【広島とアフリカ】被爆地の歩みに心寄せ

2019年10月21日

【画像】JICA中国 市民参加協力課
川崎裕美
2019年9月15日(日) 中國新聞SELECT掲載

※中国新聞社の許諾を得ています

雨の中、平和記念式典に参列し、原爆慰霊碑に花を手向けるハッサンさん=手前(8月6日)

国際協力機構(JICA)の研修で日本を訪れていたアフリカの紛争経験国の行政官らが8月6日、平和公園(広島市中区)で営まれた平和記念式典に参列した。平和構築や日本の制度などを学ぶプログラムの一環で、この日は被爆体験も聞いた。まだ情勢不安が続く国々の参加者にとって、ヒロシマを経験し、生き抜いてきた被爆者の歩みは強く心を揺さぶるものになったようだ。

アフリカで最も新しい国、南スーダンの連邦省でグッド・ガバナンスの推進を担当するアグドォ・サンデー・フィリップ・コットさんは「広島で、生まれて初めて平和の本当の意味を感じた」と言う。

内閣省のピーター・ラス・ラドゥさんも「復興には多大な努力と強い決意、そして未来を見据えることが大切だと学んだ。過去ではなく未来に注力したい」と口をそろえる。

内戦による海賊急増でニュースをにぎわしたソマリアからの参加者もいる。人事部門の政策立案を担当するハッサン・ナワル・アリさんは「広島の人たちが全てをのみ込んでゼロから立ち上がったのは素晴らしい」と驚く。首相府で働くスィアド・イスマイル・アハメダさんは「広島は、訪れる人々に、人生と平和に前向きであるよう勇気づけてくれる。信念を持つことの意味を世界に示してくれた」と力を込めた。

私もかつて約2年を過ごしたアフリカ大陸。「広島」というだけで心を寄せてくれたアフリカの友たちは部族を問わず、誰もが家族を失うことの悲しみや、心の痛みを知り、他者への思いやり、共感にあふれていた。

広島の歩みは、目の前で復興が課題となっている彼らに、未来を信じる力を与えている。彼らの国の平和を、この地から願いたい。

JICA中国 川崎裕美さん
かわさき・ひろみ
広島市佐伯区出身。国際基督教大卒。製薬会社勤務後、家族の海外赴任に伴いアフリカ、中央・東南アジア、中東の数か国に滞在した。2018年4月から現職。NGO・地域との連携事業、市民向けイベント等を担当している。