日本で再び学びたい、コロナ禍での留学 -広島大学JICA留学生へのインタビュー-(2020年11月)

南スーダン出身のカミス・ボル・アヤク・アグアルさんと、ガーナ出身のアドルフ・クワゾ・ザンペさんから、JICA開発大学院連携プログラム(JICA-DSP)に参加したきっかけや、現在広島大学で学んでいることについて話を聞きました。

南スーダンから、二度目の広島へ

氏名:カミス・ボル・アヤク・アグアルさん(Khamis Bol Ajak Aguar)
出身国:南スーダン
留学先:広島大学大学院国際協力研究科
JICAコース:SDGsグローバルリーダー(2020年度)

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日本留学のきっかけ

カミスさんは、南スーダンの国立ジュバ大学で国際コミュニケーションとジャーナリズムの学位を取得しました。卒業後は、大学の教員、ラジオ局のアナウンサー、英語からアラビア語への翻訳者、ジャーナリストなどさまざまな職業に携わってきました。

日本を留学先に選んだきっかけは、JICAの訪日研修の経験からでした。カミスさんは広島市に1週間滞在し、研修の手法や、人々のおもてなしやなど、あらゆることに衝撃を受けたといいます。「このような環境で留学したいと思い、帰国してからJICA-DSPへの応募を決めました。今の指導教員の掛江准教授が、修士課程に入ることを勧めてくれました」。

広島大学での学び

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カミスさんは、広島大学の学習環境は素晴らしく、掛江准教授は国連での経験もあるので、多くのことを学ぶことができるといいます。「私は、世界で一番新しい国から来ました。南スーダンは、まだまだ発展の途上にあります。紛争解決、紛争予防、 国際法、平和構築を学ぶことは、国の発展に貢献する上で非常に有意義です」。

コロナ禍での留学、オンライン教育

新型コロナ・ウイルス感染症に関し、日本での感染状況はある程度コントロールされていたとはいえ、コロナ禍での留学について、カミスさんは当初不安だったといいます。しかし広島に着いてからは、大学が講じている感染の予防策やオンライン授業の体制を知り、不安はまもなく解消されていったそうです。「はじめはオンライン授業への移行にも戸惑いはありました。しかし大学は、オンライン化の体制を最優先で整え、学生のスケジュールに変更が出ないようにするなど、利便性に配慮した運営がなされているので安心しています」。

将来の展望

カミスさんは帰国後のプランについてこう語ります。「広島や日本で学んだことを母国の若い人々に伝え、学習環境を整えていきたいです。多くの人々には、留学の機会がありません。しかし若者たちには計り知れない可能性があります。私は若者と積極的に関わり、社会に変化を起こすように働きかけていきたいです」。

日本での学びを、ガーナの政策に活かしたい

氏名:アドルフ・クワゾ・ザンペさん(Adolf Kwadzo Dzampe)
出身国:ガーナ
留学先:広島大学大学院人間社会科学研究科博士課程
JICAコース:人材育成奨学計画(JDS)(2020年度)

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日本留学のきっかけ

アドルフさんは、ガーナで国民健康保険制度の管理業務に従事しています。「国民健康保険局に13年勤務しています。担当業務は、病院などサービス提供者からの請求の監視・評価・審査です」。

日本に留学したきっかけについて、次のように話しています。「日本には、2014~2016年に国際開発分野の修士課程で留学していました。そのときの印象が非常に良かったので、博士課程の留学先に再び日本を選びました」。

コロナ禍の中で留学、オンライン授業

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新型コロナ・ウイルス感染症の影響で、海外からの入国が難しくなっていますが、アドルフさんが日本へ行くことを決めたのは、それだけの価値があると思ったからだといいます。「日本はとても進んだ国です。前回の留学で、やるべきは、何があってもやり遂げる、という姿勢を日本人から学びました」。

オンライン教育への移行は多くの人に負担を強いていますが、アドルフさんは前向きです。「オンライン教育には難しい部分もありますが、大学からの手厚いサポートがあるのでとても助かっています」。

広島大学での学び、JICA-DSPの特徴

広島大学のJICA-DSPでは、ユニークな科目が数多く用意されています。中でも、日本の近代化の経験を学ぶ科目(JICA-DSPで特設)にアドルフさんは関心があります。「必修科目の“Japanese Experience of Social Development-Economy, Infrastructure, and Peace”や、“Japanese Experience of Human Development-Culture, Education, and Health”を楽しみにしています。日本の事例を通して、社会の発展や伝統とのバランスについて考えていきたいです」。

将来への思い

アドルフさんは、今後2、3年かけて、日本の健康保険制度について研究し、それらをガーナにおける保険制度の改善に役立てたいといいます。将来は、社会保険制度を含む公的サービスの在り方について、医療経済学の観点から、ガーナにおける政策の決定に貢献することを目指しています。