協力隊での経験を活かし、地域と行政の橋渡し役として地域力を発掘

「中国地方において地方創生で活躍するJICAボランティア調査報告書より」NO.1  ■調査実施:公益社団法人 中国地方総合研究センター

【写真】唐井 ゆかり (からい ゆかり)さん広島県三原市 地域おこし協力隊
唐井 ゆかり (からい ゆかり)さん

【活動の概要】

三原市の地域おこし協力隊として、大和町に居住し、農事組合法人での農業と地域における各種イベントの企画・運営をサポートしながら、地域と行政の橋渡し役をにないつつ、地域の活力の掘り起しに取り組む。

【青年海外協力隊での活動】

ガーナでの活動の様子

小学生高学年の時にマザー・テレサやガンジー、キング牧師などの伝記を読み、見返りを求めない活動の重要性を感じ、将来、社会貢献や国際貢献に係わる活動をしたいとの思いを抱いた。その後、高校生時代にその思いは、海外での国際貢献活動に携わりたいとの具体的なものとなり、高校卒業を期に、海外留学に向けた専門学校に進んだ。進学後の2年次からはアメリカに留学し、国際学や社会学を学びつつ、長期休暇を利用して中米でのボランティア活動に参加するなど、子どものころの夢を実現するためのステップを登っていった。
米国留学から帰国し、国際協力関係のNGO・NPOへの就職を目指してセミナー等に参加している中で、青年海外協力隊の募集を目にし、力試しも兼ねて、留学時代に学んだエイズ対策の知識を活かし、アフリカ地域での活動を希望して応募し、採用された。
任地は希望通り、アフリカ地域のガーナ共和国で、現地の民間NGOに派遣された。現地では具体的な役割が与えられない情況が続き、当初は地域におけるエイズ対策の取り組みに係われない状況が続いたが、インターンとしてNGOを訪れる学生等の引率を任されてからは、そのインターン生と議論しながら、その時点でできる取り組みとして現地の学校などでのエイズ予防などの講座を開くなどの取り組みを行った。また、前任者が現地の特産であるビーズアクセサリーの製作指導・販売などを行っていたものを引き継ぐことで、NGOや現地住民の収入の確保などにも役立つ取り組みを行うことができ、一定の達成感が得られた。

【地域での活動を始めた経緯】

ガーナ共和国に派遣されていた期間に、日本では東日本大震災が起こった。その際、現地の人から日本について尋ねられる機会が増えたが、その質問に対し、うまく答えられず、日本について自分がよく知らないことに気づかされた。また、その時期、現地での活動への限界も感じながら、地域の課題解決は現地の人がやることにより、力が出てくるのでは感じたことから、自分自身も一旦帰国し、日本人として日本で活動すべきではないかと考え、帰国して日本で活動することを選択した。
帰国後、新たな活動の場所を求めて様々な資料に当たっているときに地域おこし協力隊の募集が各地で行われていることを知った。ただし、その時点では、自分自身が活動すべき地域がどこか決めかねていた。そんな中で、地元の広島県三原市が地域おこし協力隊を募集していることを知り、自分の中で納得できる活動の場だと感じ、今やっておかなければ次のチャンスはないかも、との思いから応募したところ、見事採用された。

【現在の取り組みの特徴と効果】

三原市大和町における地域おこし協力隊としての活動状況

現在の地域おこし協力隊としての活動は、三原市の北西部にある大和町において、農事組合法人での農業従事と住民自治組織が行うイベント,まちづくり活動の運営・企画などである。
地域おこし協力隊の委嘱を受けてからは、大和町での活動の拠点である農事組合法人むくなしの所在地区で空き家を借りて定住しながら、農作業が活動の中心であったが、農事組合法人のメンバーと打ち解けるにつれ、その人の紹介などにより、地域の人からの認知度も上がり、様々な活動への協力を求められるようになるなど、地域活性化の活動に関わる機会も増加している。地域おこし協力隊は、地域の受け入れ体制が重要となるが、大和町では農事組合法人の組合員などのフォローもあり、スムーズに地域になじむことができている。また、昨年度より、大和支所に地元出身者の集落支援員が配置されたことにより、その人を通じたより広い範囲での人的ネットワークの形成が進んでいる。
現在では、三原市内に新たにもう一名地域おこし協力隊の隊員が増えたこともあり、活動のノウハウを共有しながら、より円滑な活動のために協力関係を形成している。さらに、広島県内では青年海外協力隊OVの地域おこし協力隊員が増えてきており、さらにネットワークの拡大を図っていくことを目指している。
地域おこし協力隊としての活動の成果は、地域と行政の橋渡し役となり、地域のニーズを行政に伝え、行政において支援できる内容を地域に伝えながら、地域での活動の実現可能性を高める役割を担っている点にある。また、地域における活動を大きく変えるのではなく、住民自らが少しでも改善できるように支援し、自ら活動してもらえるきっかけを与えるような取り組みも行っている。こうした取り組みは青年海外協力隊で現地の人たちに提案し、少しでも地域の改善を引き出してきた経験が活かされている。このように、地域における課題解決は日本でも海外でも共通する部分が多いことから、青年海外協力隊OVは地域おこし協力隊との親和性は高いと感じている。

【地域と世界を結ぶ視点】

唐井さんは、青年海外協力隊で活動している間に、海外の人たちが、日本の強さ、先進性などを高く評価し、日本のような活動を行いたいとの思いを持っていることを体感した。一方で日本人がどのような貢献活動を現地で行っても、なかなか現地の人から評価されないという状況があった。こうした状況は、日本で地域課題解決に関する先進的な取り組みを行えば、海外から注目してもらえ、それが海外への貢献につながる場合もあるということを経験した。その意味で、日本で活動することでも、国際貢献につながるということに思い至った。そして、大都市圏で活動するよりも地方で活動するほうが、海外の地域状況と類似性が高く、注目してもらえる環境がある。こうした状況を活かし、地方での活動を国内外に発信することも重要だと考えている。

【帰国後の地方定住のススメ】

青年海外協力隊は、全く知らない人の中で活動する経験ができる。また、海外から来た人間としてある種のフィルターが掛かり、一定の距離感を持ちながらその地域の人たちと関わることができる。これは、日本に帰って地域で活動する場合にも役立つものである。青年海外協力隊を経験した後に地域おこし協力隊として活動する場合は、その経験を活かし、地域の人と深くかかわる部分と、一歩引いて自分のスタンスを守りながら支援に徹する部分などをうまく使い分けることができるようになる。
青年海外協力隊は、個々の専門性で貢献するだけでなく、日本人として伝えられること(文化や歴史背景など)を現地の人々に伝えることでも国際貢献を果たすことができる。そして帰国後、日本でその経験を還元することも重要とされている。海外で得た経験は日本国内に住み続けている人とは異なった視点を得られることもあるため、その特殊性を活かして地域に関わっていくことを多くのOVに期待したい。