【教師海外研修 授業実践】盈進高等学校

2016年12月21日

ラオスの不発弾について、数学で理解する

上田 智子 先生

盈進高校で数学を担当する上田智子先生は、教師海外研修に応募したときからずっと「外国の言葉を読めなくとも、図や数式で問題を理解し、それを解くことで数学が『世界共通の言語』であることを感じてほしい」と、帰国後の授業実践を見据えていたそうです。そんな想いを込めて、12月16日(金)、上田先生はラオス研修の知見を活かした授業を、あえて数学の時間に実施しました。
最初に、「ラオス:日本=600,000〜900,000t:2,600t」という数字を提示し、これが何を表しているかを生徒に問いかけました。答えは「国内に残る不発弾の量」。ベトナム戦争時の負の遺産が今も人々の生活を脅かすラオス、そしてあまり知られていませんが、安心・安全な日本国内にもまだ多くの不発弾が残っています。これを数字で比較し、量こそ違うものの、実は共通の問題を抱えていること、ラオスの問題が他人事ではないことを示しました。また、数字を現実の問題としてリアルに感じることができるよう、ラオスの不発弾問題について分かりやすく描かれたマンガ*を紹介し、ラオス研修中に現地で撮影した不発弾の爆破シーンなども流しました。

「理系の私たち」が世界に貢献できること

不発弾処理にかかる年数を計算中

その後、生徒たちはワークシートにそって、ラオスに残る不発弾をすべて除去し終えるまでにかかる時間を計算していきました。ラオス政府が発表している不発弾汚染地域の面積、不発弾の数、これまで処理できた不発弾の量とそれにかかった時間と費用、この問題に対する各国の支援状況など、現実の様々なデータをもとに計算を進めながら、ラオスの課題を理解し、不発弾をめぐる未来について考えていきました。
また、上田先生が作成した「条件カード」をふまえて再計算する時間も設けられました。たとえば、カードには「支援国で自然災害が発生!ラオスへの援助金が半減される」「外国から最新の機材が贈られたため、不発弾処理のスピードが1.5倍になる」など、現実社会で発生しうる条件が書かれ、それらのカードを引いた生徒たちは条件を反映させながら計算を進めていきました。これらの計算作業を通じて、生徒たちは、不発弾の問題が世界共通の課題であることも理解していったようです。
国際教育や開発教育を学校現場で実践するとき、総合的な学習の時間や社会、国語といった文系の教科の中で扱われることが多いですが、上田先生はあえて理系コースの生徒に向けて、数学の授業でこのテーマを扱いました。「未来を予測し、課題を解決するために数学は有効な手段であることを知らせたい」というのが大きなねらいです。そして、授業の最後、上田先生は生徒へもう一つのねらいを伝えました。「皆さんの中にも国際協力に関心があり、その道に進みたい人がいるかもしれない。そのためには仕事に直結する国際分野の進路を選択しなきゃ!と考える人もいるかもしれないが、理系の知識と技術を身に付けている皆さんだからこそ、国際社会に貢献できることが、実はたくさんあるんですよ」。
昨今謳われる本当のグローバル人材とは、堪能な語学力と豊富な海外経験を有するだけでなく、自分の得意なことを地球のためにどう活かせるか、を考えられる人のことではないか、そう感じさせられた上田先生の授業でした。