【教師海外研修 現地研修報告】五感で学んだラオスの10日間

2016年9月12日

2016年8月8日から8月18日までの10日間、広島と山口の2県から8名の教員がラオスを訪問し、国際協力の現場を訪問しました。

現地研修日程

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2016/8/8(月)【ビエンチャン】
●昼 /関西国際空港を出発、乗継地ベトナム・ハノイへ
●夕刻/ラオスの首都ビエンチャン到着
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2016/8/9(火)【ビエンチャン】
●午前/JICAラオス事務所ブリーフィング
・ラオスの概況、JICAの協力内容  ・ラオスの教育問題について
●午後/UXO-LAO事務所訪問
・ラオスの不発弾の現状について  ・他国や国際機関の協力
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2016/8/10(水)【サバナケット】
●午前/ビエンチャンから空路サバナケットへ
●午後/<青年海外協力隊活動視察>サバナケット県教員養成短大校
・協力隊員の活動紹介、ラオスの教育課題について  ・教員養成指導者との意見交換
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2016/8/11(木)【パクセー】
●朝 /市場見学
●午前/<青年海外協力隊活動視察>サバナケット子ども文化センター
・協力隊員の活動紹介  ・子ども達との文化交流(日本の遊び体験)
●午後/<日系企業訪問>KP BEAU LAO CO.,LTD.
・サバナケット経済特区について、経済から見たラオス  ・工場見学
●夕刻/サバナケットから陸路にてパクセーへ移動(4時間)
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2016/8/12(金)【パクセー】
●午前/UXO-LAO チャンパ—サック支部活動視察
・不発弾回避教育   ・不発弾処理現場
●午後/<国際NGO訪問>Village Focus International
・ラオスの人身取引問題について  ・シェルター視察
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2016/8/13(土) 【ドンコー村】
●午前/市場にて教材収集
●午後/<ホームステイ>
・村の散策  ・小学校訪問
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2016/8/14(日)【パクセー】
●朝 /ホームステイ終了、出発
●午前/<世界遺産>ワットプー遺跡
●午後/パクセーのホテルに戻り、中間振り返りミーティング
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2016/8/15(月)【ビエンチャン】
●午前/<青年海外協力隊活動視察>チャンパ—サック県病院
・協力隊員の活動紹介(母子保健)  ・病院見学
●午後/パクセーから空路にてビエンチャンへ
●夕刻/ビエンチャン着、市内視察
●夜 /青年海外協力隊員との懇親会
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2016/8/16(火)【ビエンチャン】
●午前/教材収集・市内視察(パトゥーサイ・タートルアン)
●午後/<草の根技術協力視察>アジアの障害者活動を支援する会(ADDP)
・障害者就労支援施設見学(クッキー工場)
・障害者スポーツ振興プロジェクト視察、ゴールボール体験
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2016/8/17(水)
●午前/研修振り返りミーティング  
●午後/JICAラオス事務所にて研修最終報告
●夜 /ビエンチャンから空路ベトナム・ハノイ経由、日本へ
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2016/8/18(木)
●関西空港到着後、解散  

ラオスってどんなところ?

ラオスは東南アジアに位置し、周りをベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、中国に囲まれた日本の本州ほどの広さをもつ内陸国です。人口は649万人(2015年)で約1割は首都ビエンチャンに集中しています。最も人口の多いラオ族の他、モン族、ヤオ族、アカ族など68もの民族が暮らす、多様性に富んだ国です。公用語はラオス語ですが、少数民族はそれぞれの母語も使って生活しています。優しく穏やかな国民性で、訪れる外国人を温かく迎えてくれる一方、フランス統治やインドシナの戦火に巻き込まれた歴史を経て、医療や教育などの諸問題をまだまだ多く抱えている側面もあります。

日本の先生が見たラオスの教育

教員養成短大での意見交換

今回の研修で訪れた南部地域は、ラオス国内でも他の地域と比べて格差が大きく、教育や医療など、より深刻な課題が存在しています。
青年海外協力隊員が派遣されているサバナケット教員養成短大校視察では、副学長から学校の説明があった後、参加教員から「教員になった後のフォローアップ研修はあるのか」「障害を持つ子どもへの教育は?」「道徳のような教科は存在するのか」など、たくさんの質問が出ました。教員養成に携わる現地の先生方も集まり、「教員を目指す学生の基礎学力が低く、教授法以前に基本的な算数などから始めなければいけない」といった大きな問題を伺うことができました。その後は現地の先生方から日本の先生方へ、日本の教員養成のシステムや一人の担任が受け持つ児童数など、とても具体的な質問が多数あがり、予定の時間をオーバーするほど白熱した意見交換がなされました。
ラオスと日本、国は違えど、教育にかける熱意と子どもへの愛情は、どちらの先生もとても強いものでした。

子どもたちとの交流

全員集合!

