政策研究大学院大学で学ぶ、日本の防災経験を母国の発展に生かす(2021年7月)

スリランカ出身のヘマカンス・セルバラジャさん、バングラデシュ出身のムド・マジャドゥール・ラハマンさん、ベトナム出身のグエン・ヴァン・ホアンさんにJICA開発大学院連携プログラム(JICA-DSP)の防災分野のコースでの体験についてお聞きしました。

日本の防災経験をスリランカの防災技術の発展に生かす

氏名:ヘマカンス・セルバラジャ(Mr. Hemakanth Selvarajah)
出身国:スリランカ
所属先:灌漑・水資源管理省
留学先:政策研究大学院大学(GRIPS)-水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)防災学プログラム
JICAコース:仙台防災枠組に貢献する防災中核人材育成(博士課程)(2018年度)

スリランカ出身のヘマカンス・セルバラジャさんは、JICAのJDS(人材育成奨学計画)プログラムを通じて東京大学で工学修士号を取得した後、JICA開発大学院連携プログラム(JICA-DSP)の防災分野のコース(仙台防災枠組に貢献する防災中核人材育成コース)に応募し、再び来日して政策研究大学院大学(GRIPS)の博士課程に進みました。

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日本へ

灌漑技師のヘマカンスさんは、スリランカでは灌漑・水資源管理省で働いていました。日本とJICA-DSPに興味を持った理由を尋ねると、率直な答えが返ってきました。「子どもの頃から日本の技術に興味があったので、いつか日本に行きたいとずっと思っていました」。

JICA-DSPに参加して

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JICA-DSPに応募した理由を尋ねると、「日本は防災分野に秀でた国なので、JICA-DSPの防災分野のコースを受けたいと考えました。灌漑技師として建設や管理の技術的側面は理解していたものの、防災については素人だったので、知識を深めたいと思いました。プログラムに応募する際は、研究計画を書くために防災の基本を学ぶことに苦労したのです。」と打ち明けてくれました。
しかし、実際に日本を訪れると、その戸惑いも消えていったようです。「ここでは大変良い経験ができています。JICAの素晴らしいおもてなしに非常に満足しています」。
JICAは、留学生のために新型コロナウイルスワクチンの接種プログラムを手配しています。ヘマカンス さんは、「JICAは、留学生の心身の健康を確保するために、本当に行き届いた配慮をしてくれました」と嬉しそうに語っていました。

防災コースはどのように役立ちましたか?

ヘマカンスさんによると、スリランカでは最新技術が導入されておらず、防災のための適切なリソースが不足しているようです。「残念ながら、データ管理がずさんで研究実績も不十分なので、過去の経験から学ぶことができていません。一方、日本は防災能力の向上に積極的に取り組んでいるので、発展途上国が学ぶべきことが多くあります」。
途上国の現状を知るヘマカンスさんが、防災分野の国際的方針である仙台防災枠組(2015-2030)について、次のように説明してくれました。「効率的な防災について議論するときは、仙台防災枠組のことが頭に浮かびます。この枠組で学んだアプローチを導入すれば、災害による社会経済的側面と環境的側面への損失を大幅に削減できる可能性があるからです。スリランカを含む発展途上国には、このような体系化されたフレームワークが必要なのです」。
ヘマカンスさんは、JICAの防災分野のコースで学んだことをスリランカの防災スキルに応用することで、科学技術面での差を埋めたいと考えています。「災害リスク関連の調査を行い、その結果に応じて、洪水や干ばつの管理に役立つダムの運用などの適応戦略を策定したいと思います」。

未来への想い

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ヘマカンスさんはこの数年間、気候変動、季節予報、短期予報などの基本を集中的に学んできました。将来はこれらの分野の知識をさらに深めたいと考えています。「本の専門家と協力しながら研究を進め、スリランカの防災スキルを高めたいと思います。それが日本の防災スキルのさらなる向上にもつながれば幸いです」。

日本の経験をバングラデシュの防災に活かす

氏名:ムド・マジャドゥール・ラハマン(Mr. Md Majadur Rahman)
出身国:バングラデシュ
所属先:バングラデシュ水資源開発庁
留学先:政策研究大学院大学(GRIPS)-水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)防災学プログラム
JICAコース:仙台防災枠組に貢献する防災中核人材育成(博士課程)(2020年度)

