ヒューマンストーリー

ガーナの田んぼから

2014年10月15日
JICAガーナ事務所インターン
神保菜津紀

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稲の収穫研修の様子。研修は農家の田んぼを使って行われます。

私は2014年9月から10月までの1ヵ月間、JICA(国際協力機構)ガーナ事務所でのインターンとして、アシャンティ州・ノーザン州で行われている技術協力プロジェクト、「天水稲作持続的開発プロジェクト」に参加しました。

ガーナの主食はトウモロコシ・キャッサバ・ヤムイモ・料理用バナナとバラエティに富んでいますが、近年経済成長が進むにつれてお米の消費量が増えています。お米はそのまま炊いた「プレーン・ライス」の他、炒飯のような「フライド・ライス」、炊き込みご飯のような「ジョロフ・ライス」、お赤飯のように豆と一緒に炊いた「ワチェ」など様々な形で食べられています。ガーナ国内でのお米の消費量が増える中で、国内生産だけでは需要を満たすことが出来ず、その約半分を輸入に頼っているのが現状です。

私が参加した天水稲作持続的開発プロジェクトでは、灌漑設備を持たず水源を雨水に頼って(=天水)水稲を育てる小規模農家を対象に、稲作の技術普及を行っています。水の供給を降水に頼る不安定な環境で収量を上げるためには、少しでも水をコントロールすることが重要になります。そのための技術は、田んぼに畦を作る、田んぼを平らにする、など日本の稲作では基本的に行われている技術です。灌漑事業や近代品種の導入では対象となる農家は限られてしまいますが、このように基本的な技術を導入するだけで収量を増やすことができるのであれば、「やってみたい」と思った農家は誰でも自分で実行することができるという点に、このプロジェクトの意義を感じました。

また、ビジネスとして稲作を成り立たせるための営農技術も普及しています。例えば、「営農手帳/営農シート」というものを農家に配りました。農家は肥料や農薬、農機具などを買った際、また田植えなどのために人を雇った際に支払った金額を記録し、収穫後には収穫量、いくらで売ったかを記録します。これによって、今回の稲作が赤字なのか黒字なのか、赤字の場合にはその原因を把握することで、次の作期に生かすことができます。ガーナの農村部での識字率は30%程度です。そこで「営農シート」は写真やイラストを多く用い、字を読むことができない人でも使うことができるように記載されています。「自分は数字を書けないので、中学生の娘に手伝ってもらって記録している」という農家の女性もいました。

天水稲作持続的開発プロジェクトでは、技術の普及にも力を入れています。カウンターパートとなる農業食糧省の州の職員を起点に、郡の職員、郡の農業普及員、そして農家へと技術が伝わっていく仕組みを作り、それぞれの段階で使用するための普及教材も作成しています。成功した農家から、それを見た近所の農家へと技術が広がっていくことも、このプロジェクトの特徴の一つです。

農家に話を聞くと、「収量が増えたことで増加した分の収入を貯めて、次は精米機を購入したい。」「日本ではどうやって稲作を行っているのか、もっと知りたい。」といった前向きな声をたくさん聞くことができました。自分が教わったことを自分で実行した結果として収量が上がった、お米の品質が良くなった、ということが農家の自信となり、更なる意欲へと繋がったのだと思います。私はこのプロジェクトに参加するまで、小規模農家が何の支援も無しに自立することは難しいのではないか、と考えていました。もちろん、初めから全く何の支援も無しに自立することは難しいかもしれませんが、初めに少しの基本的な技術を教えるだけで、どんどん自分たちで工夫や協力をし前に進んでいく農家の強さを目の当たりにし、小規模農家でも適切な知識や情報を得られれば自立することができるのだ、と思いました。

日本が長年培ってきた稲作の技術をガーナの農家に伝えることで、農家が前に進む後押しとなり、技術が広まるとともに、ガーナにも日本のような美しい田んぼの景色が広がっていくことを願います。

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農家に配布した営農シート。字が読めなくても分かるように絵や図をたくさん使用しています。

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ガーナに広がる美しい田んぼの風景。