うちしか対応できるメーカーはいない。だから決めました。

-スーダンでの電気式乾燥機販売ビジネスに挑む創業70年の老舗ー (大紀産業株式会社 安原 宗一郎様)

【写真】安原 宗一郎大紀産業株式会社 代表取締役社長
安原 宗一郎

大紀産業株式会社は2015年からスーダンで玉ねぎの付加価値向上のため電気式乾燥機の普及を目指し、現地調査を続けていらっしゃいます。アフリカの中でもビジネス環境が整っていないスーダンで、なぜビジネスに挑戦しようと思ったのか。そしてその挑戦は今どうなっているのか。横浜でのTICAD7を来年に控え、アフリカビジネスの最前線にいる大紀産業にスポットをあて、安原社長にスーダンを選んだ経緯、現場での苦労、今後の展望などを伺いました。

岡山市北区に本社を構える大紀産業株式会社は、今年で創業70年を迎える乾燥機専業メーカーで、「食品乾燥機」の分野では国内トップシェアを誇ります。10年前に従来の灯油式から日本初の電気式の乾燥機を開発したことで、故障が少なく、大型化や低燃費化を実現。2015年度JICA中小企業海外展開支援事業(案件化調査)、続く2017年度には普及・実証事業で採択され、スーダンで玉ねぎ乾燥工場を復活させるべく、現地調査を進めてきました。

最初のきっかけを教えてください

電気乾燥機から乾燥玉ねぎを取り出す様子

JICA中国:まず、皆さんからよく聞かれると思うのですが、なぜスーダンで乾燥機のニーズがあると知ったのですか?
  
安原社長:スーダンにいる日本人コンサルタントからの問い合わせがきっかけです。あまり知られていませんが、実はスーダンは世界有数の玉ねぎ生産国で、以前は旧ソ連の技術支援を受けて、1日50t処理する半官半民の大規模玉ねぎ乾燥工場があったそうです。それが、10年前に稼働が停止してしまいました。それから農家が玉ねぎを作っても買手がおらず、価格が3分の1以下に大暴落してしまったり、それでも売れない玉ねぎは腐らせとくしか方法がなく、玉ねぎ農家が大変なことになっていたそうです。そこで、スーダン政府から乾燥玉ねぎ工場を復活させて欲しいという要請があったと、スーダンで玉ねぎ栽培の指導をしていた日本人技術者の耳に入り、乾燥機を探すことになり、電気式乾燥機メーカーである我々のところに話が来ました。

我々としても、今から4年前(2014年)に、ケニアに電気乾燥機を販売したことがあって、アフリカには親しみがありました。ちなみにその時の販売先は、青年海外協力隊OGの方がケニアで起業した会社で、ドライマンゴーの現地生産に取り組んでいらっしゃいました。当社の乾燥機は小型で安価なものもあり、メンテナンスもそれほどかからないので、日本でも個人レベルで購入される方がけっこういらっしゃいます。「道の駅」等でドライフルーツとか乾燥野菜などを売っているような生産者組合さんのお客さんも多いですよ。
    
JICA中国:でも、ケニアとスーダンではビジネス環境は全然違いますよね?そこは心配ではなかったですか?(注:現在は一部解除されていますが、案件化事業に採択された2015年当時も今もスーダンはアメリカの経済制裁下にあります。)

安原社長:そうですね。もちろん心配はたくさんありました。現地の状況について、調査をするまで知らないことだらけでしたし、南スーダンの独立からあまり時間もたっていなかったので、当然、治安の心配とか、あとは距離的に時間も費用もかかりそう、という心配もありました。でも、現地から『電気を熱源とした大型電気乾燥機』が必要との要望があって、日本国内で対応出来るメーカーは当社しかなく、私自身もアフリカの将来性に魅力を感じていたので、当社製品が現地で受け入れられるかどうか実際に目で見てみたいと思い、このビジネスにチャレンジすることになりました。

JICA中国:それで実際にスーダンに行ってみて、どうでしたか?

