燃え続けていた「不完全燃焼」

-JICA事業では思うようにいかなくて不完全燃焼でした。でも今もアフリカでビジネスしています。ー (株式会社トロムソ 上杉 正章さん)

株式会社トロムソ
執行役員 営業部長
上杉 正章さん

株式会社トロムソは広島県、因島にある社員7名の会社。JICA研修員として来社したケニア人からアフリカでのニーズの高さを聞いたことをきっかけに、JICA事業へ応募。2013年から案件化調査、2014年から普及実証事業をタンザニアで行いました。その当時のことは本人曰く「不完全燃焼」。トロムソはもみ殻から固形燃料(モミガライト)を作る製造機を国内で唯一製造している会社ですが、「モミガライト」の需要がなければ、その製造機も売れません。そこでタンザニアでは「モミガライト」の販売促進も行いましたが、薪との価格比較や、炭との燃焼効率、また使い慣れない商品というハードルは高く、「モミガライト」の普及までは繋がらないまま、事業は終わってしまいました。

でも。
あれから2年。
何やらトロムソがすごいらしいという噂を聞きつけて、改めてインタビューを行いました。

タンザニアでの苦労が実った瞬間

タンザニアでモミガライトの市場調査をしている写真

JICA中国:
タンザニアでの普及・実証事業は2017 年4月に終了されていますが、まずは、終了時から現在までのお話を聞かせていただけますか?
  
上杉さん:
はい。我々の製品は、もみ殻から燃料を作る「製造機」です。弊社に来たケニア研修員から、アフリカでもみ殻が社会課題になっていると聞き、我々の製品が役に立つのではと考えました。そこで、JICA事業ではモミガライト製造機をタンザニアに持ち込み、モミガライトの製造方法や、メンテナンス等の技術移転を行いました。また、そもそも「モミガライト」が売れない限り、その「製造機」も売れないだろう、ということで、「モミガライト」の市場調査などを行いました。

僕たちが現地で「モミガライト」を売ったところ、皆さんすごい興味をもたれて、飛ぶように売れたんです。それで僕たちは気をよくして製造機も売れるだろうと踏んだのですが、実際にタンザニア人に売ってもらうとあまり売れない、という課題にぶち当たりました。今考えると、外国人が来て売っているから、珍しくて、みんな買ってくれていたのかなと思います。使い慣れない新しいものを生活に取り入れるということは習慣を変えるということなので、いくら環境によいモミガライトでも、広く普及させることは簡単ではありませんでした。

JICA中国:
タンザニアでもお米はよく食べますから、廃棄されているだけの資源が活用されず、大切な木々を伐採していく姿を見るのは歯がゆいですよね。

上杉:
そうですね。どんどん木々が減っていくのに、一方で重要な資源となるもみ殻が打ち捨てられているのはもったいないとしか言いようがありません。でも、モミガライトはあまり普及しない。そんな感じで、JICA事業は終わってしまったのですが、製造機自体は、現地に譲渡し、それを使ってもらっていました。それで、あれから2年近くたった先日、なんと新しい注文が入ったんです!製造機を見たタンザニア人が購入すると言ってくれたと。

JICA中国:
ええ!それはすごい!現地の人が使っているのをみて、買ってくれたってことですよね?

上杉さん:
そうなんです。しかも、自分たちは機械の図面も渡していたので、彼らは現地で作れる部分は自分で作るというんです。それでこちらからは、その機械の肝の部分、現地では技術的に作れないパーツだけ送りました。JICA事業実施当時のコンサルタントがその100キロ近いパーツを手荷物で運んでくれて、設置完了まで見守ってくれたんです。販売が広まっていけば送付方法も考えなければいけませんが、、、まずは一歩前進しました。

誰でも、簡単に、環境に負荷をかけずに炭をつくる技術の開発

炭化炉の写真

もみ殻の循環イメージ

上杉さん:
タンザニアでは、モミガライトは薪の代替品であったため、やっぱり燃焼力が炭よりも弱いという課題がありました。価格的にも炭の方が付加価値があるという事で、モミガライトの炭化という新しい技術の開発も行いました。

JICA中国:
それは難しい技術なのですか?

