活動から得たもの

2018年11月8日

藤井そよか(2016年度3次隊・コミュニティ開発)

近年、難民というテーマは世界中のメディアが取り上げ、21世紀の国際社会における重要課題の1つとなっている。連日の報道に明るい話題は数少なく、メディアにより我々が抱く「難民」というイメージは概して暗い。私は世間が消極的に捉えられている「難民」に最前線で関わっている。

世界で最も平均気温が高い国として知られるジブチ共和国にも難民は存在する。過酷な自然環境下に約2万7千もの人々が暮らしており、主に隣国のソマリア、エリトリア、エチオピア、イエメンなどから亡命者又は国外避難民としてジブチ国内で生活している。小さな国ではあるが、難民の居住地は4か所に分かれており、その内のアリアデ難民キャンプには約1万6千人が集まっている。私はその難民キャンプと首都、ジブチ市の2か所で難民女性を対象に技術支援と収入向上の機会を提供している。

活動実施前は、難民に対して悲観的なイメージを抱いていた。難民キャンプはインフラや社会的サービスが施されておらず、皆が劣悪な環境に嘆いていると想像していたが、その先入観は自身の活動を通して見事に崩れ去った。

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アリアデ難民キャンプは既に20年以上も前から存在する歴史ある場所なため、住人自身の努力やドナーの支援により病院、学校、青少年の遊び場、商店、レストラン、職業訓練室などが整備されている。電気は一定期間利用でき、水は井戸や商店で得られる。若者はスマートフォンを片手に最新のアプリケーションを駆使できるため、難民キャンプ外の世界と交流が可能である。この事情に関しては、驚かされるだけではなく、情報通信技術の利用次第で閉鎖的な環境を簡単に変える事ができる、その面白さに気付いた。

しかしながら、難民キャンプ内にも貧富の差が生じている。難民といえども貧困レベルは様々で、例えば、祖国で十分な教育や職を手にしていた人々は、技能を活かして難民キャンプ内又は首都で給料を稼いでいる。また別国に住む家族からの仕送りで生活できる家庭もある。その一方で、シングルマザーや過去に働いた経験や義務教育を受けずに育った者は不安定な支援物資に頼えざる得ない状況であり、さらなる貧困や孤独に苛まれて、ストレスにより育児放棄や危険な心の病気に陥っている。

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そんな過酷な環境下でも将来への希望も見ることができる。例えば私が関わる職業訓練では、20代前半から60代までの女性77名(内アリアデ難民キャンプ65名、首都12名)がより良い暮らしを求め、一から手芸技術を学びつつ商品の製作に励んでいる。彼女たちの多くは、祖国で十分な教育を受けずにジブチに来たため、読み書きと計算ができない。仕事をする上で当たり前である商品数やお金を計算すること、数字や名前を用紙に記入することがとても難しい。その点、長年に渡り多くの青年海外協力隊が指導にあたり、今ではアルファベットが書けるようになり、自ら出納帳を作成する女性も生まれた。日々の活動の中で女性たちの成長が目に見えるようになった。事実、彼女らを指導するための環境づくりには時間と労力が必要だが、「学びたい」、「家族のために働きたい」といった彼女らの意欲は相当なもので、最終的には収入を得る機会を得るまでに至った

難民に関する状況は日々変化している。そして私の活動も安定している訳ではない。突然、第三国や祖国に帰る人、支援の削減で職業訓練を諦める人など、人と支援の動きが変わる厳しい環境での活動ではあるが、だからこそ自分の中に新たな目標も生まれた。例として、職業訓練で働く女性たちの子ども達のことを話そう。彼らは小さい頃から親の立場を観察し、自分たちの環境を理解しようとしているようだ。そのため将来家族のために稼ぐのに、役に立ちそうな技術をいち早く習得しようと努力し、人一番に勉学に励もうとする子を見る。学習環境が良いとは言いえないが、誰かのために必死に挑む彼らの姿は私の気持ちを駆り立てる。商品開発、販路の拡大、識字率向上、ミシンの使い方指導など様々な支援方法を取り入れながら次から次へと目標を立て活動してきた。そして目標が達成される度に、喜びと同時に彼女たちのために何ができるだろうかと考えることが楽しくなった。

残念ながら私の活動には期限がある。しかしながら、活動が終わっても「難民」に関わることは確かである。難民というものは短期間で解決する問題ではない。報道の通り、難民を取り巻く悲惨な環境や彼らと接する現地人の対応の仕方の問題なども確かにある。ただし、消極的に捉えるのではなく、なぜ複雑な問題が起きるのか、事実どの様な状況があるのか、包括的に考えて学ぶことが必要である。私は日本人にとって馴染みが薄い「難民」に関わる者として、活動を通して多くの人に事実を伝えると共に、今後の人生においても関わる事ができるよう活動最後まで課題に向き合っていきたい。