地方都市で外国人の生活支援の展開とフェアトレードで地域と海外をつなぐ

「中国地方において地方創生で活躍するJICAボランティア調査報告書より」NO.3  ■調査実施:公益社団法人 中国地方総合研究センター

【写真】松浦 和子 さん山口県防府市 多文化共生、市民活動支援、フェアトレード
松浦 和子 さん

【活動の概要】

防府市民活動支援センターのスタッフとして市民活動やボランティアの支援を行いながら、多文化共生の地域づくりを目指す「ほうふグローバルネット」で在住外国人支援を展開。2014年にはフェアトレード雑貨&カフェ「Souq」をオープンし、海外(外国人)と地域をつなぐ窓口的な役割を担う。

【青年海外協力隊での活動】

ヨルダンでの活動の様子

看護系の高校に進学し、短大で看護師、専門学校で保健師の資格を取得し、地元である山口県防府市役所に保健師として就職した。海外への思いは、学生時代にテレビなどで流れる海外の難民キャンプ等の報道に触れたのがきっかけで、いつかはそういった場で自分も活動したいとの思いを抱いていた。
就職後は、保健師としての仕事を通じて経験を積みながらも、海外での活動の夢を実現するため、青年海外協力隊に参加した。なお、当時は青年海外協力隊への在職参加制度がなかったことから、市役所を退職しての参加となった。
青年海外協力隊での派遣先はヨルダンの地方都市で、現地の保健センターへ配属され、主には妊産婦、乳幼児を持つ母親への保健指導を行った。
現地での活動は、派遣前に描いていたような内容とはならない中で、現地の人など、様々な人の支援があって生活、活動が成り立っていくことを実感し、その重要性を認識することとなった。

【地域での活動を始めた経緯】

帰国後は、青年海外協力隊での活動の振り返りや将来を考えつつOV会などに参加する中で、山口県協力隊を育てる会のメンバーである防府市民活動支援センターの職員の方からスタッフ募集の情報を得て、応募し、同組織スタッフとして採用され、新たな分野への挑戦が始まった。
なお、山口県では、2か月に一回、OVの懇親会が開かれており、参加者は70代から帰国直後の20代の人まで幅広で、様々な分野の人たちが共通の経験を語り合うことで、ネットワークが広がり、それぞれの活動を直接的・間接的に支援する関係が構築されている。こうした地域のネットワークは、帰国後の協力隊OVの一助となっているものと考えられる。

【現在の取り組みの特徴と効果】

↑ほうふグローバルネットの交流イベント(そば打ち)
↓フェアトレード雑貨&カフェ「Souq(スーク)」の店舗

帰国後、地域をみると、技能実習生を中心に市内で生活する外国人が増えている中で、外国人の方々が地域とつながる場面の少なさに気づき、在住外国人が地域の中でつながりをもって安心して暮らせる多文化共生の地域づくりを目指す、「ほうふグローバルネット」を2012年8月に設立した。
ここでは、在住外国人が地域で抱えている課題の把握や解決に向けた取り組み、日本人との交流の場の提供国際的な課題についての勉強会などを行っている。
また、フェアトレードネットワークにも参加し、ほうふグローバルネットの活動資金確保も兼ねて各種イベントでフェアトレード商品の物販を行っていた。これらの取り組みを連動させるため、いつでもフェアトレード商品が購入できる場でかつ交流の場にもなる施設として、2014年11月にフェアトレード雑貨&カフェ「Souq(スーク)」をJR防府駅前にオープンした。
今後、在住外国人の課題解決など実施していく上では、より専門的な対応(就業関係、DV等家庭・交友関係への対応など)も必要になってくることが予想され、専門の人材を確保していくためには、その人を雇うための資金確保と活動や相談対応のできる場が必要になってくるとの考えから、この店舗の運営が始められた。現状では収益を十分に上げられている状況ではないが、フェアトレードに関心のある人や在住外国人への認知度も徐々に上がっていることから、重要な役割を担う事業になっていくことが期待される。

【地域と世界を結ぶ視点】

海外生活の中で、多くの人の支援があってはじめて活動できることを実感したことで、帰国後、地域で多文化共生の必要性を改めて認識し、自ら活動することで、地方都市でも安心して外国人が生活できる地域づくりを進めている。
国際交流や国際協力・国際貢献の活動は、大都市中心に動いている状況はあるものの、地方都市においても、在住外国人は増加傾向にあり、その人たちとの交流や支援を通して、世界とつながることが可能となっている。特に、地方圏では、在住外国人支援がまだまだ進んでいないのが現状であり、より、多文化共生を支援する人材が求められている。

【帰国後の地方定住のススメ】

帰国後は視野が広がり、日本や地方都市に住むことやそこでの仕事につまらなさを感じたり、やりたい仕事がみつからないというのが、地方に人が定着しない大きな理由になっていると思います。
ただ、いろいろな活動を始めてから気づいたことですが、地方にも意外と多くの多様な活動をされている方がおられ、仕事と地域活動という分け方ではない、生き方として自分が住む地域のためや、困難を抱えている方のために活動されています。そして、世界とのつながりは、どんな地方都市でも身近にあって当たり前となってきており、自分の見方・考え方を変えれば、どこでもできることはあると思います。やりたい仕事を探すよりも、できることを探す方が、いろいろな可能性が広がるのではないでしょうか。
私自身ができることはたかが知れていて、多くの人に支えられなければ、継続的な活動はできません。少しずつですが今の活動が広がっていっているのは、支えてくださる方のお陰です。この活動はこれからも継続して取り組んでいく必要があることだと思っており、共感してくださる方の輪を広げながら、がんばっていきたいと思っています。