所長あいさつ

グアテマラに着任してからもうすぐ一年経ちます。

長くもあり、短くも感じられる期間ですが、グアテマラに来ることができたことを在り難く思っています。

グアテマラの首都、グアテマラ市は来た時と同じように常春を続けています。遠くに火山が見え、緑あふれる町の美しさも変わりません。

取り組んできたことのうち大きなことは、移民問題、そして海外協力隊30周年記念でした。

トランプ政権により、中米北部三角地帯と称されるグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスから米国への不法移民が問題視されています。米国-メキシコ国境に密入国者を遮るための壁が建設されているのはその象徴です。グアテマラ事務所は報道はもとより、グアテマラ政府、国際機関、研究機関、移民問題研究者等を訪問し、幅広く情報収集を行い始めました。

グアテマラの移民問題の中で、農村部での貧困、雇用・収入不足が不法移民の主な原因であることが分かりました。大半は自給自足またはコーヒー等単一商品作物種栽培に立脚した貧困零細農家です。脆弱な営農は天候不良や産品価格の変動に見舞われると容易に破綻します。グアテマラ国内では大都市でも働き口は見つからず、大抵の場合、既に米国で働いている家族や親類を頼り、出稼ぎに活路を見出すことになります。単純労働目的では米国査証は発給されないため、殆どの者が陸路での不法入国を目指します。

グアテマラ政府の移民対策が不十分として経済援助の停止、安全な第三国協定 署名取り付けなど不法移民取締に躍起になるトランプ政権の締付の下でもグアテマラ国民の移住熱は衰えません。

米国で当局に見つかれば、強制送還のリスクがありながらも不法入国に賭ける方が生存戦略上の期待値が高いからでしょう。

JICA事業の関連では、大半のプロジェクトにおいて、その成功が間接的に移民抑制につながることから、移民対策の視点を組み込むことが重要と考えています。今後、更に調査を進め、国際協力としてできることを検討します。

もう一つ、2019年度はグアテマラへの海外協力隊派遣30周年記念にあたり、一年を通して、広報の取り組みを行ってきました。

海外協力隊に関連する行事では、できるだけ新聞社、ラジオ、テレビ等のメディアに取材を呼びかけ、30周年であることを伝えました。また、4月にウスパンタン、6月にソロラ、9月にケツァルテナンゴ、11月にはアンティグアで日本文化紹介及び協力隊活動イベントを開催し、30周年を盛り上げてきました。

そして2020年2月7日には国家宮殿でカスティージョ副大統領がグアテマラ政府代表として出席され、海外協力隊派遣30周年記念式典を開催することができました。

グアテマラの様々な機関や市町村で活動を続け、スポーツや保健医療、教育、職業訓練で開発に貢献したことに副大統領から感謝の言葉を頂きました。副大統領自身、バスケットボールの選手だった時代に小林徹隊員に指導を受けたことや、その後職業訓練庁長官時代には多数の海外協力隊員を受け入れたことなどの思い出が語られました。

一連のイベントは各市役所、省庁、日本大使館、海外協力隊自身、事務所関係者の協力と参加があってこそ実現できたものです。この場を借りて協力者全員に感謝を申し上げます。

この国に住んで感じるのは、日本に居る時の常識では国づくりは考えられないということです。一人当たりGDPは4,466ドルと中進国に近づいていますが、約1500万人の国民のうち59.3%が貧困層に分類されています。つまり、大変な格差社会です。

グアテマラには開発のニーズが沢山あるということです。現在は日本のODA予算が最大だった90年代と比べて減少しており、これを憂う声はありますが、予算の多寡に関わらず、アイデア次第でできることはいくらでもあると感じています。

2020年3月3日
グアテマラ事務所長
山口尚孝