JICA留学生エッセイ(マレーシア出身 Ms. Aqmar、北海道大学院工学研究院より博士号取得)

北海道での私の大学院生活

氏名:Siti Hidayatul Aqmar Zakariaさん
出身国:マレーシア
留学先:北海道大学 大学院工学研究院 博士課程
JICAコース:イノベーティブアジア

【画像】

私は、北海道大学大学院工学研究院にて博士号を取得し、2021年6月から東京のコンサルティング会社でアソシエイトコンサルタントとして働き始めます。2017年初旬、私は運良くJICAイノベーティブアジアの奨学金を得ることができ、北海道大学大学院工学研究院に出願をしました。厳しい選考の結果JICAの奨学生として同研院に入学を許可されたアジア諸国からの留学生は3名のみでしたが、私はその1人になることができました。晴れて2017年10月に同大学院で博士課程の学生となった私は、ウィンターワンダーランドとして有名な北海道に初めて足を踏み入れることになりました。北海道での経験を振り返ると、やはり冬の厳しい寒さが鮮明に思い出されます。北海道は毎年冬にたくさんの雪が降り、気温は氷点下にまで下がります。私は北海道での最初の冬は、ほとんどの時間を屋内で過ごし、ホットコーヒーや温かい紅茶を飲みながら雪景色を楽しみました。

研究生活

私の博士課程における研究テーマは、金属3Dプリンターとそのコーティング技術の、主に骨移植の補綴治療用スコープへの適用に関するものでした。2018年初旬に、新戸部カレッジ(北海道大学の特別教育プログラム)の奨学金を取得することができた私は、北海道大学の研究室と自国の出身大学であるマラヤ大学のCentre of Advanced Manufacturing & Material Processingとの共同研究を開始しました。北海道大学の東藤 正浩教授とマラヤ大学のHamdi Shukor教授の監修のもと、選択的レーザー溶融(SLM)とプラズマ電解酸化(PEO)として知られる金属3Dプリンターで研究を進めました。SLMとPEOを組み合わせることにより、私は、骨に含まれる生物活性のある天然化合物であるヒドロキシアパタイトで覆われた多孔質チタンの小さなプロトタイプを開発しました。この研究の目標は、インプラント周囲の骨の内部成長を促進し、最終的にはインプラントの失敗のリスクを減らすことです。同プロトタイプはマレーシアで開発され、サンプル分析は高度な分析機器を持つ北海道大学で実施されました。北海道大学では、様々な高度な分析機器の操作に関するトレーニングを他の3人の日本人ラボメンバーと共に受けることができとても良い機会でした。また、博士課程の研究活動の一環として、韓国、台湾、そして日本国内で開催された計4つの国際会議に参加し、研究発表を行いました。国際会議では世界中からの同じ分野の専門家や仲間に出会うことができ、他の研究プロジェクトについても学ぶことができました。私の研究成果をより貢献的なものにするために論文も発表しましたが、科学技術を通じて社会に影響を与える方法について、私はこれからも学び続けたいと思っています。

研究室外での生活

新渡戸カレッジでTeaching Assistantを2年間に渡り務めた私は、自身のスキルを高め、ポテンシャルを見極め、また様々な研究テーマや文化的背景を持つ人々と働き、互いに多くのことを教え合いました。その経験は、コンサルティング会社で3ヶ月間インターンシップをしたときにもとても役に立ちました。母国とは異なる社会で生活をするに当たっては、その社会の基本的な文化を学び、理解することが不可欠です。それらを理解することで、その社会に自身が適応することができると考えています。私は、大学やJICA北海道が主催する茶道教室やふれあい広場などの文化活動に参加しました。ふれあい広場は、JICA北海道が主催するイベントで、札幌市に住む外国人が住民に自国の料理を振舞い、自国にまつわるパフォーマンスを披露します。さらには、友人と共に北海道内を旅しました。北海道は素晴らしくまた手つかずの自然に恵まれており、いつも私たちを楽しませてくれました。また、北海道の美しさは、季節ごとに思いがけない形で現れます。私はそのなかでも、涼しくて気持ちの良い天気のもと好きなだけ野外活動ができる北海道の夏が好きでした。

【画像】

私の将来

私は、ビジネス市場において、技術がどのように商業的に用いられるかを勉強、経験したく、今後5年間は産業界に進み経験を積むことを決めました。自身の北海道大学等での研究から得た経験と産業界で得られる経験の両方を活かして、科学と社会に影響を与え、将来は産業界と学術界との間のギャップを埋めていきたいと思っています。

最後になりましたが、JICAイノベーティブアジアの留学生としての3年6か月間、奨学金と素晴らしい機会を頂いたJICAに心からの感謝の意を表したいと思います。

Aqmar Zakaria
Shinagawa, Tokyo, 23rd of April 2021