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国際女性デー特集:JICA-DSPを通じて交通技術を学ぶ、STEM分野の研究者として

2023年3月7日

JICA留学生のプロフィール

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氏名:Jaya Varshini Kala
出身国:インド
留学先:東京大学大学院工学系研究科
JICAコース:インド工科大学ハイデラバード校日印産学研究ネットワーク構築支援プロジェクト(FRIENDSHIP)
留学期間:2021年10月~2024年9月
研究分野/研究テーマ:交通工学

JICA開発大学院連携プログラム(JICA-DSP)では、開発途上国の未来と発展を支えるリーダーの人材育成を通じ、女性のエンパワーメントにも貢献しております。Jaya Varshini Kala さんは現在、東京大学大学院工学系研究科で学んでおり、ゆくゆくは交通分野で博士号を取得して研究者としてキャリアを積んでいきたいと考えています。目指しているのは、交通事故分析による高速道路の品質管理に関する研究を通じて、実社会の問題解決に貢献することです。

JICA-DSPの留学コースを通じて、修士課程を修了し、更には博士課程を修めようとするVarshiniさんに理系分野(STEM:Science, Technology, Engineering and Mathematics)の女性のキャリアについて伺いました。

STEM分野のインド人女性として

Varshiniさんもまた、インドで高等教育を修めようと奮闘している多くの女性たちと同様の状況を経験してきました。インドでは社会的にも文化的にも差別的な雰囲気が残っているため、高等教育のはしごを登るにつれ、女性の中退率が上昇します。インドでの大学時代、学部の同学年では、女子学生が240人中26人という環境で彼女は過ごしました。ただ、女性の高等教育への参加と学業の継続を促すために政府が始めた、女性枠の確保や奨学金といった施策には期待していると言います。

世界銀行の報告書(2017)(注1)(注2)によると、インドの雇用市場では、働いている、または、積極的に仕事を探している15歳以上の女性は、3分の1未満(27%)です。Varshini さんは、「男子は一家の財産。女子は誰かの所有物(原文:A boy is a family's fortune. A girl is someone else's property.)」という、ヒンディー語のやや時代遅れの有名なことわざを引用しました。この言葉の根底には、インドで依然として広く行き渡っている共通認識があります。つまり、将来的に家計を支えることを期待される男の子の教育には積極的に投資するものの、女の子はいずれ結婚して家事を担うことを期待されるため、男の子と同じ扱いはしないということです。

キャリアの土台を築いた家族の励ましと支え

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3人姉妹の末っ子として育ったVarshiniさんは、自分の家ではそのような差別はなかったと記憶しており、それはおそらく、男の兄弟がいなかったためだろうと考えています。無事に高等学校を修了したVarshiniさんは、名門のインド工科大学ハイデラバード校で土木工学を専攻することを決めました。

この道に進んだことには、祖父が土木技師だったことが関係しています。Varshiniさんの祖父は、土地を調査・測量するための機器や、さまざまな形状を把握するための複雑な計測機器など、仕事で使う道具を家に持ち帰っていました。そのため、ごく幼い頃から、建設と交通の技術に興味を持つようになりました。

日本と留学生をつなぐ存在、JICA

Varshiniさんは、自身の進路とキャリアを切り開く上で、JICAは重要な存在だったと振り返っています。各種申請や入学手続きのほか、日本の大学や教授とのコミュニケーションの円滑化などで、来日前からサポートを受けられたことが強く印象に残っていると言います。2019年にJICA留学生として来日し、修士課程に進んでからも、手厚いサポートは続きました。「JICAはインド人留学生と日本との懸け橋になってくれています」と語るVarshiniさんは、JICAがなければキャリアアップのために日本に来ることはできなかっただろうと考えています。やがてCOVID-19によるロックダウンが始まり、すでに東京大学での交通分野の修士課程の研究は修了していましたが、インドに戻ることができなくなりました。そんなとき、指導教官の大口教授とJICAから博士課程への進学の機会が与えられたことは、Varshiniさんにとって思いがけないチャンスとなりました。

JICAは、留学生が日本で活動を開始した後も、キャリアや生活面、さらには健康に関する問題まで、本人と密に連絡を取り合います。そんなJICAをVarshiniさんは、日本における「保護者」と表現しています。

JICA-DSPが支えたキャリアと今後の展望

JICA-DSP を通じて多くの留学生が最先端の施設や研究インフラに触れ、母国でキャリアアップを遂げています。Varshiniさんは、JICAが留学生に日本の生活、文化、専門家ネットワークを紹介する取り組みを高く評価しています。紹介される活動は、日本の発展の歴史に関する勉強会や、禅ワークショップなどの文化イベントなど、多岐にわたります。Local Program(注3)では学生向けの各種ツアーが企画され、東京の歴史的建造物やモニュメントのみならず、地方の自然景観や奇観を訪れる機会が設けられています。

Varshiniさんは、こうした経験が、留学生にグローバルな考え方を身に付けさせ、分野や領域を超えたコラボレーションを促す助けになっていると感じています。とくにSTEM分野の女性にとって、友好な関係を築き、充実したキャリアを形成するために重要な機会だと捉えています。

東京大学は、広範な国際ネットワークを駆使して、世界中の研究者との共同研究を支援しています。Varshiniさんは、修士課程で清華大学THU-LEAD Labとの共同研究に参加しました。良きメンターとして大学での生活を支え、研究テーマに関する的確な助言を与えてくれた指導教授に感謝していると話すVarshiniさんは、将来はインドで研究開発を手掛ける機関に就職したいと考えています。

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