【実施報告】SDGs連続セミナー 第3回「食品ロスに立ち向かう~企業とパン屋さんの挑戦」

2019年12月27日

【画像】日時:2019年12月14日(土)13:30~15:30
会場:エソール広島 会議室(広島市中区大手町一丁目2-1おりづるタワー10F)
参加者:84名
講師:高原 淳 氏(株式会社日本フードエコロジーセンター)
田村 陽至 氏(「ブーランジェリー・ドリアン」店主)
共催:公益財団法人広島県男女共同参画財団 エソール広島

食品ロスに新たな価値を与える

講師の高原淳さん

講師の田村陽至さん

 2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、世界が取り組む2030年までの目標です。本セミナーは、様々な分野で活躍する専門家から世界各地で起こっている課題を聞くことでSDGsの背景を知り、「持続可能な社会」とはどんなものなのかを考えるきっかけとなるよう企画されました。
 私たちに身近なテーマである「食品ロス」を考える第3回には、84名の方がご参加くださいました。

 現在、日本全国の自治体のごみ処理費用は年間約2兆円と言われています。焼却炉で燃やされるゴミの約半分が食品廃棄物といわれており、1年間で約1兆円の税金が、食品を燃やすためにかかっているそうです。高原淳さんが所属する株式会社日本フードエコロジーセンターでは、スーパーや企業から出る食品廃棄物を回収し、養豚用の飼料に変える事業を展開しています。365日稼働する工場では、1日35tもの余剰食品を処理し、1日で42tの液体飼料を製造しているそうです。この飼料は、関東近郊の契約養豚農家へ販売され、この餌で育った豚をブランド化することで販路を拡大し、食品リサイクルの輪が構築されています。この事業が評価され、同社は2018年に「ジャパンSDGsアワード」のSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞しています。
 画期的な事業を展開する同社ですが、高原さんは課題についても率直にお話し下さいました。ビジネスとして欠かせない収益性、ゴミ問題と密接に関わる地域と自治体の問題など、障壁となる点が少なくないリサイクルについて、「リサイクルは目的ではなく手段。廃棄食品を減らす努力を一人ひとりが心がけることも大事」とメッセージを下さいました。

 田村陽至さんが経営する「ブーランジェリー・ドリアン」は開店前から行列ができる人気店。扱うのはわずか数種類のパンのみ、週3日の午後しか開店せず、長期休暇も取得しながら年商2,500万円と、豊かさと働きがいを両立されています。そして、味が評判なのはもちろん、「捨てないパン屋さん」としても有名になっています。
 25歳で家業を継いだ田村さんも、当初は他のパン屋さん同様、たくさんの商品を扱い、休みどころか睡眠時間を削って働く日々だったそうです。そして、焼き立てパンを求めるお客さんの期待に応えるべく、日に何回もパンを焼き、その結果、毎日のように大量のパンを捨てていました。アルバイトのモンゴル人女性から「食べられるものをこんなに捨てるのはおかしい」と言われ、「日本では仕方ないんだ」と反論しながらも自己嫌悪や無力感がつのったそうです。そんな田村さんの考え方、働き方を変えたのは、店を休業して修行に出かけたヨーロッパのパン屋さんでした。職人の労働時間は短く、製造工程は手抜きなのに美味しい。帰国後、現地のやり方を模倣した田村さんのお店では、気づくと閉店後に捨てるパンがほとんどなくなっていました。そんな経緯を、気さくな口調ながら真剣に語る田村さんのお話には、手を抜く必要性、大勢の一見客より300人の常連客を大事にする意味、次世代にツケを残さないことなど、持続可能な社会を築くために大切な要素が、たくさん含まれていました。

 異なる立場で挑戦を続けるお二人のお話を聞き、参加者からは「SDGsや国際協力のみならず、働き方や生き方を考えることのできる内容で、自らをふり返るきっかけになった」「お二人の話には、SDGsの目指す『誰ひとり取り残さない』につながる共通点がたくさんあるように感じた」「買う側である私たちに何ができるか、何をしなくてはいけないか、考えさせられた」などの感想が寄せられました。