【イベント報告】2018年度 ピーストーク -アフガニスタン-

2019年1月8日

アフガニスタンの今

ピーストークの様子。

近年、中東情勢などと比較すると国内のニュースで取り上げられることの少ないアフガニスタン。まだ紛争が続くアフガニスタン出身のJICA研修員を招いて、12月1日(土)に、竹屋公民館でHIROSHIMAピーストークを開催しました。ゲストスピーカーは、同国出身のライーさんとワヒドゥラーさん。広島大学大学院国際協力研究科(IDEC)で勉学に励んでいます。
「アフガニスタンに対する新しい印象を参加者に与えたい。」という思いを込めて、集まった19名の市民に話しました。

知ってほしい文化面

柔らかい雰囲気で、豊かな文化について紹介するライーさん。

まずはライーさんによるお国紹介です。通貨はアフガニ。鉱物や宝石が多く取れ、ナッツやドライフルーツが美味しいこと。イスラム教徒が多く、「ラマダン」と呼ばれる断食の期間を終えたら「イード」というお祝いの儀式を盛大に行うこと。アフガニスタンという国を知っているようでちゃんと知らなかったな、と思った方は少なくなかったのではと思います。誰もが聞いたことがあるであろう「バーミヤン」の石仏がとても大きいことを話した後、「でも、2001年にタリバンに破壊されてしまい今はありません。」と添えられた一言に、アフガニスタンの悲しい歴史の一面が見えました。

アフガニスタンの紛争は誰のためか?

1つ1つ丁寧に、熱意を込めて説明するワヒドゥラーさん。

1979年の旧ソ連の侵略を皮切りに、アフガニスタンの平和が遠ざかる時代が始まります。1996年にはタリバン政権が勢力を拡大。正当政府とは認められていなかったタリバン政権ですが、インフラを破壊し、学校を閉鎖し、その独裁的な支配により人々の自由を奪っていきました。
2001年9月11日、アメリカの同時多発テロをきっかけに、米軍と連合諸国がアフガニスタンに介入し、タリバン政権は崩壊します。
インフラの復旧が進む中、女性の教育や社会進出も見られるようになり、一見してアフガニスタンに平和が戻ったように見えましたが、実際にはまだ戦闘状態にある地域もあり、課題も多く残されていると研修員は語ります。「アフガニスタンは、地理的にロシアやアメリカ、パキスタン等の諸国勢力に囲まれています。武器の輸出入や核開発、対立国へのけん制といった各々の目的を持って、アフガニスタンという土地を利用しているのです。今アフガニスタンで起こっている紛争は、決してアフガニスタン人のためではないんです。」ワヒドゥラーさんが参加者に訴えました。

国づくりのためにできること

核心を突いた質問がたくさん挙がりました。

質疑応答、ディスカッションの様子。

地政学的な側面に加え、ヘロインの原料となるアヘン(ケシ)の生産も深刻な問題だと言います。アフガニスタンで作られるアヘンは世界の生産量の大部分を占めると言われており、旧支配勢力タリバンやマフィアの資金源となっているからです。
平和に向けた課題を挙げていく中、研修員が最も強調したのは「教育の質」でした。スクリーンに映ったのはアフガニスタンにおける、両親の識字率を示すグラフです。母親の4割、父親の約3割が読み書きできない現状を示していました。識字率が低いということは、確かに問題です。ですが、それがどう紛争や平和と関わってくるのか。今一つ腑に落ちなかった参加者が研修員に問います。「識字率を上げることはどうして大切なのですか?読み書きできるようになれば、自分の意思を伝えられるからですか?」うなずくワヒドゥラーさんはこのように答えました。「読み書きが出来るようになると、論理的な思考力も成長します。教育レベルが低く論理的思考力が弱いと、人の意識というのはたやすく変えられてしまいます。過激派になったり、戦闘員として利用されやすくなるのです。」
識字率と紛争の関わりは分かりづらいものですが、母国で大学講師として教育に関わる研修員2人にとっては明確な課題だったのでしょう。紛争の本当の原因は根深い、ということがよく分かった質疑応答でした。

ライーさんは最後に、「アフガニスタンでの紛争には、いろいろな国がそれぞれの思惑を持って関わっています。ですが、外国を責めるだけではだめです。アフガニスタン政府やアフガニスタンの人々が、“NO”と言う力をつけなければなりません。」旧支配勢力タリバンに対しても、「政府は話し合いのドアをいつも開けています。軍事行動は最終手段としてしか存在しません。直接話し合わなければならないのです。」と、ひとりのアフガニスタン国民としてのメッセージを伝えました。

文化面と同じく、知っているようで実はよく分かっていない部分が多いアフガニスタン紛争。研修員は準備段階から、「アフガニスタンに対する新しい印象を参加者に与えたい。」と言い続けていました。「文化について知ることで、アフガニスタンへの『こわい』というイメージが変わり、身近に感じられるようになりました。」「原因と問題の追及、現状の正しい理解が大切だと感じました。」参加者からこのような感想がいただけたということは、研修員の思いが確実に伝わったということでしょう。ご参加いただいた皆さまを通じて、この思いがより多くの人々に伝わっていくことを願っています。
皆さま、ご参加ありがとうございました。