【教師海外研修 現地研修報告】五感で学んだスリランカの10日間

2017年9月1日

2017年8月8日から8月17日までの10日間、広島・岡山・山口・鳥取の4県から7名の先生がスリランカを訪問し、国際協力の現場を視察しました。

現地研修日程

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2017/8/8(火)【コロンボ】
●昼 /関西国際空港を出発、乗継地の香港へ
●深夜/スリランカのコロンボ到着



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2017/8/9(水)【コロンボ→エッラ】
●午前/JICAスリランカ事務所ブリーフィング
 ・スリランカにおけるJICAの協力内容、スリランカの教育事情について
●午後/NIE(国立教育研究所)訪問
 ・参加教員による日本の教育に関するプレゼンテーション、質疑応答
●夕刻/バスにてエッラへ移動(約6時間)

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2017/8/10(木)【エッラ→ブッターラ→エッラ】
●午前/<NGO活動視察>
 ・NGOスランガニ基金が運営する障害児のための施設「リトルツリー」訪問 
 ・子どもとの交流
●午後/ホームビジット
 ・リトルツリー利用者のご家庭を訪問

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2017/8/11(金)【エッラ→キャンディ】
●朝 /バスにて古都キャンディへ移動(約4.5時間)
●午後/<青年海外協力隊活動視察>
 ・「環境教育」「コミュニティ開発」隊員の活動紹介  
 ・環境教育の授業の様子見学
 ・市営資源ゴミ売買センター視察

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【画像】2017/8/12(土)【キャンディ→ハバラナ】
●午前/教材収集、市内散策
●午後/バスにてハバラナへ移動(約3時間)






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【画像】2017/8/13(日) 【ハバラナ→シーギリア→バウニヤ】
●午前/<有償・無償資金協力、技術協力 現場視察>
 ・JICAの支援で建てられた「シーギリア資料館」見学 
 ・シーギリヤ見学
●午後/バスにてバウニヤへ移動(約3時間)
●夕刻/ホテル着後、中間ふりかえり



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2017/8/14(月)【バウニヤ→キリノッチ→アヌラーダプラ】
●朝 /バスにて北部へ移動(バスにて約2時間)
●午前/<草の根技術協力・NGO活動視察>
 ・NGOパルシック 活動視察(サリーリサイクル事業) 
 ・昼食作り体験
●午後/アヌラーダプラへ移動(約3時間)

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【画像】2017/8/15(火)【アヌラーダプラ→クルネーガラ→コロンボ】
●午前/<青年海外協力隊活動視察>クルネーガラ診療所
・「看護師」隊員の活動紹介
・妊産婦検診の様子を視察
●昼 /バスにてコロンボへ移動(バスにて約3時間)
●午後/<中小企業連携>「すらら塾」(株式会社すららネット運営) 
 ・「女性銀行」に関するブリーフィング
 ・「すらら塾」見学
●夜 /青年海外協力隊員との懇親会

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【画像】2017/8/16(水)【コロンボ→機内泊】
●午前/研修振り返りミーティング  
●午後/JICAスリランカ事務所にて研修最終報告
●夕刻/コロンボ市内資料収集
●深夜/コロンボから香港経由、日本へ




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2017/8/17(木)
●関西空港到着後、解散  

スリランカってどんなところ?

スリランカは南アジアに位置する島国。スリジャヤワルダナプラコッテという長い名前の首都が有名です。人口は約2027万人で、最も人口の多いシンハラ人やタミル人など、多様な民族で構成されています。シンハラ人はシンハラ語、タミル人はタミル語を使っていますが、英語も広く通じます。国民の7割が仏教徒ですが、ヒンドゥー教やイスラム教、キリスト教を信じる人も少なくなく、町には仏塔やヒンドゥー寺院、モスクや教会などが混在しています。現在は平和で穏やかな国ですが、四半世紀以上にわたって内戦が続き、その終結はわずか8年前でした。そのような背景から、特に内戦の激しかった北部には経済的にも生活上にも南部との大きな格差が発生しています。

日本の教育をスリランカの先生が見たら…

NIEでのプレゼンテーションの様子

JICA事務所でスリランカの教育事情に関する講義を受けたあと、NIE(National Institute of Education) を訪問しました。ここはスリランカの教育カリキュラムを作成したり、現職教員のトレーニングや研修を行う国立の機関です。
ここで、参加した先生7名が、日本の教育についてプレゼンテーションを行いました。小学校の遠足や全校集会、中学生の部活動、勉強以外にも掃除や礼儀を通してたくさんのことを学ぶなど、日本特有の教育事情や現状について、たくさんの写真を使って発表しました。
日本の教育制度と、出発前の忙しい日々の中で準備された先生方の素晴らしいプレゼン内容に、NIEで働く先生方からは驚嘆の声があがり、「『日本人は器用』というイメージがあるが、その資質の理由が幼いころからの教育にあるのだと、今回のプレゼンテーションで理解できた」というコメントもありました。
また、参加の先生方からも「『日本の常識、世界の非常識』とは悪い意味で使われると思っていたが、日本で当たり前とされている教育制度が、実は誇れるものであることを認識することができた」といった感想が上がりました。熱意とチームワークにより、「スリランカを吸収」するだけでなく、「日本を発信」することもできた1日となりました。 

子どもたちとの交流

シャボン玉遊びが大人気!

