【教師海外研修 授業実践】広島県立芦品まなび学園高等学校

2019年12月9日

写真と現物からラオスを知ろう

ラオスで伝統儀式「バーシー」を体験中の阿部絵理子先生

この写真はなんでしょう?

 「わたしの夏休み」。11月18日、広島県立芦品まなび学園高等学校の阿部絵理子先生が映し出したスライドには、そんなタイトルが書かれていました。今夏、JICAの教師海外研修に参加した阿部先生が、現地で撮影した写真を次々と生徒に見せていきました。学校の校庭にあった水道、現地の食事、学校の教室や建物の様子、病院の風景、物があふれ人がごった返す市場、そしてホームステイをした村や家庭など、「この写真はなんだと思う?」と生徒に問いかけながら、阿部先生は現地でのエピソードもまじえて解説していきました。
 事前にアンケートを取ったところ、このクラスの生徒の半分はラオスを知っている、と答えたそうです。そこで阿部先生は、ラオスの位置、面積、人口、国旗などの一般情報をクイズ形式で紹介していきました。その後、阿部先生自身が現地で集めた物品や日本では目にすることのない写真など、異なる物品が入った封筒をグループに1つずつ配っていきました。生徒は、封筒の中に入っている様々な物や写真を、一体何に使うものか、どんな背景から生まれたものかなど、グループで相談しながら考えていきました。
 袋には、ラオスの紙幣、女性の民族衣装「シン」の材料となる布、現地の人の主食であるもち米を入れる「ティップカオ」という籠など、ラオスの生活用品が入っていました。中には、現地でも目にする機会の少ない、フランス統治時代に流通していたコインもありました。海外研修中に熱心に授業の教材を探していた阿部先生ならではの「ラオスボックス」に、生徒はみな、笑い声や驚きの声をあげながら想像をふくらませていました。

ラオスの課題から「豊かさ」を考える

授業の様子

自分にとっての豊かさとは?

 授業の後半は、阿部先生が現地で目にした風景からラオスの課題を考えるものでした。首都ビエンチャンの道路渋滞、ホームステイした村の家々で見た、屋根からトタン板をつなげて雨水を溜めておく貯水槽など、前半で触れた、楽しくワクワクする牧歌的な国とは趣きの違う、もうひとつの「ラオス」が、そこにはありました。そして生徒は、それらの課題について、日本がどんな支援をしているか、ワークシートにそって考えていきました。難しい問いに頭を悩ませながらも、「渋滞の対策には電車を整備する」、「水道が通っていない地域には井戸を掘り、新たな水道設備を整備していく」などの意見を出した生徒に、阿部先生は実際に日本がラオスで行っている支援について説明していきました。その後、生徒一人ひとりにカードを配り、さらに難しい質問を投げかけました。「その24枚のカードから、自分にとって『豊かな社会』*に欠かせないものを5つ選んでみよう」。カードには「安心して寝泊まりできる場所がある」、「好きな仕事につくことができる」、「銃などの武器が簡単に手に入らない」など、多様な条件が並んでいました。
 現地でラオスの人の穏やかな生活スタイルに触れ、日本が行う支援についても学んだ阿部先生は、人を豊かにするはずの支援活動が、予想外の「問題」も引き起こす現状を知り、国際協力とはなにか、豊かさ、幸せとはなにかを、ずっと問い続けていたようです。大人にとっても難しいこのテーマを、生徒たちにも問いかけた阿部先生、次の授業ではラオスが抱える大きな課題、不発弾について取り上げるそうです。笑顔も悩みも学びも多い「阿部先生の夏休み」はまだまだ続きます。

*認定特定非営利活動法人開発教育協会(DEAR)が作成した教材「豊かさと開発-Development for the Future」から引用しています。
詳細は、下記リンク先よりご確認ください。