【教師海外研修 授業実践】広島市立二葉中学校

2019年9月13日

海外で活躍する日本人から学ぶ

ラオス研修中、インタビューを行う中山舞先生(左奥)

 広島市立二葉中学校で英語を教える中山舞先生は、今年の夏JICAの教師海外研修に参加し、ラオスを訪問しました。現地での学びを生徒へどう還元するか、出発前から強く意識していた中山先生は、青年海外協力隊員やJICA職員など、ラオスで出会った全ての日本人に精力的にインタビューを行っていました。それらの貴重な「教材」を活用し、9月2日(月)、3年生の生徒39名に道徳の授業を行いました。

 中山先生は授業の最初に、ラオスで出会った広島県出身者2名を紹介しました。1人は以前にラオスで青年海外協力隊員として活動し、現在はラオスの国家的課題である不発弾処理計画と啓発活動に従事する専門家、もう1人は青年海外協力隊員として学校でパソコン指導をする教員経験のある女性でした。二人とも、「ラオスの人の手伝いができれば」という想いから、自分が得意なスキルを活かして活動に従事していました。

好きなこと、得意なことが「平和」を生み出す

3人の日本人の共通点は?

 「この人は誰ですか?」
 ラオスで活動する日本人2名の紹介の後、中山先生が示した写真の人物は、第二次世界大戦時に外交官としてリトアニアに赴任していた杉原千畝氏でした。ユダヤ人にビザを発給することで彼らの命を救った杉原氏は、なぜ職務に反してまでビザを発給したのか、生徒はワークシートにそって杉原氏の想いを想像しました。そして、ラオスで活動する日本人と杉原氏を比較し、3人の行動に共通していることを考えました。「誰かのために役に立ちたい」「一人でも多くの人を助けたい」という共通点の他、「自分のできることを通じて、という発想が同じなのでは?」という意見も出されました。この意見をうけて中山先生は「自分が今できること、得意なことで他の人を笑顔にしたり、助けることができる。では皆さんは、得意なこと、好きなことでどんな貢献ができると思う?」と生徒に問いかけました。

 中学生でもできる社会貢献、というと、募金、寄付といった行動が思いつくかもしれません。しかし、中山先生が示した3人の事例、そして好きなことが笑顔を増やす武器になる、という発想に触れ、生徒は自由に自分の好きなことを考えていきました。「好きなことは食べることなので、食べ物を通じて世界の人と食文化を交流する」「ゲームが得意だから、ゲームや遊びを通じて『生きる楽しさ』を伝えたい」「医療ドラマが好きなので、医療関係の仕事に就いて海外に出て、医療の知識や人が少ないところに行く」「読書が趣味だから、本を通じて自分の知らない世界があることを伝えたい」(原文のまま引用)など、様々な意見が出され、社会に貢献するということが必ずしもお金や物を提供するだけではないことに、気づいたようでした。

 授業を通じて中山先生は、子どもたちに自分ができる平和貢献を考えてもらいたかったそうです。身の回りにいる人を大切にすることが平和構築の第一歩であり、そこから少し視野を広げることで世界や国際社会について想いを馳せることができたら、地球市民の一員としての視点が育まれるのではないか。そう考える中山先生自身、研修中のラオスでは会話本を手に現地の人と積極的にコミュニケーションをはかり、いつも笑顔の輪の中心にいました。中山先生の実体験を通じたメッセージを、39名の生徒もまた、笑顔で受け止めていました。