今月のオススメ図書

今月は、新着図書から2冊をご紹介します。

『中村哲 思索と行動 「ペシャワール会報」現地活動報告集成 [上] 1983~2001』  中村哲 著

干ばつと戦乱で荒廃したアフガニスタンやパキスタンの無医村において長年にわたり人道支援に尽力し、2019年12月、現地で凶弾に倒れた中村哲医師。医療や灌漑事業によって多くの人々の命と生活をつないだ中村医師は、どのような思いを胸に活動を続けていたのでしょうか。本書は、中村医師の活動を支える目的で1983年に発足し、その志と事業を継ぐ国際NGO「ペシャワール会」の会報に生前中村医師が綴った活動報告をまとめたもの。上巻には、パキスタン北西辺境州ペシャワールでハンセン病患者の治療にあたった最初期から、医療支援にとどまらず、大干ばつに見舞われるアフガニスタン国内の水源確保事業に乗り出した2000年、米国同時多発テロが起きた2001年までの報告が収められています。現地の人々と同じ目線で共に希望を分かち合った中村医師が考え、そして生涯をかけて実践した、真に「実のある」支援とは。大きな気づきをもたらしてくれる深い思索と行動の記録です。

『捨てない未来 キッチンから、ゆるく、おいしく、フードロスを打ち返す』  枝元なほみ 著

世界では、貧困や自然災害、紛争などにより飢えに苦しむ人が大勢いる一方で、食べ物が大量に廃棄されているという深刻な現実があり、SDGs(持続可能な開発目標)でも取り上げられる問題となっています。大量生産・大量消費・大量廃棄。それを「豊かさ」とするような価値観では「未来の人が受け継ぐべきものを先に食べ散らかしてしまうことになるんじゃないか」。そう危惧するのは、農業生産者のサポートや「フードロス×飢餓ゼロ」運動に取り組む料理研究家の枝元なほみさん。本書では、枝元さんがこれまでの自身の取り組みを振り返り、また食と農の歴史を専門とする京都大学准教授藤原辰史さんとの対談を通して、改めて問題に向き合います。なかなか使いきれない食材も無駄にしない保存方法やおいしいレシピも紹介。子どもたちに残すべき地球の未来を守るために、考え方や消費行動を変えていく。未来を「捨てない」ために、今、私たちにできることを提案します。