【教師海外研修 現地研修報告】サバイディー!頭で学び、心で感じたラオス10日間

2015年9月2日

【画像】2015年8月9日から8月19日までの10日間、中国4県から8名の先生方がラオスを訪問し、現地で国際協力に携わっている人たちの活動現場などを視察しました。

現地研修日程

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ラオスってどんなところ?

ラオスは東南アジアに位置し、周りをベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、中国に囲まれた日本の本州ほどの広さをもつ内陸国です。人口は612万人(2009年)で約1割は首都ビエンチャンに集中しています。最も人口の多いラオ族の他、モン族、ヤオ族、アカ族など68もの民族が暮らす、多様性に富んだ国です。公用語はラオス語ですが、少数民族はそれぞれの母語も使って生活しています。優しく穏やかな国民性で、訪れる外国人を暖かく迎えてくれる一方、フランス統治やインドシナの戦火に巻き込まれた歴史を経て、医療や教育などの諸問題をまだまだ多く抱えている側面もあります。

医療現場

首都ビエンチャンから車で約2時間、パークグム郡の病院を訪問しました。ここには4代目となる青年海外協力隊員が活動をしています。副院長やカウンターパート(青年海外協力隊員の活動上のパートナー)も同席する中、郡の医療事情や今後展開していきたい活動、またラオスという異文化の中で感じたこと、活動をすすめる上で大切にしていることなど詳しくご説明頂きました。病院内も見学しましたが、同行したラオス人の通訳いわく「首都の国立病院よりも衛生面がしっかりしている」とのこと。隊員の地道な活動の成果があらわれた場所でした。最後には隊員へのインタビューも行いました。海外で活躍するJICAボランティアの生の声とはじける笑顔をおさめたこの映像は、日本の子どもたちへの貴重な教材となる予定です。 

子どもたちとの交流

先生方が心待ちにしていたラオスの子どもたちとの交流は、研修2日目、首都から3時間程離れたボリカムサイ県にある「子ども文化センター」で行われました。
ここは土日や長期休暇中など、学校の時間外に子どもたちが過ごす日本の児童館のような施設で、青年海外協力隊員も活動を行っています。夏休み真っ最中のこの日は5歳から18歳まで約50名の子どもたちが集まってくれました。子どもたちからの大人顔負けの伝統舞踊披露のあと、一緒に昼食をいただきました。午後は先生方が作成した日本に関するクイズや「日本探しゲーム」で大盛り上がり。授業実践で活用させてもらうべく、子どもたちへ「将来の夢は?」「一番好きな食事は?」「ラオスの好きなところは?」といったアンケートも行いました。子どもたちの無邪気な笑顔とともに、彼らの多くがスマートフォンを手にする光景も目にし、豊かさ、地域格差などさまざまなテーマに想いをはせた1日となりました。

教育の現場で

【画像】今回の研修で訪れた南部地域は、国内の他の地域と比べて格差が大きく、教育や医療など、より深刻な課題が存在しています。
青年海外協力隊員が派遣されているチャンパーサック教員養成短大校では、教員養成に携わる現地の先生方にお会いし、「教授法といった専門知識を教える以前に、基礎学力の乏しい学生が多く、教員養成校でもそこから始めなければいけない」というような大きな問題を伺うことができました。 その後訪問した同地域の教育局には、ラオスの初等教育改善プロジェクト(『CIED2』)を実施中の専門家がおられ、初等教育の現状と課題と解説して下さいました。中でも、ラオスの子どもの留年・中退率の原因と改善への取組みについて、ワークショップ形式で参加の先生方自身が考えることができた時間はとても有意義で、「ラオスの教育制度を知ることで、日本の教職員がとても恵まれた環境で教壇に立てていることを認識した」「これまで当たり前に感じていた地域との連携や教員研修、授業研究などの重要性を心から理解することができた」と学びの多い時間となったようです。