安原社長:まず治安面が非常に良いことに驚きました。また、これまでのJICAの技術協力や青年海外協力隊を通じた人的な貢献もあって、スーダン人が日本人に敬意を持っていると感じたことが非常に嬉しかったです。現地に滞在した日本人がまた来たいと思える国というのもよく分かりました。

スーダンでの状況をお聞かせください。

政府関係者に乾燥機を説明している様子

JICA中国:玉ねぎの乾燥品は日本ではあまり馴染みはありませんが、スーダンではよく食べられるのですか?

安原社長:それもよく聞かれますが、日本でも某社のカレールーには乾燥玉ねぎが入っているそうですよ。現地ではスープにいれたりして家庭料理でよく使われているみたいです。今流行りの時短レシピですね。特にラマダン(イスラム教徒の「断食」の行事)の時に料理をするのは、女性も大変ですから。

現地で市場を見てみたのですが、現地で作られている乾燥玉ねぎは天日で乾燥されてるものが多くて、そうすると色が黒ずんでしまうんです。それに外で干しますから砂ぼこりが混じってしまう。家で食べるだけだったらそれでもいいんでしょうが、やはり電気乾燥機を使って、建物内で作ったものとは全然違います。日本でも家で作る干し柿と、売っている干し柿って色味がちがうじゃないですか。あんな感じで、電気乾燥機で作る「真っ白な乾燥玉ねぎ」も品質面では優位性があるなと思いました。

JICA中国:確かに、家で作る干し柿は黒くて固いけど、お店で売っているのはオレンジでやわらかいですね。機械だから干し加減も調整できますしね。

安原社長:それで案件化調査の時に、首都のハルツームから東に車で8時間行ったところにあるカッサラ州というところに当社の乾燥機を設置して、試作品を作ってみました。するとやっぱり「真っ白い乾燥玉ねぎ」の評判が良くて、カッサラ州の農業省の方からも「これはすぐに販売できる。電気乾燥機をすぐに複数台導入して欲しい」との高い評価をもらいました。

目指している将来像は?

女性が玉ねぎをカットする様子

JICA中国:先日、普及・実証事業に採択されて初めての現地調査に行かれていましたが、これからはどのような活動をするのでしょうか?

安原社長:ハルツーム州とリバーナイル州で各1ヶ所、1日1t処理できる、玉ねぎ乾燥工場を作る計画です。現在は設置場所を始め、電気インフラの準備・指導員の選定作業を行っていることころで、これをモデルケースにして、将来的には、スーダン全土に玉ねぎ乾燥工場を拡大していきたいと考えています。そのためには、品質管理・技術指導も行いながら生産体制を整え、販売先も現地の人と一緒に開拓していこうと思っています。

JICA中国:頼もしいですね。最後に、来年はTICAD7が横浜で開催されますが、アフリカでビジネスをしたいと考えている企業に何かアドバイスはありますか?

安原社長:アドバイスになるかどうかはわかりませんが、我々の活動ではできるだけ女性に参加してもらえる工夫をしています。多分、アフリカのどこの国でも同じと思いますが、女性は子育てや家庭の仕事に追われて現金収入を得る機会が少ないのが現状で、そのために社会的地位が低いことが多い。特にスーダンはイスラム教徒の多い国ですから、女性が外で働く機会はめったにありません。でも女性の能力が劣っているわけではなく、むしろ一生懸命仕事してくれる分、玉ねぎ乾燥工場では女性にこそ働いてもらいたい。それに出来上がった商品を買うのも女性ですし、きちんとしたものを作っていれば、女性従業員の口コミで広がることも期待できます。SDGsの中にも「ジェンダー(女性)平等を実現しよう」というキーワードがありますが、我々の活動は、貧困削減・食料の安定確保・ジェンダー平等・働きがいといった多様な方面から、SDGsに貢献できる計画になっていると思います。これからアフリカでのビジネスを考えていらっしゃる企業さんには、SDGsの考え方も取り入れてもらいたいなと思います。

JICA中国:本当ですね。自分たちのビジネスを通じて、世界に貢献できることは社員さんにとっても大きな誇りに繋がっていると思います。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。