【実施報告】ハイブリッド開催:2022年度第1回国際教育研修会-JICA開発教育支援事業20年をふりかえり、これからを考える-

2022年8月4日

【画像】国際協力機関であるJICAが日本国内で開発教育支援事業を開始して20年、これまで児童生徒や先生方を対象に様々なプログラムを実施し、各県・市町村教育センターをはじめとする教育行政とも連携をはかってきました。2022年7月23日(土)の13時から16時まで開催した第1回国際教育研修会では、この20年間の成果と課題をふり返り、SDGs、多文化共生の視点でますます多様化する学校現場や地域のニーズにどう向き合っていくべきかを考えました。
中国地方の先生方と顔の見えるお付き合いを続けていきたいという想いと、今回は特に全国でJICA事業を活用くださっている方にもご参加いただきたいという願いから、会場参加とオンラインのハイブリッド形式で開催し、76名(会場参加10名・オンライン参加66名)の方がご参加くださいました。

持続可能な開発目標への教育の役割とは?

オンラインでご講演下さった北村友人教授

第1部の基調講演では、東京大学大学院教育学研究科教授の北村友人先生に「『持続可能な開発目標(SDGs)』を実現するための教育の役割」というテーマでお話いただきました。世界の問題を一人一人がどれだけ「自分ごと」としてとらえられるかがSDGsの重要なポイントであることや、コロナ禍でオンライン教育、リモートワークが進む中、インターネット環境の差をはじめとして日本国内でも格差として浮き彫りになり、だからこそ従来意識されてきた平等・公正感にとどまらず、全ての人に優しいシステムへの転換が求められるようになったことなどが示されました。そして、そのような社会環境の変化の中で、各学校や教師に求められることも転換期にあることが強調されました。多くの示唆に富む内容に、会場からもオンラインでも多くの質問が出され、北村先生はその一つ一つに丁寧にご回答くださいました。

第2部ではJICA開発教育支援事業に関するアンケート結果をJICA中国スタッフより報告しました。JICA中国では2022年3月から4月にかけて、中国地方から教師海外研修に参加された方、JICAボランティアに現職で参加された方を中心にアンケートを行い、国際教育の具体的な取り組みや成果、実践についての課題などを伺いました。「開発途上国の問題を身近に感じられるようになった」という参加教員自身の変容や、「教員自らが参加、挑戦する話をしたことで、生徒の学習意欲がわいた」という生徒の変容を成果としてあげられた方がいらっしゃいました。一方で、ご自身の実践が学校全体の取り組みになりにくいといった課題も提示されました。また、外国につながる児童・生徒を取り巻く状況についても様々な回答が寄せられ、現在の学校現場が抱える課題の多様さや複雑さを改めて認識した報告となりました。

学校と地域のパートナーが共にできること

パネルディスカッションの様子

第3部は、長年JICAと連携して教員研修を実施する広島県立教育センター副所長の大道伸幸先生、教師海外研修とJICA海外協力隊現職教員特別参加制度を利用された三原市立三原小学校の田中涼子先生、東広島市で日本語教室を主宰する「こどものひろばヤッチャル」副代表の奥村玲子さんをむかえ、パネルディスカッションを行いました。
児童生徒が社会の問題を「自分ごと」化するためにまずは教員自身が様々な事柄を自分事化していく必要があること、国際教育に取り組む大前提として、どういう子供を学校で育てていきたいのかを深く考え、学校外の機関の活用もはかること、外国につながる児童生徒を支援の対象として特別視するのではなく、子ども一人ひとりに何が適しているかを考えることが配慮やサポートを超えたシステムの転換に繋がるのではないか、などとても深い議論がなされました。ご参加の方からは、「本研修で『グローバル化』という言葉が持つ曖昧さを払拭し、真の国際協力の意味を考えていくうえでの貴重なきっかけとなった」、「私は教員という立場ではないですが、(むしろ生徒です)先生の努力や工夫が伝わりました」など多くの感想が寄せられ、参加者にとっても講師、パネリストにとっても充実した研修会となったようです。

本研修会の模様をYouTubeで公開しました。下記関連リンクよりご覧ください。
また、概要とJICAプログラム活用者を対象にしたアンケート結果および活用者による寄稿文を、JICA開発教育支援事業の20年をふり返る冊子としてまとめましたので、関連ファイルよりご覧ください。