【実施報告】SDGs連続セミナー 第4回「『水』から考える持続可能な社会と気候変動」

2020年2月19日

【画像】日時:2020年1月11日(土)13:30~15:30
会場:エソール広島 会議室(広島市中区大手町一丁目2-1おりづるタワー10F)
参加者:90名
講師:沖 大幹 氏(東京大学総長特別参与/未来ビジョン研究センター教授)
共催:公益財団法人広島県男女共同参画財団 エソール広島

「水」から考える持続可能な社会と気候変動

講師の沖大幹氏

 2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、世界が取り組む2030年までの目標です。本セミナーは、様々な分野で活躍する専門家から世界各地で起こっている課題を聞くことでSDGsの背景を知り、「持続可能な社会」とはどんなものなのかを考えるきっかけとなるよう企画されました。
 最終回となる第4回には、全4回で最も多い90名の来場者がありました。

 講師の沖先生は最初に、かつて広島県の川を調査した際のエピソードを、当時の写真を投影しながらお話し下さいました。身近な話題から入った講義は、開発途上国の様々な地域を訪問、調査した際の話にうつっていきました。世界には水道が整備されていない地域や、近くに井戸がなく、遠くの川から水を運ばなければ生きていけない村落も多くあります。そして「水くみは日常で最も何も生み出さない、一番生産性のない労働であるにもかかわらず、特定のエリアでは生きていくために必要な作業である。『どんな人間にも1日24時間で、時間だけは平等だ』と言われるが、水くみをしなくては暮らせない地域の人々にとって、使える時間は決して平等とは言えない」という世界の格差を、私たちが気づきにくい日常の水問題を通じて教えて下さいました。
 また、水が豊富なはずの日本国内で何故ひんぱんに渇水が問題になるのか、中国地方でも大きな被害が出た豪雨と異常気象などについてもお話し下さいました。そして、私たちが日常的に支払っている水道料金とインフラ整備、災害対策との関連性についても解説して下さいました。
 気候変動についての話の中では、最近ニュースで取り上げられる機会の多い環境活動家グレータ・トゥーンベリさんのスピーチと、そこで言及される気温上昇と地球の抱える危機についてもご説明下さいました。
 質疑応答の場面では、時間が足りないほど多くの質問が出ましたが、「水害対策や気候変動に対して、自分たちにできることはあるか」といった、水問題や気候変動を身近にとらえた問いも上がり、世界の問題を自分事としてとらえられた方が多くいたようです。
 今回も小学生からシニア層まで、幅広い年齢の方々がご参加下さいましたが、高校生からは「持続可能な社会をつくるための目標がどんなもので、そのために何をしているかが分かった」「難しいデータや数値を分かりやすく教えて下さり、身近に考えるきっかけになった」といった感想が上がりました。また、社会人からは「講義を通して分かった『水の大切さ』を、将来を担う子どもたちに伝えていくことが大人の役割であると思った」「自分が井戸水を使って生活していた時代を思い出した。次世代が少しでも良くなるような生活をしていきたい」など、まさに持続可能な社会を目指したコメントが多く聞かれました。
 生き物にとって欠かすことの出来ない水は、貴重な資源であるだけでなく、人間が生きる上での文化や生活、持続可能な経済発展にも大きく関わるものです。一方で、天然資源であるにもかかわらず、その分配や使い方は決して平等とはいえません。水と気候変動の問題は、SDGsの他のゴールとも密接に関わる重要な要素であり、「誰ひとり取り残さない」ことを誓ったSDGs達成を左右するともいえるテーマですが、参加者は本セミナーを通して身近な問題として捉えて下さったようです。

 様々なテーマで開催した全4回の「SDGs連続セミナー」は今回で終了となります。県外からも多くの方がお越し下さり、述べ282名の来場者がありました。JICA中国はこれからも、中国地方の皆さんとともに、SDGsを通して持続可能な社会について考え、ゴール達成に向けて尽力していきます。