ホームビジットにて

教育の無償化が進み、識字率も高いスリランカですが、障がいを持つ人への教育と社会参加はまだまだ一般的ではありません。
スランガニ基金は、元青年海外協力隊としてスリランカで幼児教育に携わっていた日本人が始めたNGO。その事業のひとつである「リトルツリー」は、障がいを持つ子どものための施設です。当日は十数名の子どもと先生がマーチングバンドで出迎えてくれました。
子ども達の歌と踊りの披露のあとは、研修参加の先生方から様々な出し物がありました。歌、柔道や空手の演武、シャボン玉遊びなど、子どもも先生も大はしゃぎで楽しみました。
午後はリトルツリーを利用している子どもの家庭を訪問しました。台所やたくさんの果物が実る庭などを回り、スリランカの生活を見せてもらいました。
この施設ができるまで、障がいを持つ子どもは家から外に出る機会がなく、保護者も様々な悩みを抱えたまま、誰にも相談できない状況が続いたそうです。そこに、スリランカに縁のあった日本人と、障がい児教育の必要性を感じていた現地の保育士、そして熱心な保護者の自主的な取組みの結果、現在のリトルツリーがあるそうです。「熱意は伝播する」、この施設の成り立ちを聞いた参加者の感想が印象的でした。

今も残る、内戦の傷跡

サリーのリサイクル作業

スリランカ北部のキリノッチ。ここは四半世紀以上続いた内戦の激戦地で、今も銃弾の後が生々しく残る建物や砲弾で倒された巨大な給水塔、平和復興を象徴するモニュメントなどが目をひきました。
NGOパルシックはJICAの草の根技術協力支援を受けて、このスリランカ北部で内戦の寡婦を始めとする女性の社会参加と収入向上のプロジェクトを展開しています。そのうちの一つであるサリーのリサイクルプロジェクトを行っている村を訪問しました。
日本人スタッフの方から事業について話を聞き、サリーを加工して作られたバッグや小物を見せてもらいました。昼にはカレー作りも体験させてもらい、北部独特の味を堪能しました。
通訳のスリランカ人が何度も繰り返して言いました、「生きているうちにこんな風に北部に来られるなんて!」。
わずか8年前まで戦闘が繰り広げられた場所とは思えないほど、静かでおだやかな漁村の風景と子どもたちの笑顔を見て、この平和な日々が永遠に続きますように、と願って止まない北部訪問の日でした。

青年海外協力隊の活動

環境教育指導を行う二宮梢隊員

菅野ことな隊員の活動視察

世界中の観光客や仏教徒が集まる古都キャンディ。ここで環境教育、コミュニティ開発に携わる2名の協力隊員を訪問しました。
清掃や掃除に対する考え方やごみ処理の技術・整備が異なる国で、日本のやり方を伝えるのはとても困難です。そんな環境の中、環境教育を広めるために派遣された二宮梢隊員は、スリランカの未来を担う子どもに「ゴミをポイ捨てしない」「食事をキレイに食べる」といった身近なマナーを伝えていくことから始めました。また、ボランティアがいなくなった後も現地の人達が環境教育を続けられるよう、教材キットを作ったそうです。当日はスタッフに環境教育を行う様子や、市営のゴミ売買センターを見学しました。数ヵ月前ゴミ山が崩落し、たくさんの犠牲者を出してしまったスリランカ。2度と悲惨な事故が起こらないよう地道な活動を続ける協力隊の姿は、日本の先生の目にどのように映ったのでしょうか。
また、スリランカ国内の交通の要といえる町クルネーガラ郊外の診療所では、その日行われていた妊産婦検診を視察しました。スリランカの医療レベルは高く、妊産婦や乳幼児の死亡率も南アジア諸国の中では低い一方、生活習慣病が増えている現状や、文化的理由から性教育が浸透しないという側面もあります。
この地で活動する菅野ことな隊員は、妊産婦のヘルスケアを担当し、食事指導や妊産婦体操などを行っているそうです。異なる価値観、文化、習慣の中で笑顔をたやさず奮闘する隊員に、先生方からの質問はいつまでも途切れませんでした。


街の喧騒と地方のゆったりとした時間の流れ、人々のあたたかな笑顔とたくさんの神様が共生する町並み。スリランカの素晴らしさと、この国が抱える問題を知り、スリランカという国を通じて日本の良さと課題も見つめ直すことができました。毎日の訪問先で考え、地域によって異なるカレーの風味を堪能し、路上で目にする風景に心がモヤモヤとし、五感でスリランカを体験した先生方はいろいろな感情を抱えて帰国しました。
今後はそれぞれの現場で、研修中に抱いたたくさんの想いを日本の児童・生徒に還元していただきます。7名の先生方の今後の授業実践に乞うご期待!
                   (同行者:JICA中国 市民参加協力課 新川 美佐絵)