岡山を拠点にラオスの丘陵地帯の農業振興をサポート

「中国地方において地方創生で活躍するJICAボランティア調査報告書より」NO.2 ■調査実施:公益社団法人 中国地方総合研究センター

【写真】小林 勉 さん岡山県岡山市 農業、海外農村支援
小林 勉 さん

【活動の概要】

NGOのアジア農村協力ネットワーク岡山を設立し、ラオスの丘陵地帯で果樹栽培および販路確保等の指導を行い、農村地域の経済的な自立と自然環境保全の両立を目指す。

【青年海外協力隊での活動】

【画像】中学生のときに読んだ「飢えで滅んだ国 ビアフラ」という本に影響を受け、実家が農業を営んでいたこともあり、「こんな国があるんだったら自分たちでも何かできることはあるんじゃないか」との思いを抱いた。大学は水産学部に進み卒業後、せっかく勉強したことを、少しは生かした活動をしたいとの思いや、若いうちに色々な国を見ておきたいとの考えもあり、青年海外協力隊に応募した。
派遣国はバングラデシュ(1987年度3次隊)で、水産局の淡水魚養殖に使う種苗生産の養殖場に配属された。そこで、親魚から卵をとり、孵化させて稚魚を生産し、それを周辺の住民に販売して、住民の蛋白源である淡水魚をもっと広めようというプロジェクトを担った。しかし、歴史的な規模の洪水の発生により、地域そのものが流出してしまうような甚大な被害に遭遇し、養殖に関する取り組みができなくなるなどの困難に直面しながら、バングラデシュの自然の河川における基礎生産量を調査するなどの取り組みを行った。
小林さんにとって青年海外協力隊で得られた経験で一番大きな収穫は、常識というのは世界各国、経験や学習、宗教などでいくらでも変化するということだった。帰国後は、常識という枠にとらわれない考え方ができるようになったと考えている。

【地域での活動を始めた経緯】

帰国後は、農業に従事しながら、ネパールやインドシナ半島での海外支援の活動を継続していた。その活動のメンバーの中に青年海外協力隊でラオスに赴任し森林経営に取り組んでいた人がおり、継続的な活動への協力を求められたことから、NGOのアジア農村協力ネットワーク岡山を設立し、ラオス北部ルアンナムター県で果樹の植栽などに取り組んでいる。丘陵地帯のラオスは、小林さんが青年海外協力隊として派遣された低湿な地域のバングラデシュとは、異なる気候風土であったことも面白みを感じた。
なお、アジア農村協力ネットワーク岡山の開始時期には、香川大学を退官された先生が参加され、インドシナ半島付近での発酵食品への興味が重なったこともあり、意気投合し、海外での調査方法等を学ぶ機会があり、活動がより充実することとなった。

【現在の取り組みの特徴と効果】

ラオスでの活動の様子

アジア農村協力ネットワーク岡山のラオス・ルアンナムター県の丘陵地域での活動は、15年前からスタートし、6村を対象に活動を行っている。ここでは、現地の人に果樹の栽培技術を理解してもらうとともに、活動を継続してもらうため、現地の農林局職員に技術移転を行い、NGOが引き上げた後でも、同じように発展的に農業支援ができるようにすることである。
農家への技術移転は、キーパーソンとなる篤農家を毎年3名選び、彼らに集中的に支援を行っていくことで、このキーパーソンが指導者となり、村に広くその農業手法が普及していくこと、効率よく販売し収益を上げる青果出荷、加工品の製造販売も取り組んでいけることが最終的な目標となっている。
小林さんは、ルアンナムターを含むラオス北部のすばらしい自然環境を維持していくため、村民自身が自然を誇りとし、環境保全型の農業を考え拡大していくとこを目指している。そして、収益を上げることで出稼ぎをなくし、伝統的な生活を維持し、無秩序な山焼きをしないようにすることで、地域を盛り上げて欲しいと考えている。
現在では、活動当初の15年前に植えた果樹で収穫が始まっており、今後、次々に収穫・販売が始まる予定であり、その成果を見てほかの村民にも広く普及することを強く希望している。
なお、活動を開始した当初は、村へのアクセスも困難だったが、現在は道路もよくなり、収穫物の販売も容易になりつつある。一部に、農業よりも市街地で働くことを選んだ村民もいるが、ビレッジステイやエコツーリズムなど観光産業にかかわる村民も出てきており、人の往来が多くなったことで、旬の果物を観光客に販売するチャンスも増えるなどの農業の可能性を広めることにもつながりビジネスチャンスをもたらしてくれることも期待している。
また、村で果樹苗も育成しており、果実とともに育成した果樹苗も販売できるようになれば、果樹農業の可能性はどんどん広がることと考えている。

【地域と世界を結ぶ視点】

果樹関係の仕事は、活動が長期にわたる。種をまいて、翌年植え替え、その次の年には接木、その翌年、果樹苗として利用できるようになる。植えてから3年目に少し果実を成らせて品種を確認し、その翌年から、少しづつ収穫が始まる。文章で書けば2,3行のことだが、種まきから実がなるまで5,6年を要す。こういう息の長い活動はじっくり人づくりからはじめなければならない。もともとはメンバーの活動場所ではあったが、関係作りからはじめることは面白いと感じる。こういう活動は、地域が世界と結びつくためのとても大切な一歩になるものだと思う。

【帰国後の地方定住のススメ】

協力隊に参加しても、地方都市では、なかなかその経験を生かすことは難しいと思います。多くの帰国隊員が都市部に生活拠点を求めることは致し方ないかと思います。しかし経験を生かすのは、帰国後の自分の生活に活かせばよい。地方での生活では、人間関係の構築などは間違いなく協力隊の経験が役立つでしょうし、疲弊してきている地方の農村などで、村おこし事業などにも参画していくことも考えられる。それで生計を立てていくことは難しいかもしれないが、協力隊の経験を地域の活動に生かすことは、やり甲斐のあることだと思います。
そうはいっても、なかなか生活できるだけの収入に結びつけることは難しいと思うので、地方の行政機関などが、帰国隊員をうまく活用してくれるようなシステムの構築を考えていただくことも必要かと思う。