JICA留学生エッセイ(タイ出身 Mr. Sukapat、早稲田大学での研究活動)

わたしの早稲田大学での研究活動

氏名:Sukapat Tiempathomさん
出身国:タイ
所属先:運輸交通政策計画局
留学先:早稲田大学 創造理工研究科 修士課程
JICAコース:持続可能な都市開発

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タイの首都バンコクでは首都一極集中による交通渋滞、大気汚染が問題視されています。日本は、公共交通指向型開発(TOD:Transit-Oriented Development)において成功した国の一つであり、私は、日本における都市交通計画、特にTODについて学び、その知見を母国に生かすことを目的として、JICA開発大学院連携プログラムの留学コース「持続可能な都市開発」を通じて、2020年10月に早稲田大学創造理工研究科の修士課程に入学しました。研究室に所属してまず驚いたことは、先生方の手厚い学習フォローです。学会への参加勧奨や研究に関するミーティングが毎週実施されるなど、タイではそこまで積極的に学生指導が行われないため、非常に有難く思っております。先生方のご指導のおかげで研究も順調に進んでおり、2021年8月に実施された国際会議では、Best Paper Presentation Awardを受賞することができました。

アジア太平洋計画協会2021の国際会議(ICAPPS 2021)での発表とBest Paper Presentation Awardの受賞

2021年8月21、22日に湾台南市の成功大学にて、アジア太平洋計画協会2021の国際会議(ICAPPS 2021)が開催され、私もオンラインでの研究発表を行う機会を得られました。この国際会議は”Technology” “Urbanity” “Smart Living”をメインテーマとして、新しい政策としてのスマートシティの多様な応用と「Smart Urbanism」の計画・実践、そして私たちの都市生活に及ぼす影響を再考するものであり、アジア太平洋地域の様々な大学・専門機関に所属する研究者が本テーマに関して深いコミュニケーションを図ることを目的としています。私にとって学会での研究発表は初めての経験でしたが、世界中から同じ分野の専門家や研究者に出会うことができたほか、各国で同様のテーマに取り組む方との課題認識の共有ができ、学びの多い機会となりました。

大学での研究生活について

私が所属している研究室では、都市分野と交通分野の二つの軸で研究を行っており、都市分野ではスマートシティ、環境にやさしい都市、コンパクトシティ、TODといったテーマを、交通分野では自動運転、LRT(Light Rail Transitの略。快適で省エネ性に優れた新しい路面電車交通)、本源需要(交通需要の1つ。散歩や船でのクルーズ、観光地での人力車など交通すること自体を目的とする需要のこと)、交通安全といったテーマを取り扱っています。研究室には20名近くの学生がおり、そのうち留学生は私も含めて8名います。研究室では毎週火曜日に研究進捗報告のための定例ミーティングがあるほか、不定期で調査手法のセミナーが開催されることもあり、積極的に参加するようにしています。それ以外にも現場視察として渋谷の再開発地区に足を運ぶこともあります。私は普段、勉強をするときは、研究室にパソコンを持っていき、他の学生とも交流を図っています。
私が研究しているテーマは「バンコクにおけるTODと乗継駅へのアクセス」です。タイにおいては公共交通利用率が30%にも満たず、60%以上が自家用車やバイクを利用しています。この研究ではタイにおけるTODの現状を明らかにし、TODの阻害要因や課題を分析すること、及び日本や他国におけるTOD成功事例を参考に政策提言を行うことを目的としています。

わたしの課外活動

私の趣味は登山で、タイにいた時も多くの山に登っていました。日本で初めて登頂した山は高尾山でしたが、その次に日本一高い山である、富士山に挑戦しました。無事に山頂までたどり着き、山頂からの素晴らしい景色を一望できたことは、日本でのとても良い思い出です。趣味である登山以外にも、長期休みを利用して、日本の観光地を訪れて紅葉を楽しむなど、日本の観光・四季を堪能しています。また同じ研究室メンバー同士の交流もあり、一緒に野球をしたり、歓迎会などに参加したりしています。コロナウイルス感染症により他大学や外部機関と、対面での交流機会に恵まれなかったことは残念ですが、代わりにオンラインにて私と同じJICAの「持続可能な都市開発」コースの長期研修員同士の交流会に参加したり、能力強化研修「都市地域開発・まちづくり」コースでは私の研究内容について研修参加者と話し合ったり、積極的に外部と交流するように心がけています。最後に、私は日本食の中でもラーメンに目がなく、特に辛いラーメンがお気に入りで、早稲田大学の周りにある多くのラーメン店を巡り、日本の味覚を楽しんでいます。

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帰国後の抱負

日本における歩道や鉄道といった交通システムはとても素晴らしいと感じています。タイにおいても歩道は整備されているものの、幅が狭く、また、たまにバイクが歩道を走行していることもあります。私が2022年9月に本修士課程を卒業して、帰国した後は日本で学んだ知見を母国で存分に生かし、TODのシステム導入に尽力したいと考えています。

(注)なお本記事は、2021年12月15日(水)に早稲田大学にて、Sukapat Tiempathomさんに対して英語でインタビューした内容を日本語に起こしたものです。