JICA開発大学院連携プログラムを終えて:Agri-Netで分野横断的な新品種の開発に取り組む(2022年2月)

Justine Kitonyさん(以下、ジャスティンさん)は現在、ケニア農業畜産研究機構(KALRO)の主任研究員として働いています。それに先立って、JICAの食料安全保障のための農学ネットワーク(Agri-Net)を通じ、名古屋大学の修士課程で2年間作物学を学び、プログラム修了後はそのまま名古屋大学で農学の博士号を取得しました。インタビューでは、日本で過ごした経験についてお聞きしました。

JICA開発大学院連携プログラムを終えて:Agri-Netで分野横断的な新品種の開発に取り組む

氏名:Justine Kitony(ジャスティンさん)
出身国:ケニア
留学先:名古屋大学大学院生命農学研究科
研究分野/研究テーマ:植物育種学、遺伝学、農学、畜産学
JICAコース:食料安全保障のための農学ネットワーク(Agri-Net)

【画像】

JICAとの出会い

ジャスティンさんは、子どもの頃から日本への留学を夢見ていました。「当時住んでいた地元の町中をJICAの車が走るのを見ていて、JICAと日本に興味を持ったのです」。そしてケニアで働き始めて間もない頃、名古屋大学の槇原准教授と一緒に農学分野のプロジェクトに取り組む機会を得ました。このプロジェクトを通じて日本の科学者たちと交流したジャスティンさんは、世界の農業を研究するためにJICA開発大学院連携プログラムに応募することを決めました。「奨学金をもらい、ついに日本に留学するという夢を叶えることができました」。

母国ケニアを遠く離れて

ジャスティンさんは日本での時間を有意義に過ごしました。研究室で過ごす以外にも、植物遺伝学に取り組み、学生の指導に携わり、フィールド調査にも参加しました。「私のプロジェクトは、イネの個体群における新しい遺伝子をマッピングすることが中心でした。日本で所属した研究室では、遺伝子解析に理想的な新しいイネ系統をすでに作成していたので、私は、この株の新しい遺伝子の解析と同定にすぐに着手することができました」。

他大学の留学生や地元の日本人とも交流するようになったジャスティンさんは、地域のお祭りやイベントにも呼ばれるようになりました。「日本での生活は言うことなしで、まるで母国にいるような居心地の良さでした」。

【画像】

JICA開発大学院連携プログラムでの経験

JICA開発大学院連携プログラム(以下、JICA-DSP)では、近代日本の開発経験(日本の開発とODAとして他国に協力した経験など)についての授業が開講され、JICAの留学生が学ぶことができます。ジャスティンさんが履修された名古屋大学で開講されている"International Agriculture"では、農業の基礎研究で得た成果を熱帯地域における農村開発で社会実装活動に活かす能力を獲得することを目的とし、長期的には人類が環境と調和して暮らせるよう支援することを目指しています。このビジョンに鼓舞され、農業分野で新たに習得したスキルと知識を、限られた地域だけでなく、必要とされればどこでも活かしたいと考えました。

「講義を通じて、国際社会という大きな共同体の一員であることの重要性を学びました。そのような立場にあることで、世界中で人類が直面している問題の解決に貢献することができるからです」。ジャスティンさんは、私たちが直面している気候変動や飢餓などの危機のほとんどは、世界中の誰にとっても共通の課題なので、協調的な取り組みが必要だと考えています。JICA-DSPを通して、留学する間に築いた仲間たちとの強固で豊かなつながりは、ジャスティンさんにとってかけがえのないものです。日本での経験を通じて、農業生物科学分野で得たスキルがアフリカの農業の発展にも役立つ可能性があること気づいたジャスティンさんは、ケニアのKALROに戻ることを決めました。

JICAによって花開いた人生

ケニアに戻って再びKALROで働き始めたジャスティンさんは、日本政府から支援を受け、名古屋大学と共同で進めるさまざまなプロジェクトに取り組みました。

「日本では、栽培に適した稲の品種につながる新しいイネ品種の研究に取り組みました。それらの品種が、日本国内での臨床試験を経て、ケニアで承認されて市場に出回ることを期待しています」。

また、日本で学んだ試験実施適正基準は非常に優れていて、KALROでの実験手順を定めるのに役立ったと強調するジャスティンさんは、「日本人は細心の注意を払って適切な手順を決めます。それを吸収できた私は幸運でした」と話していました。「勤勉で独創的で規律性がある日本人と一緒に働いたことで、実践的なスキルを習得して専門性を高められただけでなく、人生を成功に導くための資質も身に付けることができました」。

JICA-DSPを後輩たちにも積極的にすすめたいと話すジャスティンさんは、今も日本の仲間たちと連絡を取り合っています。仲間とのコミュニケーションは、世界のそれぞれの場所で皆が直面している課題を解決するためのさまざまなアイデアに磨きをかけるのに役立っています。

【画像】