【イベント報告】HIROSHIMAピーストーク ~フィリピン ミンダナオ島~

2019年12月27日

すぐにでも行きたくなるフィリピン!

「フィリピンでは,170以上の言葉が話されています。」とグレッチェンさん(中央)

 今年度2回目となるピーストークが、12月14日(土)、大竹市玖波公民館で開催されました。今回は、フィリピン・ミンダナオ島で起こった武力衝突をテーマに取り上げ、地元の玖波中学校の生徒や大竹市内の高校生を含む47名の方が参加しました。メインスピーカーは国際協力について研究しているJICA研修員のグレッチェンさん。同じく輸送技術について研究するジョハンさん、メイさん、ミンダナオ島出身の広島大学留学生ローブさん、ロハイダさんを加えた5名が民族衣装を着てお話ししてくださいました。南国の服は薄手で、日本の寒い季節に着るのは肌寒いので、カイロを貼っての参加です。
 第1部では、JICA研修員3名が、フィリピンの地理や旗・食文化について紹介してくれました。「フィリピンの旗は、必ず青い方が上。赤い方を上にして掲げるのは戦争状態を意味します。」とジョハンさん。メイさんからは、フィリピンのおすすめ料理が紹介されました。ふ化する前のアヒルの卵を茹でたバロットなど初めて目にする料理、「地獄のにおいで天国の味」とされるドリアンの話など、参加者は興味津々でした。

フィリピンの歴史 マゼラン来航から国の独立を勝ち取るまで

 第2部は、フィリピンの歴史について。グレッチェンさんの司会で、ほかの4名が説明していきました。
 世界史に登場するマゼランが、フィリピンでラプラプ王との戦いで戦死したことを知り、なるほどとうなずく参加者もおられました。また、「当時のスペインとの攻防は、日本のマンガ『ワンピース』を思い出す人もいるかもしれませんね?」と話を向けるグレッチェンさんに顔を見合わせる中学生たちも。イスラム教やキリスト教が伝わり、国の様子が変わったこと、スペインに次いで、アメリカや日本もフィリピンを侵略したことが紹介されると、会場は静まり返りました。国が独立を勝ち取りマルコス政権の時代になっても、ミンダナオ島を中心に居を構えるイスラム教徒にとっては長い苦難が続きました。非武装の市民による“ピープル・パワー革命”でアキノ大統領が就任し、ようやくマルコス政権が終わりました。

マラウィ市内 武力衝突が起きて

いただいた質問からも応援するお気持ちが伝わりました

 2017年5月23日、フィリピン軍と、マウテグループやアブ・サヤフなどの過激派組織との武力衝突が起こりました。グレッチェンさんが、当時のことを他の参加者にインタビューしていきます。「その時、どこで何をしていたの?」ローブさんは「研究のためにマラウィ州立大学にいて銃声を聞きました。ちょうど弟と妹も一緒にいて、その妹は2歳になる娘を連れていました」。「私は産休中でマラウィの自宅にいました。」とロハイダさん。「3か月になる娘の服を干していたときに、近所の人が家に逃げ帰るのとヘリコプターが飛んでいくのを見ました。」と続けます。メイさんは、「私は別の島にいました。この出来事は、大きなニュースとして国中を駆け巡りました。みんなが協力してこの状況に立ち向かわなければと祈ることしかできませんでした」。
 武力衝突は、5か月もの間続き、10月17日にようやくドゥテルテ大統領が収束宣言を出すに至ります。その間、マラウィ市内は破壊され、ローブさんの家も壊されてしまい、仮設住宅への引っ越しを余儀なくされました。

 質疑応答では「フィリピンでこのような事件があったことは、この場で初めて知りました。外交的にはいろいろあると思うが、せめてフィリピン国内だけでも仲良く暮らしてほしい。そういうことは可能でしょうか?」という質問が上がりました。感極まったロハイダさんが声を詰まらせ、グレッチェンさんが代わってフォローに入ります。「現在は、暫定自治政府の誕生で落ち着いています。このような場で、自分の国で起きたことについて紹介できる機会が持てて感謝しています。フィリピンに帰ったら、復興のための役に立ちたいと思います」。ロハイダさんも、「当時は涙が出ることはなかったのに、初めて泣いてしまいました。みなさんのあたたかい言葉が嬉しいです」。彼女たちの決意に、またフィリピンを応援する拍手が沸き起こりました。

ミンダナオの小学校へ送る色紙を作成

仮の校舎で学ぶMindanao Central Elementary Pilot School の子どもたち

ミンダナオの子どもたちに向けて書かれた色紙(一部)

 続いて、地元玖波中学生による自己紹介と、玖波を紹介するために生徒たちが街の人を取材して作成した動画が流されました。動画は英語の字幕付きで、元気な中学生の様子に研修員や留学生に笑顔が戻りました。
 最後に、ミンダナオの中心部にある小学校の紹介が行われました。学校の建物が破壊され、子どもたちは仮の校舎で学んでいるそうです。参加者はグループに分かれて、色紙を制作。筆ペンで力強く書かれた「絆」や「しっかり勉強して、平和な社会を築いてください!」といった応援メッセージが寄せられました。平和のシンボルの折り鶴を貼ってくれた方もいらっしゃいました。
 色紙は、小学校に送らせていただきます。ご参加いただきましたみなさま、本当にありがとうございました。