JICA Pacific-LEADSを終えて:新たな知識で防災に取り組む(2022年2月)

ソロモン諸島の環境・気候変動・災害管理・気象省(MECDM)で予報課長を務めるEdward Maruさん(以下、エドワードさん)に、沖縄の琉球大学で学んだ経験についてお聞きしました。

JICA Pacific-LEADSを終えて:新たな知識で防災に取り組む

氏名:Edward Maru
出身国:ソロモン諸島
留学先:琉球大学理工学研究科
JICAコース:太平洋島嶼国リーダー教育支援プログラム(Pacific-LEADS)(FSY 2016)

研究分野/研究テーマ:気象予報、気象学、防災、サイクロン対策

JICAとの出会い

日本に留学する前、サイクロンのリスクが高いソロモン諸島に住んでいたエドワードさんは、防災や減災には熱帯低気圧の特徴とリスクを理解することが不可欠だと考えました。

JICAの留学プログラムを知ったのはソロモン諸島で学んでいたときで、琉球大学で行われていた熱帯低気圧に関する質の高い研究に興味をそそられたと言います。そして2016年、熱帯低気圧を中心に気象学を学んで自国の防災と減災に役立てることを目指し、琉球大学理工学研究科に留学しました。掲げた研究テーマは「ソロモン諸島における熱帯低気圧の統計分析」です。

日本への留学を決めた理由

「留学先に日本を選んだのは、日本が世界有数の先進国で、技術面で卓越した成長を遂げた国だからです」。エドワードさんは、生活や仕事における日本人の勤勉さ、誠実さ、親切さ、丁寧さに感銘を受け、日本の文化や働き方を理解することで知識やスキルが大幅に向上したと言います。

余暇には沖縄の街を散策したり、食べ歩きを楽しんだというエドワードさん。留学中にサポートしてくれた学生仲間たちには特に感謝しているそうです。

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琉球大学での指導教授との出会い

「琉球大学では、熱帯低気圧の専門家である伊藤耕介教授と一緒に研究ができて非常に幸運でした。そのおかげで、学会に出席したり、気象庁(JMA)でインターンをしたりと、高度な技術を気象予報にどう活用するのかを知る貴重な機会を得ることができました」。JICAの"太平洋島嶼国リーダー教育支援プログラム(Pacific-LEADS:Pacific Leaders'Educational Assistance for Development of State)"を通じて、JICAとアジアシード(アジア科学教育経済発展機構)が主催する合同プログラムに参加するために、東京を訪れる機会も何度かあったというエドワードさんは、伊藤教授と一緒にワークショップや学会に出席できたことで、より充実した経験ができたと話していました。

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学んだことを母国ソロモンで活かす

「Pacific-LEADSプログラムでの経験は、MECDM予報課長としての今の仕事に非常に役に立っています。ソロモン諸島に戻り、日本で習得したスキルを気象予報に応用してみて、仕事の質が向上したことを実感しました」。

伊藤教授の東北大学出張に同行したときは、熱帯低気圧に取り組む研究者らと知り合って意見交換をしたそうです。

「伊藤教授との2年間の研究のハイライトと言える成果は、高解像度天気予報システムである『Solomon Islands Meteorological Services Numerical Weather Prediction(ソロモン諸島気象数値予報)』の開発です。2020年8月から運用を開始し、降水量、風向、風速の3日間予報を行なっています」。

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JICAでの留学を考えている方へ

エドワードさんは、国の発展と産業の成長を目の当たりにできる日本への留学を強くすすめています。「日本への留学は、国の発展に伴う課題解決に重要な役割を果たす若いリーダーを育成するための絶好の機会だと思います」。

日本の豊かな文化や生活習慣、日本人の性質を直接見て学び、そこから得たものを母国に持ち帰るチャンスを逃さないでほしいと願うエドワードさんは、「Pacific-LEADSプログラムは現在、SDGsグローバルリーダープログラムという形で、各国の参加者の中からハイレベルな人材を育成する貴重な機会となっています」と話し、参加者たちにはプログラム修了後もつながりを維持して日本と自国の架け橋になってほしいと強調していました。

JICAとともにある人生

エドワードさんは、EメールやFacebookで今も同窓生や教授と連絡を取り続け、アイデアや情報を交換しています。日本で築いたネットワークは、その仕事人生に欠かせないものとなっています。