【実施報告】2011年度 第1回 国際理解教育研修会

2011年6月24日

  • 日時:6月18日(土) 13:00〜17:00
  • 場所:広島YMCA3号館 1F
  • 参加者:46名(小・中・高の教員、学生、国際協力に興味のある一般の方)
  • テーマ:「教室から世界を知る授業作り−国際理解教育、はじめの一歩−」

参加型手法を取り入れたオリジナル授業づくりのコツをお伝えします!

国際理解教育と聞いて皆さんどんな「教育」を想像しますか?
「国際」だから、海外のことを学ぶ?「国際理解」だから、理解するためには、英語などの外国語を話せなければいけない?国際人になるための教育??
日本には、「日本人」だけが生活しているのではなく、様々なバックグラウンドを持った人がいます。同じ「日本人」でも多様な価値観を持っています。違いを認めあうことから始まる国際理解。まずは身近な社会を考えるところから今回の研修会を実施しました。

講師には、広島県内の学校で意欲的に参加型手法を取り入れた国際理解教育を実践されている、広島市立宇品中学校教員 岡田祐一氏と呉武田学園武田中学・高等学校教員 サウザー・アシュリ氏のほか、JICA鳥取県デスクとして活躍中の森木由加里氏を迎え、参加者には13時から17時までみっちり、しっかりワークショップに参加していただきました。

岡田祐一氏「震災を通して考える、これからの社会」

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アクティビティ1)「わたしの気持ち」
震災という事実に出会った自分自身の「気持ち」「思い」を整理し、共有する。

アクティビティ2)「これからの社会」(ウェビング手法を用いる)
震災後の社会の変化を考える。
これから、自分たちはどのような社会を作っていくか、作って行きたいか考える。

アクティビティ3)「世界は日本と共にある」
東日本大震災に対して世界から寄せられている支援やメッセージについて知り、日本に暮らす私たちはこの事実を決して忘れてはならないことを心に刻む。

3月11日以降、私たちの生活や意識は大きく変わりました。ただ、どのように変わったのか、あの時から今まで私たちは何を考え生活してきたのか、自分の意見を発信する機会は多くありません。
参加者からは、「原発などのニュースに接する中で『慣れてきている』自分に気づいた」、「身近な人のつながりをより強く意識するようになった」という意見をいただきました。その一方で「悲しい出来事がないと身近な人の大切さに気づけない自分たちを悲しく感じた」などの意見をいただきました。
岡田氏は最後に、震災に対して世界から寄せられている応援メッセージや支援エピソードカードを一人ひとり異なったものを無作為に配布し、「世界からの小さなエピソードです。これは忘れ去られてしまうかもしれないけれど、カードをもらったあなただけはこのことを覚えておいてください」とおっしゃいました。参加者の皆さんは、じっとカードを見つめ、エピソードを心に刻みました。

海外のエピソードを2点ご紹介します。(外務省HP「がんばれ日本!世界は日本と共にある」より)

  • ポーランド クラクフ市のタクシー運転手
    日本人がタクシーを利用して料金を支払おうとしたところ、運転手が「日本人なら料金はいらない。これが今日本のために自分ができる精一杯のことだから。」と言って料金を受け取らなかった。この日本人はタクシー代金分を赤十字社に寄付した。
  • エクアドル 日本で電気通信に関する研修を受けた元JICA研修生
    一人の元JICA研修生が「福島原発における作業に志願したい。」と日本大使館に申し出た。大使館より現状などを説明したところ、本人は「危険なことは十分承知している。また保障等求める意思もなく、ただ役に立ちたい一心で志願している。不可能なことは承知したが、仮に派遣が可能になった場合は連絡して欲しい。」と述べた。

サウザー・アシュリ氏「国際人を考える」

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1)When in Rome, Do as the Romans Do. 郷に入れば郷に従え
−コミュニケーションを通して、文化の誤解を防ぐ−
英文の書かれたプリントを見ながら、英語を聞いて先生が遭遇した「信じられないこと」を理解する。
(例)友達にコーヒーに誘われたら割り勘だった!!なんで??
アメリカや中国では、誘った人が支払うのが「普通」。
日本では割り勘が「普通」。どちらが間違っていると言うことはない。
異なった文化では、異なったマナーがある。つまり、郷に入れば郷に従えってことですね。
でも、なぜ?と聞かなければ誤解したままです。誤解を防ぐためにもまずはコミュニケーションをとることが大切です。

2)Dress for Success…成功のため、服装が大事
ハイヒールで登山すると?…足を怪我する。
泳ぐときにダウンジャケットを着ていると?…泳げない。
泳ぐときは水着を着る、スキーに行くときは厚着をする。
自分自身は変わらないけれど、その場に合った服を自分で選んで着ます。文化もそれと似たようなものではないでしょうか?
自分自身のアイデンティティは大切にしながら、より快適に楽しく過ごすために相手の文化を身につけて生活する。そうすると、違う服を着た人(違う文化を持つ人)とももっと仲良くできるのではないでしょうか?

3)Where is the 国際人?
「国際人」という言葉はよく聞くけれど、具体的にどういうこと、どういう人のことを指すのでしょう?
3種類のイラストを用いてどの人が国際人だと思うか、理由もあわせてグループで話し合いました。(日本語です)
イラストA
英語ペラペラ、文法完璧、でも怖いので海外には行ったことがありません。また、あまり行きたいとも思いません。
イラストB
英語はあまり得意ではないですが、日本の技術を伝えようと世界中を飛び回っています。自分の仕事に誇りとやりがいを持っています。ただ、日本が一番という意識が強いようです。
イラストC
日本の農村部に住んでいます。若い頃、戦争を経験し、戦争をしないためには相手のことをわかることが大切だと考えています。好奇心が強く、家にいろんな国の人々を招き、交流しています。また、家では空手教室などを開いています。外国に行ったことはなく、日本語を話します。
さて、あなたは誰が『国際人』だと思いますか?

4)Why be International?...『グローバル教育』、『国際交流』は今はやりだけど、生徒たちには、本当に大切?その理由は?

サウザー氏には「国際人を考える」というテーマから、どんな人が国際人と言えるか、英語の授業要素を取り入れ、実施していただきました。
参加者の中には、久々の英語の授業ということで最初は緊張した様子でしたが、サウザー氏の「この1時間で英語が好きになるよ!」というコトバに皆さんリラックスされたようでした。
参加者からは、「そういえば、『国際人』って何か考えたことがなかったな」という声も聞かれ、たとえ、外国に行ったことがなくても『国際人』になることができるということを実感されたようです。

森木由加里氏「あらためて考える、国際理解教育/開発教育を学ぶ上で“参加型手法”を取り入れるよさとは?」

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研修の振り返りとして、参加型手法について取り入れるメリットとファシリテーターの心構え、ワークショップの振り返り時間の重要性について講義いただきました。
森木氏のキレのある語り口調に参加者からは「ポイントをおさえていて分かりやすかった」、「ファシリテーターの役割が分かった(司会者じゃない)」との声が聞かれました。

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会場が狭く、動きが取りづらいなか、皆さん積極的に参加していただき、有意義な研修会を実施させていただくことができました。本当にありがとうございました。
次回第2回国際理解教育研修会は来年1月21日(土)、会場は広島YMCA3号館です!
皆様のご参加、お待ちしています!!

(市民参加協力調整員 石倉 記)