【教師海外研修 授業実践】山口県防府市立牟礼中学校

2017年11月24日

文字が読めないってどういうこと?

下松谷 智江 先生

防府市立牟礼中学校で英語を教える下松谷智江先生は、今年の夏、JICA教師海外研修でスリランカを訪問しました。そこでの経験を生徒にどう伝えるべきか、悩んだ結果、下松谷先生は自身の専門である言語をもとに授業を作成しました。

最初に、スリランカへ向かう乗継地である香港の空港での看板を生徒に見せました。続けて、「火車」「手紙」など、普段目にする漢字だけれど読み方も意味も全く違う単語も解説をつけて紹介しました。「字が読めない、ってどんな理由が考えられるだろう」、下松谷先生の問いかけに、生徒は「外国語だから」「子どもだから」「目が不自由だから」など、様々な理由や背景を考えていきました。
「では、あなたが文字が読めなかったら、町や道で、どうしますか?」。状況を想像しにくい問いかけに悩む生徒に、下松谷先生は3本のペットボトルを取り出しました。

識字から人権を考える

「どれが水でしょう?」

廊下にはスリランカの写真が所狭しと貼られていました

「この3本の中から、水を選んでください」。出された3本のペットボトルには読めない文字で何か書かれていました。実はそれはスリランカで使われているシンハラ語。代表の3名の生徒がそれぞれ1本を選び、味見をしましたが、水は1本のみ、他の2本は味がついていました。なんとそのラベルにはそれぞれ「水」「毒」「薬」と書かれていました。
この体験をふまえ、生徒はそれぞれ「字が読めないときの気持ち」を書き出していきました。ただ不便なだけでなく、不安や怖さ、また分からないという悔しさなども感じたようです。そこから、グループごとに「文字が読めないと困ること」を考えていきました。看板やお知らせが読めないという生活上の困難さはもちろん、アレルギーや持病を抱える人にとっては命に係わる問題であることを指摘した生徒もいました。
この授業が行われた日の6時限目には、全校生徒対象の人権講演会が開かれたそうです。下松谷先生は、文字が読めないという状況、その背景にある教育の問題、そして当たり前のように感じている識字が一人一人の人権につながる問題であることを生徒に実感してほしいと、あえてこの日に授業実践を行いました。スリランカの写真1枚1枚に興味を示し、投げかけられた問いを真剣に考える下松谷学級の28名の生徒は、下松谷先生のメッセージをどう受け止めたのでしょうか。黒板がいっぱいになるほど上がった感想や意見から、彼らの主体的な学びを感じることができた授業でした。