地方の自然を活かした農業と特産品開発

「中国地方において地方創生で活躍するJICAボランティア調査報告書より」NO.7  ■調査実施:公益社団法人 中国地方総合研究センター

【写真】塩飽 康利 さん岡山県井原市 農業
塩飽 康利 さん

【活動の概要】

耕作放棄地を借り受けて農園を運営。新たに開発するのではなく、自然を活かし、昔は当たり前に使われていた素材やそこにあるものを使って進める農業を実践している。また、まちづくりの中で、地域の協力者とともにアイデアを出しながら、実ったものを使って特産品開発も行っている。

【青年海外協力隊での活動】

エチオピアでの活動の様子

小学校の授業で日本の技術者が海外で運河の建設に協力する話を聞き、大きくなったら海外で仕事をしたいと思った。建設会社就職後協力隊のことをテレビで見て自分の夢を思い出し、6年間働いた後、夢をかなえるため3回応募した末に協力隊員となった。
最初は重機械を使う建設機械の分野で応募したがかなわなかった。その後OVから建設機械では操縦だけでなく整備も伴うため、免許を持っていないなら要望が多い農業関係で応募してはとアドバイスされ、実家が農家だったこともあり、希望に近い分野の農業土木で応募した。
1986年〜1988年、エチオピアのアジスアベバへ派遣され、農業省利水開発局に赴任し、地方へ出張して活動。池・水路・灌漑設備の建設に関する農業土木の指導に携わった。カウンターパートと一緒に電気・ガス・水道のない地域に出向き、農地を作るところから関わった。当初出向いた地では長老に畑がどこにあるかを尋ねると、「種を蒔いて生えてくるところが畑だ」と言われることもあった。そんな土地で測量をして水源から水を引くルートを計画した。飢餓が続いていたほか、言葉が伝わらないので絵で伝えたり、計画の概念がなく何年で仕上げるかを尋ねても「アフリカには時間は一杯ある」と言われたりと、様々な困難に遭遇した。
自分の指導がうまく伝わったかどうか自信はないが、土木機械がないところでは、簡単な道具を使い人海戦術で進めなければならないこともあり、機械を使う技術を伝えるよりも、逆にあるものを利用してできる方法を教わった。

【地域での活動を始めた経緯】

帰国後井原市の実家に戻ったが、田舎にいても海外に行けるチャンスがあると思い、隣の福山市にある半導体関連の会社に技術担当者として入社した。
その一方で家にある田畑を活かそうと思い、兼業で農園を始めた。地域内では高齢化が進んだため後継者がいなくなり、耕作放棄地が増えてきていたので、そうした農家に頼んで農地を借りて規模を拡大しながら、米、野菜、栗、葡萄など20種類以上を栽培した。

【現在の取り組みの特徴と効果】

農園での活動の様子

学校での講演の様子

エチオピアでも昔の日本でも、収穫後はよいものを残し、そこから種を採って次の年にも植えるようにしていたが、今の日本では操作された1代で終わる種を買ってきて植えて収穫するだけになっている。しかし農園ではエチオピアでの体験をもとに、開発するのでなく自然を活かし、金をかけずにあるものを使って進める農業を実践している。そこでは、ヨモギやスギナなど昔使っていたが、今では雑草扱いされているものの利用も試みている。
まちづくりの一環として井原市の交付金を使って、地元の人とともに農園の収穫物をもとにした特産品づくり事業、「いきいき菜園事業」に取り組むほか、自らもオリジナル産品づくりを行い、農園内やウェブサイトを通じて販売している。
また農園には就農体験のための高校生のインターンシップを受け入れ、働く場としての農業に対する関心を若い人たちに呼び起こしている。
さらに岡山県は2004年に都道府県で国内初の国際貢献推進条例を制定し、国内外の救助活動に協力する「ももたろう国際救助隊」を組織したが、そこにもメンバーとして加わり、東日本大震災の被災地支援などに参加している。

【地域と世界を結ぶ視点】

日本にいただけでは会えないような人にも会えるのが協力隊。人との出会いは奇跡であるとも言えるし、そうした人たちと一緒に生活ができるので、その経験が後の人生に大きく影響する。そこではコミュニケーションが最も重要であり、どこに行っても無言でいてはだれも自分の存在を認識してくれないので、自分から笑顔であいさつすることが基本となる。
また自分のことは自分でしないと解決できないし、困難を経験することも必要であり、それを乗り越えるために考えることや人と交渉することが、問題解決力を身につけることにもつながる。そしてそれはその後の生きる糧となる。
さらに国内では飢餓を経験することがないので、そうした経験がある協力隊経験者は、自然災害が起きても対処できる。

【帰国後の地方定住のススメ】

地方では好きなことができる。人が少なくなっているので、迎えてもらえる環境があり、行政も農業の担い手を募集している。まちによっては、移住すれば農業をするための土地を農家が貸してくれるところもある。
農村地域で暮らすメリットは、パソコンに使われるような生活でなく、四季の流れで季節を感じる生活ができること。そうした環境がある地方では、自然を活かした農業ができるとともに、都会よりも様々なつながりを周りの人々と築くことができる。特に岡山県は台風をはじめとして自然災害が少ないので、農業するには向いた地域であるし、他地域の人も移住しやすい。
今は海外で見聞きしてきたことや、取り入れられるやり方を活かしている。それができるのも協力隊での経験によるところが大きいので、今後協力隊に参加しようとする人には、いろいろな経験をしてほしいし、それを帰国後にも活かしてほしい。