I. 総論

1. 本行の環境配慮の基本的考え方:

本行の環境配慮に対する基本的考え方は、政府金融機関として、本行の出融資等の対象となるプロジェクトについてプロジェクト実施主体者による環境配慮が適切になされていることを確認することにある。
本行は、環境配慮の確認を行なった結果、当該プロジェクトの環境配慮が適切ではなく、環境に著しい影響を及ぼす恐れがあると判断される場合には、借入人等を通じて、プロジェクト実施主体者に対して環境配慮の改善を求める。さらに出融資等を行わないとの判断もありうる。
なお、本行は、出融資等の対象となるプロジェクトについて環境面での配慮が適切になされていることの確認を行なう一方で、地球温暖化ガス排出削減に貢献するプロジェクトを含む環境改善プロジェクトのための融資については、これを積極的に取り上げる方針である。

2. 環境ガイドラインの目的:

本ガイドラインは、本行が実施する環境配慮の確認のための手続きおよび方法についての指針を示したものである。
本行の役割は、我が国の輸出入若しくは海外における経済活動の促進又は国際金融秩序の安定に寄与することにある。このような役割を果たしつつ、本行が金 融機関として行いうる環境配慮の確認は、通常、借入人等を通じて提供される情報に基づいてなされるが、本行が借入人等を通じてプロジェクトへ関与しうる程 度は案件により様々である。このため、本行が行なうプロジェクトに関する環境配慮の確認の仕方は、借入人等を通じてプロジェクトへ関与しうる程度により案 件により異なる可能性がある。
本行は、本ガイドラインに示すようなスクリーニングや「環境チェックリスト」によるスコーピングの手法を適切に活用することにより、環境配慮の確認を効率的に行うことを目指している。

3. 環境配慮確認の手続き:

本行は、借入人等より提出された「スクリーニング用フォーム」に基づき、環境配慮確認の対象となるプロジェクトのスクリーニングを行い、カテゴリー分類に応じた環境配慮の確認を行う。
スクリーニングおよびモニタリングの必要性についての検討結果は、環境担当部署により確認される。また、カテゴリーA及びBに分類されたプロジェクトの中 で、環境配慮につき特に専門的な観点からの確認が必要と判断されたプロジェクトについては、環境担当部署が環境配慮の確認を行う場合がある。

4. スクリーニング:

スクリーニングは借入人等より提出されたスクリーニング用フォームに 基づいて、環境影響の大小、および本行の当該プロジェクトへの関与の大小に応じて、本行の出融資等の対象となるプロジェクトをA、B、Cの3つのカテゴ リーに分類する。カテゴリーAおよびBに属するプロジェクトはこれまでの本行の経験等に照らして環境影響が大きくなり得ると考えられるプロジェクトである。

カテゴリーA:
開発途上国で実施されるプロジェクトで、以下の特質を持つ地域(以下「Sensitive Area」という)に立地するもの。
原生林、熱帯雨林、国指定の湿地、珊瑚礁、マングローブ林、干潟、保護対象地、国立公園、国指定の海岸地域、貴重種の生息地、世界遺産、少数民族あるいは先住民族の居住地、または大規模な非自発的住民移転を引き起こす地域。
カテゴリーB:
開発途上国で実施される、本行の「環境チェックリスト」に示すセクターに該当するプロジェクト。但し、カテゴリーAまたはカテゴリーCに分類されるものを除く。
カテゴリーC:
次の(1)から(4)のいずれかに属するプロジェクト。但し、カテゴリーAに該当する場合については、原則としてカテゴリーAとして扱う。
(1)開発途上国で実施される、「環境チェックリスト」に示すセクター以外の分野のプロジェクト。
(2)開発途上国で実施される、「環境チェックリスト」に示すセクターのプロジェクトではあるが、環境への影響が通常予見されないあるいは軽微なプロジェクト(環境対策設備新設・増設プロジェクト、拡張を伴わない設備リハビリプロジェクト等)。
(3)先進国で実施される出融資等対象プロジェクト。
(4)本行の関与が小さいプロジェクトまたは規模が小さいプロジェクト(総プロジェクトコストに占める本行融資の割合が5%未満の案件、本行融資額が10百万米ドル相当円未満の案件)。

5. カテゴリー毎の環境配慮確認:

【1】融資承諾前の環境配慮確認:

カテゴリーA:
「Sensitive Area」の持つ特性に留意し、借入人等から提供される「スクリーニング用フォーム」、(英訳または和訳された)環境影響評価書(EIA)、さらに必要に応じて住民移転計画、先住民開発計画等の情報に基づき、「環境チェックリスト」を活用しつつ、「Sensitive Area」の持つ特性に関連する環境影響に対する配慮の確認を行なう。この際、原則として、現地実査を含む専門的な観点からの確認を行う。
なお、特に「環境チェックリスト」に示すセクターに属するプロジェクトについては、カテゴリーBと同様の環境配慮の確認を併せて行う。
カテゴリーB:
借入人等から提出される「スクリーニング用フォーム」に基づいて、プロジェクト所在国の環境関連の基準等が満足されていることを確認する。プロジェクト所在国の環境基準等が満足されない場合、日本の基準または国際的な基準と比較して大きく乖離している場合、または、現地基準が定められていない場合には、「環境チェックリスト」を活用しつつ、必要な情報(特にEIA)を借入人等を通じ入手し、必要に応じて現地実査を行い、環境配慮の確認を行う。
カテゴリーC:
この段階での環境配慮の確認は行わない。

【2】融資承諾後の環境配慮確認(本行のモニタリング):

借入人側が融資対象プロジェクトの運営に参画する案件については、必要に応じて、重要な環境影響項目につき、モニタリングを行なう。モニタリングに必要な 情報は、借入人側から提供される必要がある。カテゴリーAの案件は、案件ごとに必要なモニタリング項目を検討し、モニタリングを実施する。カテゴリーBの 案件は、セクターごとのモニタリングフォーム(III参照)に基づいてモニタリングを実施する。カテゴリーCの案件は、本行が必要と判断した場合のみ、モニタリングを行なう場合がある。
当該プロジェクトがモニタリングの結果、環境にかかる現地基準等を満たせない場合には、借入人を通じて、プロジェクト実施主体者に対して事態の改善を求めたり、貸出の停止等を検討する場合もある。
なお、 借入人側が融資対象プロジェクトの運営に参画する案件について、当該プロジェクトの実施にあたり、環境配慮が現地基準に照らして十分でない等の指摘が第3 者からあった場合には、その指摘を借入人に伝達する等の方法により、プロジェクト実施主体者や環境担当官庁による適切な対応を促すよう努めることとする。

6. 環境配慮の適切性を確認するための基準等:

【1】自然環境:

プロジェクトの自然環境に関する項目については、原則としてプロジェクト所在国の法律等により規定されている環境関連の基準の遵守を確認する。プロジェク ト実施国の環境関連の基準が、国際的な基準(世銀の環境ガイドラインに示されている基準等その妥当性が国際的に認知されている基準)や日本の基準から著し く乖離している場合や、プロジェクト実施国において現時点で規制が確立していない項目がある場合には、我が国の基準や国際的な基準を参照し、環境配慮の適切性の確認を行う。

【2】社会環境(特に住民の非自発的移転):

自然環境への配慮だけではなく、社会環境、特に非自発的な移転を余儀なくされる住民及び周辺住民に対して、説明が十分なされるなど、住民の同意が得られる ための適切な配慮がなされていることが必要であり、本行はこれを確認する。何らかの問題が生じた場合には、本行は、配慮の適切性について、国際的に認知されている考え方・手法を参考にしつつ確認する。