子どもへインタビューもしました

ラオスには日本の児童館のような「子ども文化センター(Children's culture center 通称CCC)」という施設が各地にあります。
私達はサバナケットにあるCCCを訪問し、集まってくれた20名弱の子どもたちと、日本の遊びや歌を通して交流を図りました。まずは、日本を紹介するクイズから。ある先生は「日本の国旗はどれでしょう?」「日本の文字はどれでしょう?」など、インターネットで調べたラオ語を使ったポスターを示してくれました。また、ある先生は「日本人がお正月に食べる『お雑煮』にはどんな食べ物が入っているでしょう?」と、お雑煮の写真を見せ、最後には本物の餅を子どもたちにプレゼントしていました。海外研修出発前の忙しい中で先生たちはいろいろな物を工夫して手作りし、持参してくれました。
日本の伝統的な遊び紹介では、知る人ぞ知る広島県廿日市発祥のけん玉で遊びました。廿日市の先生が見事な腕前を披露すると、負けじと子どもたちも練習し、見る見るうちに上達していました。その他、折り紙や「だるまさんが転んだ」などで盛り上がりました。

日本人が知らない、もう一つのベトナム戦争

小学校での回避教育の様子

不発弾処理現場

日本ではあまり知られていませんが、ラオス国内にはベトナム戦争時に投下された爆弾のうち30%近くが不発弾として残っています。それらは特に南部に多く、その存在は今も市民の生活を脅かしていますが、JICAをはじめとする他国や国際機関が支援するUXO-LAOという団体が、不発弾や地雷の除去作業、一般の人々(特に子ども)が被害にあわないための啓蒙活動などを行っています。
現地の小学校で行われていた不発弾・地雷の回避教育では、UXO-LAO職員が子どもにも分かりやすいよう、クイズや歌を交えて不発弾の危険性と見つけた時の対処方法などを教えていました。しかし、その様子は深刻な問題を扱っているとは思えないほど明るく、職員が話す冗談に子どもたちの笑いも絶えず、参加教員は国民性や「戦争と平和」といったテーマの扱い方の大きな違いに戸惑いを隠せない様子でした。
その後、不発弾処理現場に移動しました。最も多く発見される小型のクラスター爆弾は火薬をつけて爆破するのが最も効率的な処理方法で、その日も朝見つかった不発弾を爆破する瞬間に立ち会いました。250メートル離れた場所でさえ、心臓をわしづかみにされたような衝撃と震動、時間差でやってくる火薬の匂い。すぐ近くに学校や民家があり、ニワトリが走り回る牧歌的な村に今も響く50年前の戦争の名残り。戦争も平和もともすれば言葉や概念で捉えてしまいがちな私達が、一瞬でそれらを体感し、心を揺さぶられた時間でした。

ホームステイ体験!

村の小学校にて

出発のときの儀式

今回の研修ではホームステイも体験しました。メコン川の中州にある、住民主体の持続可能な観光開発を行うドンコー村に1泊しました。女性は機織りを行い、男性は目の前の川で魚をとる伝統的な暮らしがそこにはありました。観光客はここでゆっくり川を見ながら、お母さんが作った料理を味わうことができます。村には小学校があり、夏休みですが子どもたちが集まっていました。夜は虫と犬の鳴き声、たまにスコールの音が響くだけの自然と一体となった生活。夜はみんな蚊帳の中で眠りました。
翌朝は、村の人から私たちの旅立ちと仕事の成功、健康を祈る儀式をしてもらい、たくさんの思いやりがつまった紐を腕に付けて出発しました。
村にはあちこちにバナナやグァバ、ザクロといったフルーツがなり、豊かな田園が広がっていました。人間の暮らし、働くということ、豊かさと幸せ。そんなことを考えてしまうドンコー村でした。

ラオスの障害者支援を知る

クッキー工房

ゴールボール体験中!

「NPO法人 アジアの障害者活動を支援する会(ADDP)」は、ラオスの障がい者の様々な自立支援活動に取り組んでおり、JICA草の根技術協力事業のパートナー団体でもあります。ラオスでは「障がい」の定義さえ明確でなく、障がいを持つ人への教育や就労支援はもちろん、その実態把握さえ追いついていないのが現状です。そのような環境で奮闘するスタッフの方から活動概要を伺った後、就労支援活動のひとつであるクッキー工房を見せてもらいました。「同情ではなくクオリティでビジネスを確立する」という団体のポリシーの通り、デザインも味も高品質なクッキーが所狭しと並べられていました。その後、JICAの支援で建てられた障がい者スポーツ用の体育館に移動し、先生たちはゴールボールを体験しました。視覚障がい者が活躍できるこのスポーツに、先生達は真っ黒な水中眼鏡をつけて挑みましたが、「見えないだけで怖いのに、音を頼りにボールを追うことがすごく不安で難しかった」と、感想を述べていました。

ゆったりとした時間の流れと人々のあたたかな笑顔、素朴ながら美味しい食事とどこか懐かしい農村風景。ラオスの素晴らしさを知った一方で、この国が直面する様々な問題も学びました。また、ラオスという国から日本の課題も再認識することができました。現地の人が必要とする支援とはなにか、ラオスらしい開発とはなにか、豊かさとは、幸せとは、発展とは…。楽しい嬉しい思い出だけではなく、難しい問題に頭を悩ませ、正解がわからないテーマに心がモヤモヤとし、いろいろな感情を抱えたまま先生方は帰国しました。
今後はそれぞれの現場で、研修中に抱いたたくさんの想いを日本の児童・生徒に還元していただきます。8名の先生方の今後の授業実践にも乞うご期待!

(同行者:JICA中国 市民参加協力課 新川 美佐絵)