地方創生の実践者(浜田市世界こども美術館・海士町(島根県))× JICA草の根技術協力(教育分野)

JICA草の根技術協力事業の実施団体が意見交換会を開催しました

2022年10月1日

島根県×ブータン×教育分野×JICA、これは何かの縁!

島根県にある浜田市世界こども美術館および海士町は、JICA草の根技術協力事業(以下、「JICA草の根技協」)を活用し、2022年からブータンにおいて教育支援事業をそれぞれ個別に実施しています。JICA草の根技協は、日本国内の団体からの自発的な提案型事業であり、事業の実施時期、国や支援分野などが一致することは稀ですが、今回、「島根県」の2団体が、「ブータン」×「教育」の支援を、同時期に実施しています。「これは何かの縁!」ということで、実施団体・プロジェクトマネージャーの提案で、ブータンでのそれぞれの事業へのヒントを探るため、両団体のメンバーが一堂に会し意見交換会を開催しました。

今回は、意見交換の内容とともに、JICA草の根技協における日本国内への貢献および地方創生の取り組みについて紹介します。

JICA草の根技協と地方創生

JICA草の根技協は、開発途上国で地域の人々が抱える課題に対して、開発途上国のニーズに即して、実施団体が持つ知識や技術を活かし、地域の生活や生計向上を目指す事業です。こうした、「地域の課題に着目し、あるものを活かし、多くの関係者を巻き込みながら解決していく」プロセスは、日本の地域づくりの実践者による地方創生の取り組みと通ずる点が多くあります。

浜田市世界こども美術館と海士町は、これまで人口減少、高齢化、働き手世代の不足という課題を抱える地域で、地方創生の実践者として活躍してきました。浜田市世界こども美術館は、地方の美術館が直面する資金不足などの課題に直面する中で、地域にある廃材などに価値を見出して活用し、地域の方々の協力を得ながら、厳しい予算状況であっても、次代を担う子どもたちのために、より良い美術の環境を届けられるよう事業を実施しています。また、海士町は「ないものはない」のスローガンを掲げ地域唯一の高校である島根県立隠岐島前高校の魅力化向上の一環として、高校生が地域と連携して取り組む、地域課題解決学習PBL(Place/Property/Problem/Project Based Learning)を先駆的に実践してきたことで有名です。

過疎化や少子高齢化などの課題に直面する中で、浜田市世界こども美術館と海士町が取り組んできた、地方創生の経験・知見は、JICA草の根技協を通じて、開発途上国の課題解決に役立てられています。

実施団体の経験や事例を共有

意見交換会の様子

浜田市世界こども美術館の企画展を見学

最後にみんなで集合写真

意見交換会では、それぞれの団体がブータンで実施する活動を紹介した後、以下の内容で活発な意見交換が行われました。
(1)教育支援における授業の質の向上を成果としてどのように測っていくか
(2)開発途上国での活動をどのように日本国内へ還元していくか
(3)草の根レベルの活動をどのように国レベルでの事業に発展させていくか

浜田市世界こども美術館からは、授業の質の向上を図る際に、ブータンの教員への自己評価シートを採用したが、当初は教員間でも評価基準にばらつきがあり苦戦したこと、また、日本国内への貢献活動として、ブータンの教員を日本での研修に招く際に、地域の住民や学校での交流会を開催すること、そしてこどもたちや地域の方々が毎回この交流会を楽しみにしている様子などが紹介されました。
海士町からは、これまでに実施したブータンの教員向けオンライン研修のアンケート結果から、地域課題解決学習PBL導入への関心や反応、事業にブータンの地域住民をどのように巻き込むか、さらに、今後海士町からブータンに派遣する日本の高校生が帰国後に他の高校生や地域の住民へ発表会を計画していることなどが紹介されました。

また、「草の根レベルでの活動をどのように国レベルでの事業に発展させていくか」については、浜田市世界こども美術館から、美術教育を実施することがブータン中央政府で政策決定されている点に加え、事業関係者それぞれの「人」の推進力、影響力が大きかった点や、現地の関係者とは「支援が必要な人たちとしてではなく、アートの力で地域を耕す‘同志‘だ」という思いも紹介されました。
意見交換会後は、会場となった浜田市世界こども美術館の企画展示を見学し、展示の企画意図や地元の小学校教育と美術館の連携方法などが紹介されました。最後に、今後もこの2団体が相乗効果を出せる分野で連携を検討していくことが話されました。

地方創生に国際協力の力を

JICA草の根技協では、日本から開発途上国への一方向の協力だけではなく、日本の地域社会と開発途上国の双方の課題を解決する事業や活動が実施されることも期待されています。例えば、技能実習生などの外国人材が、日本で学んだことを帰国後に活かせるように出身国でフォローアップをする事業を実施することや、JICA草の根技協の事業を通じて培った経験や、途上国関係者との交流の機会を活かして、地域の活性化に役立てる取組みなどが挙げられます。
2022年度のJICA草の根技協の公募が開始されました。詳細は募集要項をご覧ください。
「どのような事業ができるの?」「こんなことを考えているけれど応募ができる?」など、お気軽に以下のお問い合わせ先まで、ご連絡ください。

【問合せ先】
JICA中国 市民参加協力課
TEL:082-421-6305 FAX:082-420-8082
E-mail:jicacic-coordinator1@jica.go.jp