上杉さん:
元来、炭作りには、技術が必要です。炭焼き技術のある人が炭を作る場合でも、1kgの薪から約350g程度の炭しかできませんが、技術の無い人だと100-200gの炭しかできません。ちゃんと管理しないと、燃え尽きて灰になっていたなんてこともあります。実際タンザニアでは薪から炭を作る歩留りが非常に悪かったと記憶しています。でも僕たちの新しい機械は、「誰でも炭が作れる」というものなんです。この炭焼き釜にモミガライトを入れて火を付ければ、それで炭までできます。技術がない人でも簡単に炭が作れるというのが売りです。しかも燃料にはモミガライトを使用するため、環境負荷が一切かかりません。

この技術開発に成功したことにより、もみ殻に新しい付加価値をつけることができました。
天然資源の完璧な循環ができたんです。お米をつくって、食料にする。残ったもみ殻はモミガライトから炭化する段階でエネルギーが得られます。できた炭からもエネルギーが得られるうえ、燃えカスは有機肥料として土に還すことができます。

JICA中国:
すごい!捨てるところがないですね!

上杉さん:
そうなんです。もみ殻は一般廃棄物になるらしく、廃棄費用も発生しますから、廃棄するコスト、エネルギーコスト、肥料コストを考えると、我々の新しい機械を導入していただければ、コスト的な利益も得つつ、地球にやさしい事業展開も可能です。

JICA中国:
まさにSDGsビジネスですね。ナイジェリアや、マダガスカルにも販売実績が広がっていると聞きましたが?

因島から広がる世界

マダガスカルでも使用される製造機

上杉さん:
きっかけは東京にあるUNIDO(国際連合工業開発機関)事務所を訪問したことです。我々がJICAに採択されているという事を知って、UNIDOの「環境技術データベース」に登録することを紹介されました。もちろん英語で登録しないといけないので、そこは苦労しましたが(笑)でも、それをすることによって、格段に海外からの引き合いは増えましたね。

今では、月平均30本くらいの海外からのメールが来ます。もちろん、すべての話が成約するわけではないですが、マダガスカルにあるヨーロッパ系で、バニラビーンズや精油を作っている会社との取引は成立しました。その会社はバニラビーンズや精油をつくる過程で多くの燃料を必要としていて、その燃料を少しでも環境にやさしくお財布にやさしい形で何かないかと考えていた時に、UNIDOで我々の製品を見たらしいです。タンザニアでやっていた時には、常にコストのことを課題視され、我々も価格を下げる努力をしていたのですが、マダガスカルの取引ではヨーロッパ系の民間会社が運営しているということもあり、価格的には逆に安いくらいの勢いだったので、驚きましたね。アフリカでのビジネスには、顧客として、環境を意識した国際企業なんかもターゲットにするといいのかもしれません。1台購入していただき、数か月後には3台の追加オーダーが入りました。マダガスカル内にまだまだ工場があるそうで、数十台のオーダーに繋がりそうです。

JICA中国:
それは新しい展開ですね。確かに、アフリカには多くのヨーロッパ系企業・国際協力団体が来ていますから、彼らに売るのはいいかもしれませんね。ナイジェリアの方はいかがですか?

上杉さん:
ナイジェリアは、UNIDOナイジェリア事務所の元所長さんが、弊社の機材はナイジェリアでも需要があるとおっしゃって、プライベートで購入してくださったんです。それを見たナイジェリア政府の方が、弊社に興味を持っていいただいたのが始まりで、外務省の機材供与型無償資金協力(経済社会開発計画)に採用され、ナイジェリアで7台、契約に向けた取り組み中となっています。こちらは契約の後、機械納入に当たりナイジェリアへも設置のために渡航する予定です。

JICA中国:
頼もしいですね。最後に、来年はTICAD7が横浜で開催されますが、アフリカでビジネスをしたいと考えている企業に何かアドバイスはありますか?

上杉さん:
アフリカは遠く、またビジネスをするためのリスクが多いとのお話しをよく耳にしますが、弊社の場合ですが、支払いに関しましては必ず日本の工場出荷時に全額をいただくことを徹底しています。おそらくお金に関するリスクをお考えの中小企業の方は多いのではないでしょうか。
また現地に駐在所(員)を置くことは非常にコストのかかることですので、弊社の場合はタンザニア・マダガスカルにおきましては、日本人企業でお互い理解し合えたパートナーを作って販売・メンテナンスをお任せしています。
また「ABEイニシアティブ」*1 の制度を活用しまして、ターゲット国の学生をインターンとして受け入れ、ターゲット国とのパイプ作りをおこなうこともいいと思います。仕事のお話しばかりになってしまいましたが、自然の美しさや人の笑顔、日本では発見できない何かを見つける感覚で、一度アフリカ大陸へ足を運んでみる感覚でいいのではないでしょうか。