【実施報告】国際フェスタ2022/元サッカー日本代表 巻誠一郎さんが広島で語る(前半戦/ハーフタイム編)

2022年12月28日

前半戦「ワールドカップや海外のチームでの経験から得た気付き」

巻さんと羽立推進員の対談

熱戦が繰り広げられている4年に一度のサッカーの祭典、ワールドカップ・カタール2022が開幕した11月20日。2006年ドイツワールドカップに出場した元サッカー日本代表、巻誠一郎さんのトークショーが広島国際会議場で行われました。

「選ばれると思っていなかった。」(巻さん談)ドイツワールドカップで、グループリーグ第3戦のブラジルとの試合に先発出場。試合開始の笛が鳴るまでは緊張があったものの、始まってしまえば「いつも通り」のプレーはできたという巻さん。しかし、「いつも通り」のプレーができてもブラジルにはとても及ばず、ブラジルにも通用するような「いつも以上」のものも出すことはできなかった、という経験から、「いつも通り」のプレーの質をいかに高められるかが大切だと認識し、ドイツ大会がサッカー選手としての過ごし方の分岐点になったそうです。

今大会で巻さんが注目している選手として名前が挙げられたのは、長友選手や川島選手、メッシ、ロナウドなど、日本代表も他国のチームも、ベテランの選手たち。ベテランの域に入ってきている選手たちの、チームを支える経験や振る舞いに期待すると同時に、年齢的に最後のワールドカップになるであろう選手たちが最高の結果を残せるよう周囲の選手が奮起して好結果に繋がっていく、そのような展開を描かれていました。

巻さんは2010年にロシア、2011年に中国のチームへ移籍をしています。ロシアのチームからオファーが届いたときには、初の海外移籍ということもあり熟考・・・ということはなく、1日2日で契約書にサインをした、という巻さんのお話には会場中がどよめきました。各国のリーグでは、自国や近隣国以外の国や地域出身の選手登録の人数が限られているリーグが多く、それらの制限を「外国人枠」と表現します。ロシアのチームでも「外国人枠」の1人として巻さんがプレーすることで新たに外国人選手が移籍してきた場合に、日本で自国の選手としてプレーをするのとは異なるプレッシャーがあったそうです。また、サッカー以外の普段の生活でも日本と異なる場面は多く、最初は戸惑いもあったようですが、それぞれの国の文化を実際に住んでみて知ることができたのはとても貴重な経験になったというお話もあり、多くの方が頷きながら耳を傾けていました。

中国のチームでは、チームとしてまとまることの難しさも痛感。同じチームの中でも「プロになれて満足」、という選手もいれば、「上位チームにステップアップしたい、海外でプレーしたい」という選手や、「代表に選ばれたい」という選手もいるなど、個々人の設定する目標が異なっており、元日本代表監督で、チームの監督のトルシエ監督も苦戦されていたそうです。そんな中国での生活で巻さんが驚いたエピソードがあります。中国の人に「〇〇ができるか?」と聞くと「大丈夫だ、できる」という答えがかえってくる。実際には「できると答えていたけどできなかった」ということもあるけれども、まずはできると答え、挑戦するのだそうです。この姿勢が多くの日本人とは異なっており、巻さん自身も中国に行くまでは割と何事にも挑戦するほうだと思っていたものの、中国の人と関わっていると自分はまだまだだと感じたそうです。ワールドカップや海外のチームでの奮闘の中でサッカー選手として、一人の人間として大切なことに気づかされることがたくさんあったことが垣間見えるあっという間の前半戦でした。

ハーフタイム「巻さんも初体験!?目隠しをしてパス交換!」

ブラインドサッカー体験の様子

トークショーが半分ほど経過した所で、一息いれる意味も込めてブラインドサッカーのボールを使ってのパス交換を行いました。ブラインドサッカーはパラリンピックの種目で、近年注目が加速している競技です。ゴールキーパーを除くプレーヤーはアイマスクを着用してプレーします。視界が閉ざされるため、ブラインドサッカー用のボールには、中に金属が入っていて、転がると音が鳴るようになっています。

まずは、「ブラインドサッカーは知っていても、経験するのは初めて」という巻さんに、アイマスクを着用して挑戦してもらいました。トラップは足元にピタリ、パスもさすがの精度でしたが、ご本人のイメージと実際の軌道はずれており、難しさを実感していただきました。その後は参加者と巻さんによるパス交換を行いましたが、皆さん初めてとは思えないほど正確なトラップとパスでした。アイマスクをつけて見えない状態で体を動かすことに対して、ご参加いただいた方々も「難しい、怖い」と言われていましたが、パス交換がうまくいくと場内は大きな拍手に包まれました。

巻さんからは「見えない怖さ、緊張で汗かきました」とパス交換をしていない方も感覚を想像しやすいコメントもいただき、そこから話は障害がある方との関わりについて広がっていきました。巻さんは、障害がある人と関わる機会があることも多いものの、「支援」や「~してあげる」という感覚はなく、「フツー」に一緒に同じ場で過ごされているそうです。障害の有無にかかわらず、誰しも得意不得意があり、障害がある方との農作業中には、手先が不器用な巻さんがつっこまれることもよくあるのだと、普段の様子が想像できるようなエピソードも披露されました。(続きは後半戦へ)