ヒューマンストーリー

ガーナ北部Waでの青年海外協力隊員の活動

JICAガーナ事務所インターン
青木三紀

2013年8月から12月までのJICA(国際協力機構)ガーナ事務所でのインターンの一環で、ガーナ北部のWaで青年海外協力隊の活動をしている方々の活動を見学にいきました。

私がガーナでの広報インターンを希望したのは、ガーナで有効なメディア発信やPRの手法等の考察が目的で、当初青年海外協力隊に関する知識はほとんどなく、多くの協力隊員が、他に日本人もいないような町や村にガーナの人々に溶け込んで暮らし、2年の長きにわたって活動していることをこれまで知りませんでした。そのため、ガーナの首都を遠く離れた場所で協力隊員と会う機会があると、「まさかこんなところに日本人が!」と驚くことが多かったのですが、今回協力隊員が実際にどのような活動をしているのか知るために、彼らの任地を訪問することにしました。

今回訪問したWaは、ガーナ第2の都市クマシから、車で北へ7時間程のアッパーウェスト州の州都です。まず訪問したのが、プログラムオフィサーとしてNGO ProNetに配属され、活動している岡本ひかるさん(23年4次隊)です。

ProNetは、ガーナ北部で他のNGOや政府のプロジェクト実施機関として、給水事業や教育改善を始めとする幅広い分野のプロジェクトを実施していますが、せっかく多くのプロジェクト実施の実績があるのに、積極的にプロジェクトのデータや記録を残すという作業をあまりしていなかったそうです。そのため、岡本さんの赴任時には、過去のプロジェクトの詳細を当時の担当者しか知らず、プロジェクト終了後のフォローなどが難しかったり、プロジェクト概要や具体的な成果を外部向けにとりまとめることに課題がある状況でした。

プログラムオフィサーとしてProNetの事務面をサポートする岡本さんは、その状況を改善するため、配属先のプロジェクト活動とその成果をレポートや展示物に加工する習慣を身に付けることを目指しています。「まずはレポートにまとめることにより、プロジェクト活動の経験を共有することによる効果を知って欲しい。楽しいと思って欲しい。」と話す岡本さんの言葉が印象的でした。

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オフィスの入口に立つ岡本さん。プロジェクトの概要を展示しています。

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お知らせボードは、コミュニケーションだけでなく、記録を残す習慣の一環でもあります。

さまざまなプロジェクト活動内容をとりまとめることは、組織としての信頼度をあげることにもつながります。ProNetのことをあまりよく知らない国際NGOがProNetのオフィスを訪問した際に、発行したばかりの年次報告書を渡したところ、それまでの態度が一変して、2014年から正式に始まる某プロジェクトの実施機関としての採用に繋がった例もあるそうです。昨年岡本さんを中心に初めて発行した年次報告書は、継続的に作成できるように他のスタッフにトレーニングを行い、今年の年次報告書は全て岡本さん以外のProNetのスタッフが編集、製作しています。

岡本さんが現在挑戦しているのは、資料室を作ることです。資料室は、ProNetの記録を見える形で残すための図書室であるのと同時に、今後ProNetが若い開発事業者を育てていくためのトレーニングセンターの役割も果たす予定です。その資料室の意義や使い方は、他のメンバーを巻き込んで定めており、みんなで作りあげたみんなの資料室になる予定です。

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2週間後にオープンを予定している資料室。

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資料室に保管する資料に、分類を明記したラベルをつける作業中。

また、ProNetは、他の大きなNGOのプロジェクトの一部や、政府案件の実施機関としての役割を果たすだけでなく、より大きな影響力や信頼性を得るために、必要に応じてNGO間で連携して活動することもあるそうです。ガーナのNGOの活動範囲やネットワークの様子から、国内のNGOセクターがこれから成長し、ますます存在感を強めていくであろう勢いを感じました。

次に訪問したのが、視覚障がいを持つ子ども達にパソコンを教えるPCインストラクターとして、Waの盲学校 Wa Methodist School for the Blind に配属されている三浦菜津子さん(24年2次隊)です。

ヤギなどが自由に歩いている敷地内を抜けてパソコンルームに行くと、タイピングした内容を音声で読みあげたり、タイピングの練習ができるソフトが入ったパソコンが並んでいます。なかには百科辞典の入った端末もあり、大人気のその端末で熱心に調べ物をする生徒もいました。

三浦さんが赴任する前は、パソコン操作などを教えるICT(Information and Communication Technology)を担当する教員は一人きりで、授業数が少なく、パソコンに直接触れるよりも使い方に関する講義が中心だったそうです。三浦さんが赴任してからは、ICTの補講授業を行ったり、放課後にコンピューター室の開放を行うことで、生徒が実際にパソコンに触れる時間を増やすことができました。結果として、生徒が読める点字教材が増えたり、簡単なキー配置も知らなかった生徒が文章を打てるようになるなど、生徒のスキルは1年前に比べて大きく伸び、三浦さんも手ごたえを感じているそうです。

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三浦さんが放課後も開放したパソコン室。プリンターは点字印刷用です。

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点字練習ソフトが入ったパソコン。

三浦さんは、「目の前の生徒や先生の得られる「機会」を出来る限り増やして、その人の幸せの選択肢の幅をより広くしたい」と話していました。これまで、卒業生は教師や手工業に関する仕事に就くことが多かったそうですが、パソコンのキーボード操作等に習熟することで、ITを使用する職業につくという選択肢が増えます。その他にも、三浦さんは青年海外協力隊の有志による「青年海外協力隊・市場調査団」の一員としてガーナの視覚障がい者の職業選択を調査したり、配属先の校内にガールズクラブを設立して、女子生徒にとって必要な健康やキャリアについての知識を得る場を作ったりと、その思いをまさに実践しています。

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ICT分科会でろう学校で出張講義する三浦さん

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授業の様子。机に伏せていても寝ているわけではありません。

これからの目標は、これまで取り組んできたことのうち、可能な部分は他の先生に引き継いで、三浦さんのようなボランティアがいなくても、引き続き増えた機会の恩恵を生徒・先生が受けられるようにすることだそうです。

岡本さんと三浦さんの活動に対する姿勢には、いくつか共通点がありました。まずは目の前の相手に対して、少しずつ働きかけていること。与えられた役割だけにとどまらず、自分が取り組む課題を掘り下げ、次の行動に繋げていること。自分の任期が終わったあと、成果が失われてしまわないように、引継ぎや体制作りをしっかりしていることなどです。「国際協力」という言葉を聞くと、大規模な予算を使ったプロジェクトや、広い対象に向けた寄付などを連想しがちですが、協力隊員の活動を見て、直接手の届く相手に自分ができることを行うことの価値を改めて感じました。対象となる相手や、協力の規模は限られてしまいますが、長い時間をかけて築かれた深い信頼関係のもつ影響力は、とても大きいものだと思います。

ガーナの街中では、予想以上に多くの中国語や韓国語の文字を見かけ、「チャイニーズ!」と声をかけられることもあります。ですが、一度私が日本人だとわかると、故郷で日本人の先生に教わったことがあると話しかけてくれたりします。ガーナでの35年に及ぶ長い協力隊の活動の歴史と意義を感じるひと時です。