ザンビアでの挑戦−5年間の活動を振り返って−

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特定非営利活動法人 AMDA社会開発機構
大谷 聡

ザンビアが直面する厳しい現実

アフリカ大陸南部の中央に位置するザンビア共和国。人口の6割以上にあたる約700万人が1日約1ドル以下で生活しており、実に15歳以上の7人に1人がHIVに感染しています。保健医療の不足も相まって平均寿命は45歳と短く、国民の生活はとても厳しい現状に直面しています。首都ルサカでは貧困地域が拡大し、結核の蔓延がHIV/エイズと並んで大きな社会的問題になっています。結核は、毎年新たに6万〜7万人の感染者を生み、免疫力の低いHIV感染者にとって最大の死因となっているのです。日本では過去の病気と捉えられている結核も、ここザンビアでは死に至る病として、特に人口が密集している都市の貧困地域では、いつでも罹りうる病気として恐れられています。

ザンビアでの結核・HIV/エイズに対する取り組み

当団体は、ザンビアの首都ルサカ市とその近郊の貧困地区で、結核・HIV/エイズ対策事業を実施しています。具体的には、人材の不足した公立の保健センターにおける結核治療の向上を図り、地域からボランティアを募って「結核・HIV治療サポーター」として養成し、公的サービスを補強する事業を行ってきました。サポーターたちは、結核担当看護師の補助的役割を果たし、カルテの記録、薬の準備、患者の服薬の確認などを行うだけでなく、受診に来られない患者の自宅を日々訪問しては服薬を支援・確認するとともに、本人や家族、近隣住民に対して結核やHIV/エイズに関する啓発を行っています。中には、新人の看護師を指導するベテランサポーターもいたりして、地域の結核治療にとってなくてはならない存在として認められています。
私は、この事業に過去4年半に渡り携わってきました。2005年11月からは2年半に渡り現地調整員としてJICA草の根パートナー型事業のフェーズ1を担当し、結核の治療・予防活動を推進してきました。結核対策を更に強化し、HIV/エイズ対策とも連動したフェーズ2が始まった2008年6月からは岡山本部のザンビア事業担当として新たにザンビアに赴任した現地駐在員を支えてきました。今年の11月にはフェーズ1とフェーズ2あわせて約5年の取り組みが終了しますが、今振り返ってみると喜怒哀楽に満ち溢れた思い出深い事業でした。

プロジェクトが成し遂げたこと

一言でいえば、サポーターと結核担当看護師の間の良好な関係の構築に腐心した5年間でした。約3,000人の結核登録患者、半日で300人を超える患者に対して結核担当看護師は4人しかいません。普通に考えれば、彼女たちを補佐するサポーター達は大歓迎される筈なのですが、看護師たちも相当厳しい条件で働いているために心の余裕が全くなく、事業開始当初は本来自分たちでやるべき業務をサポーターに押し付け、ミスがあれば責任を押し付けるような姿がたびたび見られました。意欲的に学び、活動していたサポーター達もそのような状態が続くとモチベーションが下がってきます。いくら看護師の労働条件が厳しいとはいえ彼女たちは有償、一方でサポーター達は無償のボランティアとして活動しているのです。我々は現地スタッフと共にサポーターをなだめ励まし、看護師達には如何にサポーターが重要な存在で彼等なしでは結核対策が成り立たないことを根気よく説明し、両者の間の信頼関係を一歩ずつ醸成していきました。その結果、フェーズ1開始時には10名足らずであったサポーターが現在では約90名も常時活動するようになり、過去1年間で4万人近くの人々がサポーターによる保健教育や家庭訪問のサービスを受けることができたのは大きな成果だと思っています。
特に思い出深いストーリーが二つあります。一つ目は、フェーズ1で看護師とサポーターが度々対立していたジョージ保健センターを事業終了後10ヶ月経った頃に訪れた時、看護師とサポーターが非常に高いレベルで活動を継続していたことです。もう一つは、カニャマ保健センターで看護師がサポーターの労に少しでも報いるために自分のお金で様々な野菜の種を購入し、保健センター内の敷地でサポーター用の野菜の栽培を提案したことです。
これらの事例は、それまでプロジェクトの支援を得て実施してきた多くの活動がきちんと現場に根付き、結核担当看護師とサポーターとの間の信頼関係が構築されたことを表しています。まさに我々が目指している、「ザンビア人の自立支援を通じてザンビア人自身が自分達が抱える問題を解決し、社会に大きなインパクトを及ぼしていく」ことが達成されつつあることを実感した瞬間でした。あるサポーターが「AMDAがこれまで本当にいろいろな事を教えてくれたから、今もそれに従って活動を行うことが出来ている」と言ってくれました。我々にとってはこれ以上ない褒め言葉ですが、実際に活動が彼等自身の手で継続して行われているのは、サポーターと結核担当看護師をはじめとする保健センターの努力の賜物です。
勿論全てが上手く行ったわけではありません。サポーターによる小規模ビジネスを成功させ、その利益をサポーターに還元させることにより、頑張っているサポーターに少しでも報いることができるよう努力しましたが、正直十分に成果が出たとは言えません。

サポーターと我々を勇気付けた言葉

それでも、ある結核患者が治療を終え、その経験を他の患者さんと共有する会合で発せられた言葉を聞いて、やはりサポーターは患者さんにとって必要不可欠な存在であることを実感させられました。
「結核治療を始めたとき、私の体重は32キロしかありませんでした。でも今では結核は完治し、以前の体重まで戻りました。現在、抗エイズ治療をしていますが、体力はすっかり回復して、死を意識したあの頃が信じられません。ここまで乗り越えられたのも、サポーターのYさんの支援があったからです。本当にありがとう!!そしてこれからも抗エイズ治療をがんばって続けたいと思います。」
草の根パートナー型事業はまもなく終了しますが、我々の活動は続きます。これからも、全ての関係者が幸せになれるよう引き続き頑張っていきたいと思います。

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パンフレットを配るサポーター(保健教育)

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紙芝居を使って保健啓発活動を行うサポーター