【教師海外研修 授業実践】山口市立中央小学校

2019年11月15日

ラオスでの学びを子どもに伝える

ラオスの子どもにワークシートを見せる得重直也先生(中央)

教室にあるラオス展示コーナー

 山口市立中央小学校の得重直也先生は、今年の夏、JICA教師海外研修でラオスを訪問しました。ODAの現場で多くの課題を学ぶ一方、世界や外国についてまだ知識の少ない小学2年生の児童に、出会いの大切さ、世界中の人とつながることの楽しさを伝えたいと、日本から持参したワークシートを毎日欠かさず持ち歩いていました。ワークシートのタイトルは「どうぞよろしく!ラオスのおともだち-ともだち100にん だいさくせん-」。老若男女問わず、訪問先で出会うすべての人に積極的にラオス語で声をかけ、ワークシートにサインをもらっていました。帰国後、教室にはラオスの教科書やドリル、日用品とともに、たくさんの名前がラオス語で書かれたシートが並びました。
 10月28日、中央小学校は人権参観日でした。多くの保護者が授業参観におとずれる5時間目、得重先生は児童だけでなく大人にも持続可能な社会を考えてほしい、との想いから、1、2年生合同の授業を設け、教師海外研修の中で学んだSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発のための目標)を取り上げました。
 「私たちの中央小学校にも目標があるよね。実は世界にも目標があるんよ。どんな目標だと思う?」と得重先生が問いかけると、「海にゴミを捨てない」「世界の誰とでも友達になる」など、持続可能性という概念などまだまだ難しいはずの2年生の児童から、SDGsの目標や理念に合致する意見が出されました。そこで得重先生はSDGsの17の目標をアイコンで示し、グループに8枚のカードを配っていきました。

小学1,2年生が触れるSDGs

世界の目標ってなんだろう?

自分にとって大事なものは?

 8枚のカードには「毎日ごはんを食べることができる」「飲み水や水道など安全な水がつかえる」「だれでも学校に通って勉強することができる」など、日本では当たり前の事柄が並んでいます。得重先生が「このカードの中で『特に大事だと思うもの』を3枚選んでみよう」と言うと、児童は「ごはんをずっと食べられなかったら、いつか死んじゃうよ」「きれいな水がないと病気になっちゃう」など、自分にとっての「当たり前」がなくなってしまうことを一生懸命に想像していました。また、グループでの話し合いに加わった保護者からは、「男女関係なく勉強や仕事、役割ができる」というカードについて、「今の日本はまだまだ女性に負担が大きいから、この目標は私たち主婦にとってとても大事」といったコメントがあがり、自身の立場からSDGsを身近に考えられたようでした。
 最後に得重先生は、「世界がもし100人の村だったら」という絵本の一節を紹介し、世界には学校に行けない子どもが多くいること、安全な水にアクセスできない人も多いこと、私たちの当たり前が世界では当たり前ではないことなどを解説していきました。そして、ラオスで出会った日本人専門家やボランティアの写真を見せ、世界の目標が達成されるために活躍している日本人として紹介しました。「自分の身の回りにも、世界の目標のためにできることが、実はたくさんあるよ」という得重先生の言葉を、1、2年生の26名の子どもたちは真剣な表情で聞いていました。