験についてお聞かせください。

砂漠化防止の調査で雨季のブルキナファソを調査(1999年7月ごろ)。トウモロコシ畑の手鍬除草をやってみて仕事の大変さを実感。 

札幌と熊本で、インドネシアとフィリピンのJICA研修員を受け入れて一緒に根粒菌の研究をしたことが始めです。その後、両国にJICA短期専門家として派遣されました。当時流行していたホイットニ−ヒューストンなどのポピュラー音楽を聴きながら、「手に職(技術)があれば世界のどこででも仕事ができる」と思ったものです。
1998年以降はつくばにある国際農林水産業研究センター(JIRCAS)で、海外との研究交流、ブルキナファソでの砂漠化防止に係る現地調査、フィジーやニューカレドニアの熱帯島嶼研究調査などをしました。

特に印象に残ったエピソードやプロジェクトがあれば教えて下さい。

丸山千枚田で手押し除草機の実演を前にして、その仕組みや自国での技術レベルや普及について職員と質疑応答するJICA研修員(2014年7月)

2005年から毎年JICA集団研修を行ってきました。無料のGISソフト技術を広めるための研修は私が担当してから8年間、前任者からでは13年間も続きました。
また2012年からアフリカで稲を広めるための中核的農学研究者の育成研修を3年間行いました。JICA中部や三重大学の先生方の協力を得て、最後の2年はとても熱い雰囲気の中で研修ができたと思います。優秀で個性的な研修員とがっぷり組んで、今年は3年間のフォローアップもできました。関係者が前向きに力を合わせることが2倍3倍の力になることを実感しました。
そういえば、私の授業の中で、協力隊経験者にタンザニアと中米の経験談を話してもらったことがあります。これも印象に残っています。初めての外国がナイジェリアでしたが、以来、今でもつきあっている友人がナイジェリア、コンゴ民主共和国、ブルキナファソにいます。

浅沼さんがモットーとされている国際協力に対する考えや姿勢などがあれば教えてください。

ウガンダ西部エドワード湖近くのBishop Ogez高校で(2005年8月)。最終学年の女子生徒4人はいずれも男子生徒にひけ目を感じない、科学を勉強したいと夢を語った。

百聞は一見に如かず、まず現地を自らの目で見ることが大事です。そしてそこに住んでいる人と同じ目線でしっかり話すこと。好きな人もいればそうでない人もいます。これは日本に限らず世界でも同じです。

市民の方へのメッセージをお願いします。

日本の工業製品の生産・輸出や食料輸入の面でこれからはますます世界の中での日本を考えていかざるをえないと思います。愛知万博、COP10、ESDなどを招へいしていますが、市民レベル、個人レベルで世界との交流をますます深め、友達になっていくことを心がけることが大切だと思います。

【JICA職員からのメッセージ】

2015年2月マダガスカルにて農業省幹部たちと

浅沼教授は本年3月をもって名古屋大学教授を退官されます。「アフリカの農学研究に浅沼あり」、アフリカを最も愛し、農学を通じて開発に携わった研究者であり、教育者の一人です。先生のモットーは「グローカル」。地球規模の課題に取り組みながらも現地の人々の視点を大切に研究やJICA関係者の指導・助言を行って来られました。その情熱、フットワークの軽さ、人柄の温かさに対するファンは国内外に多数。2008年からは農学に係る国際協力に携わる大学間のネットワーク(農学知的支援ネットワーク:JISNAS)の設立、運営の中心的役割を担われました。ご退官後も引き続きのご活躍を祈念しております。(JICA農村開発部次長 田和正裕)