日本語研修を終えたメキシコ人研修員のその後

2019年8月9日

2019年4月1日に来日した「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画」に参加しているメキシコ人研修員は、日本語研修を受講した後、5月13日から北陸、中部、関西、中国の各国内拠点に分かれて技術研修(各専門分野の研修)を開始しました。その中でJICA中部に残り、製品の品質管理や生産性の向上をテーマとした研修に参加している11名のメキシコ人研修員について紹介します。
この11名が参加する「全社的品質管理・生産性向上」研修はJICA中部が愛知工研協会(刈谷市)に研修実施を委託して5月13日から8月23日まで実施します。研修中は講義、演習、実習、見学等を行い、製品の品質管理や生産性を向上させるための方法について学んでいます。

「トヨタ生産方式」の理解

先ず、「計画生産」を体験

検査官作業を担当する研修員

作業台に治具を設置して「カイゼン」

今や世界的に有名となった「トヨタ生産方式」(以下「TPS」)は「自働化」と「ジャストインタイム(以下「JIT」)」を2本柱とするモノづくりの中心的な考えです。研修員は2日間に渡り、JITを講義と実習を通じて理解を深めました。初日の講義後、2日目に行われた実習の様子を紹介します。一般的な「計画生産」(決められた数量の製品を各工程で生産して、次の工程に届ける)と「引き取り生産」(JITの基本的な考え。後の工程が直前の工程から必要な時に必要な分量のみを引き取る)の違いを理解しました。これらの「計画生産」と「JIT」の両方の生産方式を体験して、それらを比較し、JITの特徴を理解しました。


11名の研修員は2グループに分かれ、講師が準備した教材を利用し設置された模擬生産ラインで実習を行いました。実習では各研修員が夫々の役割(作業員、検査員、監督者、顧客)に分かれ、実際に手を動かしてTPSを体験しました。対象とした製品は樹脂製のボルトとナット(3種類)、及び金属製の座金を使い、それらを所定の形(3種類)に組み上げ、完成品としました。


「計画生産」と「JIT」の両方の生産方式を体験し、比較した後にJITを更に理解するために、タクトタイム(1つの製品を完成させる時間)を変えたり、工程を「カイゼン(TPSの代表的な仕組みの一つ)」をしたりしました。生産性を上げる為、様々な工夫(材料の置き方、作業台の置き方、寸法を確認する治具の導入など)を行い、品質を保ちつつ生産性向上に努めました。

研修員からは

作業時間は短縮されたかな。

実際に目で見ることが出来てよく理解できた。生産の「流れ」が作られ、工程内での「無駄」に気づくことが出来た。現場の作業員に対してより良い指導を行うことで生産性の向上やミスを削減できることが認識できた」、「カイゼンの為のブレインストーミングを通じて、常にアイデアを実現化する努力をする必要性に気づいた。小さな事でも大きな効果があるかもしれない」、「シンプルな事でもカイゼンに寄与することが分かった。何が役立つかわからない。生産性を向上するために工程の削減を先ず考えたが、その各工程自体のカイゼンも重要であることが分かった。治工具の重要性についても理解できたし、工数の削減にも貢献できる。」

「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画」とは

国際社会の平和及び安全、経済問題、気候変動、核軍縮・不拡散、経済成長の推進等の地球規模の課題に対処するための「戦略的グローバル・パートナーシップ」強化に向けた若手人材育成を目的に、日本・メキシコ双方の学生・技術者を対象に研修・研究を積む機会を提供するものとして、1971年から開始された両国の交流プログラム「日墨交流計画」を課題解決のために発展させた事業です。