【JICAボランティア活動記】「コスタリカ、地域をまわって自然を護る」

2016年9月26日

写真:武田 淳さん(現在も交流が続く同僚たちと 前列右) 

武田 淳(たけだ じゅん)さん
平成22年度2次隊
コスタリカ共和国・社会学・文化人類学
愛知県豊川市在住

国立公園で社会調査

公園に生息するナマケモノ

私は、中米コスタリカの海洋国立公園で、密漁問題の解決に向けたプログラムに従事しました。コスタリカは、生物多様性が高い国として知られ、国土の4分の1が自然保護区に指定されています。私が活動していた国立公園には、二種類のナマケモノやリスザルなど日本では見ることができない野生動物が棲息していました。保護区の中で護られた自然は、エコツーリズムの資源として活用されています。観光業は、今やこの国を支える基幹産業です。自然を護りながらも、経済成長を両立しているのがコスタリカの特徴です。

密漁の実態を調べる

調査の様子

しかし、現場では問題もありました。公園内の海域に生息する魚の密漁です。公園からわずか5kmの地点に漁村があるのですが、漁師さんたちによる密漁が疑われていたのでした。国立公園職員である私の同僚たちは、密漁を取り締まる立場です。しかし、単に取締りを強化するだけでは根本的な問題解決にはなりません。「なぜ、人々が密漁をするのか、せざるを得ないのか」といった背景が分からなければ、効果的な解決策が導き出せないからです。そこで、周辺のコミュニティを回り、実態調査を行いました。

見えてきた問題点

すると、いくつかの問題が浮き彫りになりました。最も大きな問題だったのは、国立公園と地元漁師さんが意見交換をする場面がなかったことです。国立公園は数年前に、保護海域を大きく広げました。より多くの海の生物を護るためです。しかし、この時、漁師さんとの話し合いを設けないまま計画が進められてしまいました。漁師さんからすれば、目と鼻の先にある海域が、突然、禁漁区になってしまったという感覚を持っていたのでした。そのため、今まで許されていた海域で漁をすることが「密漁」として取り締まられてしまうことに違和感を抱いていました。

研究を通じてコスタリカとつながる

任地の国立公園

自然を護ることは「いいこと」かもれません。しかし一方で、私たちは自然を利用しなければ生きていけません。現場を歩きながら、自然を護ることと利用することのバランスをどのように取ったらいいのか、ということを考えるようになりました。そこで、帰国後は大学院に進学し、博士号を取得。現在は、岡崎市にある人間環境大学で教員をしながら、より良い「自然の護り方」を研究しています。現在でも、年に1度は、調査でコスタリカを訪れる機会があります。研究を通じて、私なりの国際協力は続いています。「今年も帰ってきたのか」と言って迎え入れてくれるこの国は、私が人生の再スタートを切った場所であり、帰る場所でもあります。