ジブチの中学生に実験の楽しみを

2018年1月31日

田中亜季実(2015年度4次隊・理科教育)

アフリカ、発展途上国、中学校の理科の授業と言われて思い浮かぶのは、小さな教室、実験器具はもちろんなく、説明している先生をただ見つめる生徒たち…ここジブチに赴任する前までは、そんなイメージだった。ところが私が赴任した中学校には6つの理科室があり、準備室にはビーカーや試験管、オシロスコープなどの実験器具が揃っていた。

私の配属先であるフクザワ中学校は、1995年に日本の援助で建設された。私はこの中学校で理科準備室の管理を担っており、授業で必要な実験器具を準備したり実験方法などを先生にアドバイスしたりしている。またこれらの主な活動に加え、学校にある実験器具を利用して実験動画の製作を行っている。この活動は私の前任者が始めたもので、実験器具がない他の中学校で、生徒がせめてビデオで実験を見られることを意図したものだ。
私がこの活動を引き継ぐことにした理由は二つ。一つ目は授業見学の際、先生が実験を始めると身を乗りだして見ようとする生徒たちの様子を目にして、実験は生徒にとって興味のあるものなのだと実感したこと。もう一つは、同僚の先生や他校の先生の話を聞く中で、実験は生徒の理解を助けるため必要だ、実験をしたいが器具がないとの訴えが多くあったことだ。それで実験動画は、生徒にとっては説明ばかりの理科授業の刺激に、先生にとっては補助教材になるのではと考えたのだった。

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動画製作は、同僚の先生達に協力を依頼することから始めた。先生達は前任者の動画を評価はしていたが、製作には携わっていなかった。私は毎日教壇に立っている先生たちの意見を取り入れた動画にしたいと考えていた。しかし、空き時間も授業プリントや試験の採点に追われる先生にまとまった時間を作ってもらうことは難しい。試行錯誤しながら自分の中でルールを作り、少しずつでも協働での製作を進めていった。まず、一人で試作動画をつくる。ただし、ひとりでは撮影が難しい場合は先生に協力を依頼する。この時、先生の負担にならないよう、段取りを決め短時間で終わるように工夫した。次に、できた試作動画を先生達に視聴してもらい、追加・修正する。動画の時間は長くても3分程なので先生を捕まえやすい。先生達からは、順番を入れ替えたほうが生徒は理解しやすい、こういった映像が必要だなど、いつも教えているからこそ出てくる意見を多くもらえている。そして、現在までに14個の動画が完成した。

動画製作の一方で、普及方法の模索も行った。教育指導主事に協力を依頼し、ジブチ市内の中学校の理科教員に対して動画を紹介する機会を設けたり、指導主事の学校訪問に同行して動画CDを配布したりした。しかし、先生に会える数には限りがあり、ジブチ国内に広めるためには他の方法が必要であった。そんなある日ある先生から、動画投稿サイトYouTubeに動画を投稿しようと提案があった。確かにジブチの人は日常的にYouTubeを利用し、よく動画をダウンロードしている。先生達に投稿ページの名前を伝えさえすれば、実験動画をダウンロードして教室で活用できるはずだ。早速、同僚とページを作成し出来上がっている動画を投稿した。

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実際に動画を活用している授業は数例しか見学できていないが、それまで話を聞いていなかった生徒達が、動画が始まると映像を見つめる様子がみられた。はたして彼らが授業内容を理解したかは未確認だが、実験の映像が少しでも彼らの科学的好奇心を刺激できていたらと願う。動画閲覧者数もまだ少なく、ジブチでの実験動画の一般活用までの道はまだまだ長い。この動画が多くの学校で利用され、ジブチの子供たちが理科に関心を持つきっかけになることを願いながら、残り任期の活動に専心している。