今も残るベトナム戦争の爪痕

日本ではあまり知られていませんが、ラオス国内にはベトナム戦争時に投下された爆弾のうち30%近くが不発弾として残っており、今も人々の生活を脅かしています。研修中には、不発弾や地雷の除去作業や、村の人々、特に子どもが被害にあわないための啓蒙活動をJICAをはじめとする外国の支援を受けて行っているUXO-LAOも訪問しました。事務所では実際の被害状況を伺い、ポスターやノートなど子どもたちのための教育教材も見せてもらいました。
特に大きなショックを受けたのが、その後訪れた実際の不発弾処理現場でしたその日の午前中だけで7つの不発弾が見つかり、それを爆破処理する瞬間にも立ち会いました。遠くからでも体に衝撃が走る振動と轟音、灰色の不気味な煙。じゃがいも1つ程度の小さな鉄のかたまりが、周辺に暮らす人々の笑顔を吹き飛ばす威力を持ち、その処理活動はこの先50年以上もかかるといわれています。
危険な作業にかかわっているにもかかわらず、明るく対応してくれたラオス人スタッフの笑顔がとても心に痛く、彼らと周辺住民の安全が守られることを心から祈った1日でした。

ホームステイ体験!

今回の研修ではホームステイも体験しました。ラオ族とタオイ族2つの民族から成り、99世帯が暮らすノンブン村の3家庭に泊まらせてもらいました。
この村に住むタオイ族の伝統である木彫り工芸は有名で、首都のホテルやレストランなどから注文が入るほど素敵な作品ばかり。私たちも少しだけ木彫り体験をしました。夜はそれぞれの家で、蚊帳の中で就寝。日の入りとともに寝る支度をし、にわとりの声で目覚める自然とともに生きるノンブン村の人々の暮らし。首都ビエンチャンとは大きく違う、ラオスの別の顔を見ることができました。
ノンブン村出発の際には、ラオスの儀式「バーシ」を体験しました。「バーシ」は子どもの誕生や結婚、歓迎など様々な人生の節目に行われる儀式です。今回は村の長老が私たちの旅立ちと帰国後の幸福を祈って下さり、健康や祝福を祈る言葉を唱えながら手首に木綿の糸を結んでくれました。木綿の糸は魂を強化する意味があるそうです。たくさんの糸を手首に巻いてもらい、思い出深い体験となりました。

ラオスの障害者支援を知る

【画像】ラオスで活動するNGOも訪問しました。NPO法人アジアの障害者活動を支援する会(ADDP)は、ラオスの障害者の様々な自立支援活動に取り組んでおり、今回は首都にあるクッキー製造と販売を行う作業所にお邪魔しました。
事業概要を説明してくださったプロジェクトマネージャーの斎藤さんは、青年海外協力隊員としてシリアでの活動経験をお持ちです。ラオスでの障害者を取り巻く現状や団体の活動が軌道にのるまでの経緯と苦労、これからの展望などを分かりやすくお話くださいました。「『障害を持った人が作っているから買ってあげる』ではなく、商品のクオリティを高めて持続的なビジネスとして成立することが重要」との斎藤さんの言葉は、それぞれの所属校で様々な社会貢献活動を指導する先生方にとって、とても考えさせられるものでした。後半ではクッキー作りの作業場を見学し、利用者の方へのインタビューも行いました。「将来の夢は?」という問いに対し、1人の女性は「今の仕事の経験を活かして、いつかカフェを経営したい」と笑顔で話してくれました。

ゆったりとした時間の流れと人々のあたたかな笑顔、素朴ながら美味しい食事とどこか懐かしい農村風景。ラオスの素晴らしさを知った一方で、この国が直面する様々な問題も学びました。また、ラオスという国から日本の課題も再認識することができました。現地の人が必要とする支援とはなにか、ラオスらしい開発とはなにか、豊かさとは、幸せとは、発展とは…。楽しい嬉しい思い出だけではなく、難しい問題に頭を悩ませ、正解がわからないテーマに心がモヤモヤとし、いろいろな感情を抱えたまま先生方は帰国しました。
今後はそれぞれの現場で、研修中に抱いたたくさんの想いを日本の児童生徒に還元していただきます。8名の先生方の今後の授業実践にも乞うご期待!

(同行者:JICA中国 市民参加協力調整員 新川 美佐絵)