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JICA-DSP防災コースへの応募動機

バングラデシュ出身のラハマンさんは、同国最大の防災組織であるバングラデシュ水資源開発庁に勤務しています。2018年から、政策研究大学院大学(GRIPS)でJICAが提供する防災分野のコース「仙台防災枠組に貢献する防災中核人材育成」に参加しています。「私は仕事上、さまざまな防災・減災戦略について常に最新情報を入手する必要があるので、このコースは自分にぴったりでした。GRIPSでは素晴らしい経験ができ、修士号も取得しました」。

JICAと日本を選んだ理由

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ラハマンさんはなぜ日本に来ようと思ったのでしょうか。「日本には洪水や津波などの水害をはじめとする災害対策に長い歴史があり、私のように防災分野を専門とするものにとって重要な場所です。母国バングラデシュも、水害に対して脆弱です。JICAのこのコースは、日本が過去の災害対応で学んだことを母国で活かす機会を作ってくれました」。

JICA-DSPコースで学んだこと

防災コースで学んだ中でとくに印象に残っているものは何でしょうか。ラハマンさんは、仕事に役立つコースだったと述べた上で、次のように説明しました。「バングラデシュでは洪水が頻繁に起き、大きな被害と人命の損失をもたらしています。このコースでは、母国での水害の影響を減らすために、適切な計画と政策立案がいかに大切かを理解することができました」。
また、仙台防災枠組(2015-2030)からも多くの視点を得て専門知識を深められたので、母国の防災に役立てられそうだと語っています。
ラハマンさんの最終的な目標は、母国で防災に関する政策立案に影響を与えることです。JICAの防災コースは、目指す方向への後押しとなっています。

JICA-DSPでの学びを災害対応の向上につなげる

氏名:グエン・ヴァン・ホアン(Mr. Nguyen Van Hoang)
出身国:ベトナム
所属先:ベトナム防災総局災害管理政策技術センター
留学先:政策研究大学院大学(GRIPS)-水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)防災学プログラム
JICAコース:仙台防災枠組に貢献する防災中核人材育成(博士課程)(2018年度)

ベトナム出身のグエン・ヴァン・ホアンさんに、JICA開発大学院連携プログラム(JICA-DSP)の防災分野のコースでの体験についてお聞きしました。

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JICAの防災関連の長期プログラムを選んだ理由

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ホアンさんは、ベトナムでは防災総局災害管理政策技術センターの水害部門で技術者として従事しています。現在は政策研究大学院大学(GRIPS)でJICA-DSPの防災分野のコース(仙台防災枠組に貢献する防災中核人材育成コース)に参加しており、その応募動機を次のように語っています。「日本が水害をはじめとする自然災害に効果的に対処してきた歴史は、誰もが知るところです。同じような災害が起こる可能性のある発展途上国に、日本の知識や経験を応用して備えるべきだと考え、日本留学を希望しました」。
ホアンさんはこのコースについて、「洪水被害に実際に対応して影響を軽減するためのスキル向上に役立ちますし、地域レベルでも国レベルでも、社会経済面と環境面の幸福度向上に貢献する内容です」と話しています。

日本に温かく迎え入れられて

日本での滞在について尋ねると、言葉があふれ出てきます。
「新しい環境や文化に慣れるのは大変なことです。学ぶべきことがたくさんありました。私にとって、日本での滞在やその背景にある文化は目新しいことばかりだったからです。JICAのおかげでコースにすぐに馴染むことができ、集中できるようになりました」。

仙台防災枠組(2015-2030)について

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ホアンさんは防災分野に関する国際的枠組である「仙台防災枠組」について、災害リスクへの理解、災害リスク・ガバナンスの強化、強靭性のための防災投資、災害への備えの強化とBuild Back Better(より良い復興)、という4つの優先事項を扱っていると説明します。「私はこのコースを通じて、災害による被害を軽減するための体系的なアプローチを学んでいます」。

日本での学びを母国に持ち帰る

ホアンさんはこの防災分野のコースについて、防災のための協力体制とスキルを強化し、強力な基盤を構築する上で有意義だと感じています。
このコースで学ぶ経験について、次のように語ります。「このコースのおかげで防災に関連する知識が増え、スキルが高まりした。洪水などによる災害リスクの軽減に対する理解を深めるために、ベトナムの同僚たちにもこのコースを勧めたいと思います」。