ヒューマンストーリー

ガーナの農村から−保健師隊員の活動−

−JICA ガーナ事務所インターン−
鶴田拓史

【写真】

アッパー・ウエスト州で保健師隊員として活動する宮里彩可さん

私は、2013年の1月から約3ヵ月間ガーナで、JICA(国際協力機構)のインターンとして現地の文化やJICAの広報活動を行いました。ガーナに滞在していて強く感じたのは、都市部と農村部の発展の差です。ガーナでは2010年にはじまった石油の採掘に伴う好景気で、首都アクラを初めとした沿岸部の都市では商業ビルの建設ラッシュが相次いでいますが、一方で内陸部の農村地域の開発は依然として立ち遅れている状況です。

北部ブルキナファソとの国境に近いアッパー・ウエスト州の農村では妊産婦および、乳幼児の高い死亡率の改善が進まないことが問題となっています。その原因の一つには、病院へのアクセスの難しさからマラリアや高血圧などの患者が十分な医療行為を受けられない環境があげられます。多くの人々は歩いて移動していますが、医師のいる病院は村から何十キロも離れています。村で唯一医療が受けられるのは、地域保健師と呼ばれるスタッフが1人で運営する地域保健所だけで、保健所といっても待合用の椅子と診察用の机が置かれた簡易的なものです。風邪薬の処方や、軽度の怪我の治療は可能ですが、症状の重い患者を診ることは出来ません。地域保健所では、診療のほかに妊産婦と乳幼児への母子健診や、住民を集めて家族計画などの保健教育を行うほか、スタッフが村内の家を訪ねて往診などを行っています。「地域保健所の目的は病気の治療よりもむしろ予防のためにあるんです。」と強調するのは、アッパー・ウエスト州ロウラ郡保健局で青年海外協力隊の保健師隊員として活動する宮里彩可さん。宮里さんは大学の時に隊員OBの方から協力隊についての話を聞いて以来、ずっと心のどこかに隊員になりたいという思いがあったそうです。そんな中、日本で保健師をして10年という節目の年に通勤電車の中で見た隊員募集のポスターの中の隊員の笑顔を見て、隊員への思いが再燃し、応募を決心したそうです。その後、宮里さんは、ガーナでの保健師隊員としての配属が決まり、2011年の9月から、ロウラに住んでボランティア活動を始め、現在では郡内の3つの地域保健所の活動のサポートを通して住民の健康維持に力を入れています。

私が村を訪れたのは、月に1度の母子健診の日でした。健診では、母と子どもの診察と子どもの体重測定、予防接種を行います。そこには、スタッフの傍ら、母親たちに子どもの体調の変化について尋ねたり、母子手帳への記録の記入などのサポートを行なう宮里さんの姿がありました。赴任したばかりの頃は、スタッフが記録を取ることだけに追われて、記録をもとに参加者に健康のアドバイスをするなどの記録の活用が出来ていなかったそうです。そこで彼女が心がけたのはスタッフとのコミュニケーションでした。活動ごとに、スタッフの村人への対応ぶりを確認し、活動の中で少しでも改善された点があれば誉めるなどモチベーションにも気を遣ったそうです。その成果もあって、最近ではスタッフ自ら子どもの体重の変化に気づき母親と話をしたり、予防接種の漏れがないか確認を行う姿が見られ、健診の質の向上を実感しているとのことでした。

宮里さんはあくまで、スタッフが主体となって行う活動のサポートに徹しています。ボランティアの活動期間は2年間。彼女がいなくなった後は彼らだけで活動を続けて行かなければならないからです。ガーナの農村で、病気の予防と早期発見のための地域保健活動をサポートする宮里さんのボランティア活動は2013年の9月まで続きます。彼女の活動を通した農村の人々の健康改善が期待されています。